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亜美は秘かに思っている 6

 亜美は校舎裏は駆け抜け、校庭まで逃げる。

 部活が終わり、後片付けする者や談笑しながら既に帰宅をしようとする者たちの姿を視界に収められるようになって、ようやく亜美は足を緩め、ほうっと息をついた。


 一体、なんなのよ


 亜美は胸に手を当てる。まだドキドキしている。頬も火照って気持ち悪かった。


『お前の事が好きだ』


 さっきのフレーズが頭の中でリフレインされる。あれを告白と言わずばなんと言う?

『あ"っ、あ"っ、あ"っ』と呻き声を上げたくなるのを懸命に堪える。


 私、(コク)られた、のよね


 だとすれば、生まれて初めての告白……


 駄目だ、駄目だ、駄目だ


 亜美はぶるぶると首を横に振る。

 違うのだ、自分の思い描いていた告白はもっとこうロマンチックでムードのあるものでなくてはならない。

 好きな人に告白されて、頬を染めてコクりと頷くものなのだ。出きれば満月。どこか夜景の綺麗な場所で。

 それを、それを……

 あの何か分けの分からない大男がぶち壊した。


「ノーカンよ!

絶対!

断じて!

ノーカウントよ!!」


 亜美は足を踏み鳴らして、夕焼けに向かって叫んだ。

 すぐ横を何人もの女子学生が通りすぎていく。みな変なものを見てしまった、と言う表情をしていた。

(うっ)

 亜美は恥ずかしさに身を縮める。そして、これも大男のせいとして記憶のメモに書き込んむ。怨念を込めて。


 校門を抜け、一人で寂しく下校する亜美。

 いつもなら隣に蛍の姿があるのだが、蛍の携帯の電源はオフのままで連絡が取れなかった。

 女の子同士、男の子同士、男女のカップル。複数の小集団が帰宅の途についている。

 亜美はそれらの人の群れの一つのパーツに過ぎない。誰も自分を気にする者はいない。今はその没個性が心地よかった。

 赤信号。

 信号待ちで歩みを止める人々の群。亜美もまた足を止める。

 亜美は、少し前に一際光を放つカップルに気付く。


 生徒会長の瀬川さんと副会長の戸松さんか


 横断歩道の前でメガネをかけた短髪のイケメンが栗色のロングの女性に何やら話しかけていた。生徒会長の瀬川の言葉に戸松は微笑みながら首を傾げる。ややウェーブのかかった豊かな髪が優雅に揺れていた。

  

 いいなぁ、あんな美男美女のカップル

 会話とかもきっとロマンチックなんだろうなぁ


 それに引き換え自分は……

 再びあの忌々しい男が思い浮かんできた。


 ああ、もうっ!

 消えろ!消えろ!消えろ!


 亜美は頭のなかでハエを逐うように健の顔を振り払った。

 信号が青に変わる。人々の群れがゆっくりと動き出す。


その時……


ガシャン


「危ない」


ギギギギギ 


「逃げろ」


「うわー」


パリン パリン


ガガガ


 物のぶつかる音、金属が軋む音、ガラスの割れる音、悲鳴、怒号、絶叫が突然周囲を満たす。


「えっ!」


 横倒しになった白い乗用車が物凄い勢いでジャリジャリ地面を削りながら亜美に接近してきた。



2018/06/06 初稿

2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正


《オマケ》

蛍  「う~ん。う~~ん」

亜美 「どうしたの深刻な顔して?」 

蛍  「この作品って恋愛小説としたらどうなんだろうって思うわけよ」

亜美 「どうって?」

蛍  「恋愛要素のみで勝負してないよね、これ。

   ストーリ維持するために色々姑息なギミック仕掛けてるわよね。

   健君のアクションシーンとか。

   これってどうなのかなって考えちゃった訳。」

亜美 「そりゃ作者の能力の問題でしょ。

   それにそのギミックでより表現したかったことが際立つなら良いじゃないの。それが文学の特権なんだから」

蛍  「なんか今日はシリアスっぽい展開ね」

亜美 「まね。本編もクライマックスに差し掛かってるからねぇ」

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