救った証言、傷つけた証言
地域事実保全の通知札には、秋第8月第28日の受領印があった。黒封の発行より一日前で、ローヴェンが来てから集めた証人ではない。
秋第9月第4日。独立輪番の地方公証書記、登録第12号と第19号は、エッダを第2鐘の部屋へ通した。リディアは被申立て側の技術者席に座り、質問も訂正も書記を介して出す。井戸番と同じ机には着かなかった。
「最初に、水が変わった日のことを」
エッダは鍵束を膝へ置いた。金具の一つには、南井戸の古い泥がまだ薄く詰まっている。
「名前を三つ並べただけの時は、濁ったままでした。上の割れた石を替えて、泥を掻き出して、夜明けに来た水も三桶は捨てた。四桶目から、熱のある家と子どものいる家へ出しました」
何軒が受け取ったか、採水瓶はどこにあるか、書記が一つずつ尋ねる。エッダは井戸番台帳と鍵の開閉時刻で答えた。
「後に止まったものはありますか」
「西の粉車です。三日」
エッダは、ニナが擦り写しの一画を濃くしたことも話した。娘の手が紙へ触れた時刻と、その紙を運用資料へ入れた大人の名を分ける。
「子どもは、読めたと思われたかった。あの紙で門を開けたのは、子どもじゃありません」
「あなたは、娘の運用停止に異議がありますか」
「水を動かす紙から外すことには、ありません。学校で読む席までなくせとは言っていません」
登録第12号は、井戸と粉車について対象、時刻、物証の順に記した。第19号は自分の控えを作り、最後まで相手の文面を覗かなかった。
エッダが退出した後、その記録は第12号の保管箱へ移され、部屋も封じられた。翌日のサラには、別の待機室と別の机が割り当てられている。
その間に、封印候補名簿の医療行がミナへ渡った。暫定四層命令の「事故の関係者」という文言に従い、王都東治癒院の患者名が一つ転記されている。まだ掲示前で、二人の書記と指定医療保管者のほかには開かれていない。
ミナは城下治癒所に残る三控えの表紙を並べた。本人用、東治癒院長用、ヴァルハルト再検査用。どの紙にも、物理診察と紙の配布先はあるが、公開証言の同意はない。
「この人が許したのは、ここまでです」
ミナは署名範囲へ指を置いた。病歴を説明する代わりに、空白の公開同意欄を第12号へ見せる。
「事故通知が必要でも、娘の名と暮らす場所まで要りません。この実名の転記を止めます。事故結果を封印へ入れるかも、本人へ確かめてください」
名簿の作成者は、暫定命令の文言を示した。ミナはリディアへ判断を求めず、指定保管者欄へ自分の名を書き、朱の停止票を医療行へ掛ける。
ローヴェンは、元の同意欄、転記時刻、停止時刻、停止した権限を順に照合し、四層命令の広すぎる定義を別の保全候補へ加えた。患者名は公衆へ出なかったが、出る前に止まったから無傷とも記さなかった。
第5日第1鐘、サラは一人で来た。前掛けではなく、店で客に会う時の濃紺の服を着ている。袖口の片方だけ縫い直され、左右の長さがわずかに違った。濃紺の布には店の糸屑が一本残り、彼女は待機席へ座る前に摘んで床へ落とした。
机にはエッダの記録がない。二人の公証書記は新しい封を開き、申立て原本の受理番号から始めた。リディアは前日と同じ技術者席へ座ったが、サラは一度もそちらを見なかった。
「ベルト・ハーゲンの退職について」
「第5月13日に受理されています。第6月末で終わる予定でした」
サラはそこで書記の質問を止めた。次の問いが始まる前に、閉じた記録票へ指を置いた。
「店へ戻れば、七軒の秋注文と、白墨の線だけ引いた裁断台が待っていました。囮は命令ではなく、あの人が『俺が行った』と選んだ。そこまでは公開記録へ入れてください」
書記が「最後の言葉」と書きかけると、サラは右の人差し指でその二字を覆った。書記の筆が紙から上がるのを見てから、自分の膝の上で両手を重ねた。
「最後に何を言ったかは、ここへは置きません」
紙から指を離した時、問いの欄は「最後」の二字で途切れていた。サラは書記の手元を見たまま、濃紺の袖口を一度だけ引き下ろした。縫い直した側は、引いても手首に届かなかった。申立書の要求欄は、生活損と原因の保全だけだった。
第2鐘、二人の書記はエッダの記録とサラの記録を別の封へ入れた。ローヴェンは通知日、本人確認、封番号を見て、それぞれ別の受取札を切る。
最後に、サラへ匿名保護の用紙が示された。店の住所を伏せ、申立人名を記号に替えることもできる。サラは説明を最後まで聞き、公開希望欄を自分の側へ引いた。
「夫の名だけ出て、私が隠れたことにはしません」
政治に使われる可能性も、店へ詮索が来る可能性も、確認欄に記されていた。サラはどちらにも読了印を置いた。
それから、公開希望欄へ、サラ・ハーゲン、と書いた。




