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審問会、開廷

冬第12月第1日、第1鐘。王国契約官登録院の審理室へ入ると、リディアの椅子だけが中央から遠ざけられていた。


輪番審理長は床の目地を数え、本人席を窓側へ二筋、事実提示官の机を反対側へ一筋動かした。証人席は奥の扉の前、傍聴席は横の小扉に近い。四つの机をつないでいた長布も外され、それぞれの天板が見える。


リディアは自分の席まで歩いた。提示官の紙へ手を伸ばせない距離があり、後ろを振り返れば、サラが傍聴席の端に座っている。黒い外套の袖口から、ほつれを押さえた細い糸が出ていた。


サラの膝には、仕立て途中の子ども用上着が畳まれていた。開廷を待つあいだに、袖の縫い目が一列増えている。針は布へ刺したままで、糸巻きだけが靴の横に置かれていた。


壁際の小窓が開き、ローヴェンが最初の二重封を受け取った。彼は本人席にも提示官席にも座らず、外糸と内糸の番号、受領時刻だけを読む。


「封番号七一、外糸三六、内糸一四。冬第12月第1日、第1鐘」


封は彼の手から保管箱へ入り、鍵が掛かった。中身の評価も、リディアがどう答えるべきかも口にしない。


独立公証記録官は、まだ白い逐語原案へ版番号零を押した。隣には訂正紙を置き、原案の綴じ紐を切らずに待つ。審理長が卓上鐘を一度鳴らしてから、事実提示官に最初の紙を許した。


提示官は公開運行表、原因票二枚、ベルト死亡記録を一枚へ重ねず、机の上へ順に置いた。けれど、読み上げた問いは一つだった。


「あなたは公開運行表を出し、その結果ベルト・ハーゲンを死なせたことを認めますか」


サラの指が袖口の糸を一度引いた。縫い目は締まらず、布の端が小さく寄る。


リディアは回答札へ手を置いた。ここで全部を認めれば、死者を前に言い逃れなかった形にはなる。だが、紙の上では、公開を決めた手、敵が利用した経路、届かなかった警告、ベルトが選んだ退路、死亡の時刻までが、一つの動詞に押し込まれていた。


「回答はまだです」


審理長が提示官の紙を指で押さえた。


「いま問う行為を一つにしてください。公開を決めたことですか。死亡の全原因ですか」


提示官は一枚紙の中央へ爪を当てたが、すぐには折らなかった。質問文がすでに原案へ記されていることを確かめ、記録官を見る。


記録官は版番号零の紙を残したまま、隣の訂正紙へ版番号一を押した。最初の問いを消す線は引かない。


「分離を求めます」


リディアは回答札ではなく、動議欄へ名を書いた。


「公開運行表を作成し、掲示を決めた行為は私が答えます。ベルトの死亡は、公開後に起きた行為と共有の有無を、別の番号で答えます」


審理長は公開運行表へ質問番号二の一、ベルト死亡へ二の二を割り当てた。原因票二枚も死亡記録の下へ糊付けせず、それぞれ元の保管番号が見える位置へ戻される。


提示官が最初の問いを短くした。


「公開運行表を作成し、掲示を決めましたか」


「決めました。公開時刻の欄にも、私が署名しました」


「敵に利用される可能性を、その時点で知っていましたか」


「運行の集中が危険になり得ることは知っていました。南方襲撃の具体情報は受け取っていません」


「公開しなければ、住民側の積荷準備は遅れましたか」


「遅れた可能性があります。最初の便が動いたことも記録にあります」


リディアは回答をそこで切った。初便の通過記録に続く頁には、公開表を利用したとみられる絞り込みの時刻が、別の原因票として残っていた。


提示官は次の質問へ進もうとしたが、審理長が番号札を立てた。具体情報の未共有は、アレクシス側の通知済み争点へ移される。


記録官は質問番号二の一の下へ、公開決定と本人署名だけを書いた。判定欄と処分欄には筆を入れず、版番号一の紙を乾燥台へ移す。リディアの登録札は本人席の前にあり、回収箱へ向けられていなかった。


傍聴席の小扉近くで、係がサラへ追加証言票を差し出した。既存の実名申立てを確認する欄と、今日さらに証言する欄は、違う紙にある。


サラは既存申立ての受領番号を見た。ベルトの退職願と原因記録を公に残したいという記載は、そのまま綴じられている。彼女は追加証言票だけを係へ返した。


「前に残した縫い目は、ほどきません」


係は待った。サラは袖のほつれを指で押さえ、もう一度だけ言う。


「でも、同じ布を何度も開いて見せるつもりもありません。今日は話しません」


審理長は理由を求めなかった。記録官が追加証言拒否の時刻を別紙へ記し、既存申立ての封番号には触れない。リディアはサラの名を呼ばず、本人席の縁を握ったままいた。


サラは係の腕を借りず、自分で傍聴席から立った。小扉へ向かう途中、一度も本人席を見ない。扉の前で袖口の糸を歯で切り、短い端を外套の内へ押し込んだ。


膝にあった上着は自分で抱えた。糸巻きが床を半回転すると、係が拾おうと腰を曲げるより早く、サラが靴先で止める。巻き直した糸を上着の中へしまい、追加証言票だけを席へ残した。


小扉が閉じても、審理長は空いた傍聴席を前へ詰めさせなかった。サラの椅子と遠い証人席の間には、誰も座らない床が残る。


第2鐘が鳴った。サラが出た小扉とは反対側で、奥の扉が開く。


近衛を廊下に残し、ユリウスが一人で証人席へ入った。王太子用の椅子を中央へ寄せる者はなく、彼は離されたままの席まで歩いた。


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