三つ目の宿駅
救援早馬の腹帯は白く乾いていたが、封筒の蝋には二日弱ぶんの汗と砂が固まっていた。
王暦二百十九年、夏第4月第3日、第1鐘。ヴァルハルト城下の公開救援受領台で、リディアは王都第1日第4鐘の発送印を指で追った。東治癒院は予備水と手動栓で処置を続けている。薬材二車は届いた。市場では鮮魚十二箱と氷四枚が売れなくなり、閉じた取水口では水位がまだ上がっている。要請書は、誰か一人の名を救援者として求めてはいなかった。
早馬の使者は水を一杯飲み、王都を出た時より一つ増えた閉鎖札を机へ置いた。リディアが到着するまでの三日分として、門衛の交替、治癒院の布と桶、配水番の手動順が既に組まれている。
リディアは便箋を引き寄せ、地方の第二栓を王都でも先に閉めるよう一行書いた。宛先の決定者欄へ筆を移すと、そこは空白だった。
「この紙を、誰の判断に使いますか」
受領係は評議会の依頼票を返した。
「技術調査と原案を求めています。操作は王都の各当番です」
リディアは書いた一行に横線を引いた。春第3月第30日夜に満了した白鹿の二契約番号を、係が脇へ寄せる。
「白鹿の番号は使いません。王都で決める人と、失敗した時に紙を戻す先を入れてください」
第2鐘までに、王都事故受付の別番号が届けられた。机の端では別の購買官が、冷蔵組合の石を一つずつ回している。在庫板の六から四を外し、二つを城下の予備へ戻した。物品代二十銀貨と運送四銀貨の袋は、旅客の旅費皿へ置かれなかった。
第3鐘、救援受領堂には三つの台が離して並んだ。最初の台で、リディアは夏第4月第3日第3鐘から第5月第10日第2鐘の引継ぎまでの本人控えを受け取った。
リディアは第4月第18日と第5月第2日の休務札を本人袋から抜き、報酬日数の外へ置いた。残る三十六日が有給で、開始分二十一銀貨、残る二十一は次の技術受領者へ成果物と未回答票を渡した時に支払われる。
権限は調査、原案、勧告だけだった。命令、設備決裁、資源配分、議決、自己監査はできなかった。
二つ目の台で、ローヴェンは王都監査権を第5月第10日第2鐘の引継ぎで終え、新局へ戻る勤務だけを第13日第4鐘の帰着まで残した。追加報酬はなく、局長俸が続く。
「王都の終了と、新局へ戻る時刻は同じにしません」
三つ目の台で、アレクシスは「指揮の欄がありません」と確かめた。領政当番が示したのは、ヴァルハルトが出せる人員と物資の上限、返却窓口だけだった。代表票は第10日第2鐘に資源窓口へ渡せば終わり、彼は第3鐘に王都を発って第13日第3鐘に帰領する。
三枚とも自動延長欄は閉じられた。同じ馬車へ乗っても、権限票と費用袋は別々の網棚へ掛けられ、往復、宿泊、食事は報酬へ混ぜられなかった。
ヘルガは白鹿の水番と実働八名、独立監査局の当番が続くことだけを現況控えに残した。白鹿側六十銀貨の在高票へ親指を置き、救援費に借りる余白には会計印を押さなかった。
「この六十は、白鹿の水番が使う金です。王都へ持っていく袋は作りません」
余白は切り取られ、既存補償の束もヘルガの台に残った。
リディアは公務台を離れ、民事転送口の列へ並び直した。夏第4月第20日の面会を、双方が別々に帰着した後まで延ばしたいと一通だけ書き、転送料を自分の財布から出した。アレクシスは受領欄へ返事を置いたが、次の日付は書かなかった。
冷却石の荷庭では、四本の荷縄に製造札が結ばれていた。エリオは在庫番号と外面を照合すると、買受人欄へ伸ばしかけた手を引く。トーマは配車案から車幅の数字を消し、三つの宿駅名だけを残した。
「王都の門は見てねえ。継ぐ順だけ使え」
第4鐘、三人の旅客馬車と冷却石の貨物車は、別の門札を受けて城下を出た。
第3日夜、第1の宿駅で、リディアたちの座席札には旅客印が押された。貨物車は裏の荷庭へ回り、交替請負人が荷縄を四本数えた。第4日夜の第2宿駅でも、四つの外面に見える亀裂がないことだけが受領票へ残る。内部を保証する欄はなかった。
第1宿駅の帳場は、三人を一つの救援組として同じ部屋札へまとめようとした。ローヴェンが自分の宿票を抜き、アレクシスも領費の四泊札だけを出す。リディアは七十枚の食事券から一枚を切らせ、使わなかった分を銀貨へ替える欄を閉じた。
同じ車内で、アレクシスは資源目録を読み、ローヴェンは監査索引を膝に置いた。リディアは見直しの私信を鞄の私物側へしまい、王都の栓へ一行も勧告を書かなかった。馬車が泥溝を越えるたび、三つの旅費袋が別々の音を立てた。
第2宿駅を出たあと、車輪が深い轍へ落ち、リディアの膝が向かいの座席へ当たった。アレクシスは手を伸ばしかけたが、座席の縁を掴んで止まり、御者へ速度を落とすよう告げただけだった。リディアは自分で姿勢を戻し、次の宿駅までの時刻を旅客票へ書いた。
第5日夜、第3宿駅。旅客の食事券は三人の束から一枚ずつ切られ、貨物受領札には三つ目の宿駅印が増えた。冷却石は人の寝床から壁一枚隔てた荷庭で夜を越した。
第6日第4鐘、旅客馬車は王都事故受付へ着いた。貨物車は北東外門で止まり、受領官が封、個数、見える外面を確かめてから四個を王国評議会の所有へ移した。
通りの向こうでは、東治癒院の搬入口から濡れ布を抱えた者が走り出てきた。治療は六日間、止まっていない。その隣で、マーラの魚箱は蓋を外したまま空になり、氷槽の底まで乾いていた。




