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娘の署名

オズヴァルトが最初に署名したのは、娘の保証書ではなかった。食卓の中央を避け、家借入帳の保証番号一項目だけを比べる同意書を自分の前へ引いた。


春第2月第4日、第4鐘。小食堂へ来た中立公証所の書記が、家借入帳から保証番号一項目だけを認証抄にし、別の四項目抄と比べる同意書を読み上げた。


「日付、相手、金額は対象外です。筆者の認定も、知っていたかどうかの判断も行いません」


オズヴァルトは説明の終わりまで聞き、自分の名を書いた。包括保証の用紙は、まだ食卓の反対側にある。


家帳簿保管者は同意書と比較依頼書を持って家記録室へ入った。独立公証人が続き、リディアの前で扉が閉じる。彼女には入室札も透明板を見る権限も渡されなかった。


廊下の長椅子へ座ると、扉の下から灯りが細く漏れた。内側で家原本が開かれたか、どの手が番号を写したかは見えない。リディアが受け取れるのは、作成と再封と二鍵保管への返却時刻を記した票だけだった。


待っている間に、小食堂では家財買主が東客間の内訳を読んでいた。冬帳四枚、客用寝台二台。北書庫別棟にも西倉庫賃料にも含まれない、担保外の家財である。


「三十六銀貨。無条件なら明日、第2鐘に払います」


買主は一度だけ言い、代金札をオズヴァルトへ向けた。未払給金九銀貨を先に払っても二十七が残る。そこから第3鐘までに利息二十四を全額払えば、借入第27号は期限内に治癒できた。


オズヴァルトは冬帳を外した東客間の図を見た。署名台にある娘の包括保証へ視線を移し、無条件売却札を買主へ返す。


「第3鐘まで待てることになっていた」


「保証が成立するとは書かれていません」


リディアが言っても、彼は無条件札を取り戻さなかった。代わりに、未治癒の場合だけ第3鐘に発効し、第4鐘に三十六銀貨を払う条件付き売却へ署名する。


家記録室の扉が開いたのは、その後だった。家帳簿保管者は原本を持って出ず、封札番号と返却時刻の票だけを見せる。家側の一項目認証抄は、閉じた公証袋で中立公証所へ送られた。


翌第5日、第1鐘。リディアは中立公証所の通知待合に座った。


壁の向こうには、四項目抄を収めた二鍵金庫がある。テレーゼと独立公証人が入室したことを示す札、家側の一項目認証抄を受け取った札、照合終了後に双方を再封する予定時刻が、窓口の外へ掲げられていた。


リディアは照合室へ入らず、四項目抄も家側抄も透明板も見ていない。第2鐘前、細い結果票が一枚だけ通知窓から出てきた。


保証番号一致。照合時刻、第1鐘後四十分。


その下には、日付、相手、金額、筆者、認識という欄すらない。テレーゼの受領票は、四項目抄を二鍵金庫へ戻した時刻で終わっている。家側抄も別の返却票で家保管者へ戻り、二つが同じ袋へ入ることはなかった。


リディアは結果票を自分の革挟みへ入れた。以前に出した別番号の限定内容開示請求からは、承認も結果も届いていない。受付で既存の受付番号を確かめ、革挟みを閉じた。南側家倉庫の封印物は、未開封のままだった。


家へ戻ると、オズヴァルトは包括保証を食卓へ開いて待っていた。前夜に返した無条件売却札の場所へ、インク壺が置かれている。


「同じ番号なら、家の帳面も偽物ではない」


「同じだと通知されたのは番号だけです。私は、引き受けません」


「お前の一年分だけでも」


「私が示した上限三十六銀貨の案は、受諾されていません。効力はありません。元本も既発生利息も負いません」


リディアは結果票を父へ渡さず、読める向きに一度だけ置いた。オズヴァルトは保証番号一致の行を読み、包括保証の用紙へ目を移した。署名欄は空いたままだった。


第3鐘が鳴り、最後の一打が消えた。


信用組合の受領台には、二十四銀貨が届いていなかった。借入第27号は未治癒で期限を越え、既存条項どおり年利が四パーセントから六パーセントへ移る。年間利息は三十六銀貨になった。


条件付き売却が発効し、東客間の冬帳四枚と寝台二台に引渡し札が付いた。買主の支払いは第4鐘で、期限前の治癒には使えない。


オズヴァルトは常勤八名の勤務表を開き、三人の名を外した。ミレイユ、北書庫守のハルト、侍女のネラ。未払給金は一人三銀貨、解雇手当は一人二銀貨だった。


第4鐘、売却代金三十六銀貨が届いた。オズヴァルトは三つの給金袋へ三銀貨ずつ、三つの手当袋へ二銀貨ずつ入れ、自分の名と額を書いた。残る二十一銀貨だけが、期限後の一部弁済として信用組合へ送られる。


未払利息は三銀貨残った。二十一を入れても、治癒済みには戻らない。六パーセントの利率も動かなかった。


ミレイユは勤続証明を食卓へ戻した。六年の文字へ届きかけた書記の筆を、杉箱の蓋でそっと押し戻す。


「六年とは書かせません。五年十月と日付を」


オズヴァルトが直すのを待ち、杉の裁縫箱と一緒に受け取った。春第4月に満たすはずだった六年要件へ二月足りず、家政組合試験は一年後になる。今夜からは叔母の染物店の屋根裏で眠り、帳場を手伝うと本人の行先票へ書いた。箱の底の亡母の針山も、そのまま蓋の内側へ収めた。


ハルトは北書庫の棚から樫の湿度計と自筆の記録帳を持ってきた。


「湿度計は家の備品ではない。購入札もあります」


家の鍵束は返し、湿度計と記録帳だけを自分の革袋へ入れる。紙問屋の共同乾燥場で日雇いに入り、職人宿の一床を取った。乾燥場の採用札には明朝第1鐘とあり、今夜のうちに宿へ道具を運ぶ必要がある。


ネラは給金の受領札を読み、日付を指した。


「遅れは十一日です」


その日数をオズヴァルトに書かせてから、仕事着のポケットへ真鍮の指貫を入れた。次は市営洗濯場の日雇い、寝る場所は妹の一室だった。洗濯場の湯気で指貫が熱くなるからと、布片を一枚巻いて包みへしまう。ミレイユとは違う門から、自分の荷一つを持って出た。


常勤表には五人が残った。三人の行先票は染物店、共同乾燥場、市営洗濯場へ分かれ、荷もそれぞれの手にあった。


売却業者は東客間から寝台を一台ずつ運び、最後に冬帳を外した。厚い布を巻くたび、窓から冷たい夕方の光が深く入る。


リディアが空いた客間へ戻った時、壁には冬帳四枚が掛かっていた場所だけ、周りより濃い四つの跡が残っていた。


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