七つにずれる時刻
七枚の時刻札のうち二枚だけが、王宮の色分けから外れて同じ釘に重なっていた。
夏第4月第8日、第1鐘。王都水利監視廊の臨時比較室で、リディアは四つの記録を別々の板へ留めた。王都の現在計測、ヴァルハルトから届いた負荷外票、ルメリア共同保守の測定、王宮旧保守表の認証写し。原本を運び込んだ者はいない。
各板の左上には、管理者と時刻の換算幅がある。測定誤差も同じ欄へ入れず、器具ごとの札へ残した。ヴァルハルトの外票だけは、計画十二分の下に有効八分、欠測四分と書かれ、安全停止の打切り印が押されている。
王都の圧計は一分ごとの刻み、ルメリアの棒は短鐘ごとの目視だった。リディアは細かい方へ丸めず、両方を含む幅のある時刻札を作る。王宮旧表だけは器具の交換年が欠け、誤差欄へ「不明」の札を下げた。
設備保管官が旧表の色名を読み上げ、ヴァルハルトの残り四分へ定規を当てた。
「同じ傾きで延ばせば、第三色に収まります」
リディアは定規を外した。
「止めたあとの四分は測っていません。最初の八分だけを、一段軽く使います」
ローヴェンは四板の間へ白紙を一枚ずつ挟んだ。出所も責任者も違う値を一枚へ写さず、共通する八分の窓だけを外部時刻へ直す。患者情報や九人の救援札は比較室へ入らなかった。
設備保管官は古い表の原本印を指し、認証の重い方を基準にするよう求めた。ローヴェンは印の年代と測定精度を別の札へ分ける。
「保管が正しいことと、今の管が従うことは同じ欄に置けません」
保管官は原本印を引っ込めなかったが、現在計測の板へ押すこともしなかった。原本の板だけを、自分の膝元へ戻した。
旧表の七色を裏返し、裸の時刻札だけを順に並べると、二箇所で色と圧の応答が分かれた。旧表で第三群に属する二枚の片方が、第六の幅へ重なる。もう一枚は第五と第七の境で止まった。
「七つの古い区分が間違いだった、と?」
「今の応答を二箇所、分けられません」
「旧表を外せば、七幹線の当番名が消えます」
保管官は色札を七枚まとめて握った。リディアはその手から札を奪わず、連絡担当表の束を横へ置く。
「当番名は残します。負荷を読む時だけ、色を伏せてください」
旧表は廃棄箱へ行かず、実務名の棚へ戻す札を付けられた。
リディアは鞄の内側へ手を入れた。そこには母の筆跡見本を収めた私物袋がある。留め紐へ触れる前に手を戻し、現在時刻の札だけを白紙へ移した。
「七つあります。今の測り方なら、です。次の二回で外せる形にします」
第2鐘、東配水路の観測桟橋へ移った。現地水番は通常保守の予定札を掲げ、非重要側の手動栓を短い区間だけ切り替える。契約線にも中央蓄積石にも触れず、作業図は巻いたまま壁へ掛けられた。
桟橋の下では、手動配水の桶を待つ者が列を作っていた。試験で流量を変える時間は、通常保守表にある短い切替区間だけだ。水番は列の最後へ終了時刻を告げ、延長しないことを自分の当番札へ書いた。
リディアの前には圧計、熱計、戻り流の浮子が一つずつ並んだ。ローヴェンは開始時刻だけを読み、水番が把手を回す。旧表なら第三群の圧計が先に跳ねるはずだった。
最初に動いたのは、色札を外した第六幅の浮子だった。木片が目盛を一つ越え、次に熱計、最後に第三群の圧が追いつく。水番は予定の終了位置で把手を戻し、追加の切替を求めなかった。
リディアはもう一度だけ動かせば誤差を狭められると考え、予備の時刻札へ手を置いた。列の水桶が桟橋へ当たる音を聞き、札を裏返す。次の観測は予定された二窓へ残し、今の保守時間を延ばさなかった。
設備保管官は第三色の札を手にしたまま、浮子を見た。
「名を替えれば、当番が迷います」
「名は運用表へ残してください。今夜の試験順は、時刻で分けます」
予定外の群が先に出た時に止める札を、水番が自分の把手へ掛けた。試しに選ぶ四系統のうち二つで同じ外れ方が出れば、その場で案を退ける。リディアは起動命令を書かず、観測結果だけを比較室へ持ち帰った。
水番は把手を封じず、次の通常操作へ使える位置に戻した。観測のために止めていた桶列が進み、最初の二人が自分の水を持って桟橋を離れた。
第3鐘までに、白紙は三つの束へ分かれた。一つ目は「現在の七負荷群・仮説H7」。二つ目には予測札が二枚あり、予定した四つの手動切替なら指定した群へ先に応答が出ること、行政名を伏せても王都、ヴァルハルトの最初の八分、ルメリアの同じ窓が七つの時刻幅へ収まることを置いた。
三つ目には棄却札が二枚あった。四系統のうち二つ以上で別の群が先に動けば撤回する。次の二窓で幅が六以下か八以上へ割れる、または同じ群の頂点が半鐘を越えて二度ずれれば、H7を撤回する。
四系統を仮線候補へ、残る三系統を手動配水、荷車、予備水へ回す費用札も隣へ置いた。中央蓄積石が支えられる時間は、複数の測定から二時間半から三時間半。幅札の見出しを「起動後」とし、現在時刻からの残りを書く欄は空けた。
三系統の当番が、自分たちだけ暗い表示を引き受ける理由を聞いた。糧の当番は荷車を二台取られれば倉の補充が遅れ、境の当番は手動栓へ夜番を一人増やさなければならない。リディアは四系統の欄を広げず、三人に代替の現物を選ばせた。
糧は小型荷車二台、境は夜番一名と予備水、残る系統は手動配水の桶数を要求した。費用札へ各当番の受領先が加わる。三人は賛成印を押さず、暗いまま運ぶ物だけを自分の欄へ引き取った。
「外れた時に、誰が消しますか」
ローヴェンの問いに、リディアは自分の技術勧告番号を書いた。配分、起動、現場署名の欄は、別の受領者へ空けておく。
「あなたの案が外れたら、次の鐘を待ちません」
境の当番が言い、棄却札の控えを取った。リディアは四系統の試験順より先に、その停止窓を渡した。
設備保管官が七枚を丸で囲もうとした。リディアは色札を裏返したまま、最初の反証窓の横へ短い縦線を一本だけ引いた。




