七灯が砕ける夜
第七灯から入った火は、第一灯へ届いても止まらなかった。
七つの覆いを結ぶ金線が、中央蓄積石へ向かって白く太る。セレスティアの掌から出した熱とは逆に、礼拝堂の床下から冷たいものが腕を上ってきた。東治癒院を示す枝だけが細く震え、焦げ跡の印が内側へ引かれている。
「出力を六割へ」
セレスティアが言うと、運用官が中央の配分桿を下げた。七灯は一度暗くなり、また第七から順に明るさを取り戻す。総量を減らしても、戻る順番は変わらなかった。
南水路の札が黄色へ落ちた。穀倉線の警告板が一枚、続いてもう一枚、黒く焼ける。東治癒院の床線からは、熱が中央へ吸い上げられるように脈打っていた。
セレスティアの右脚に、誰かの筋を内側から引き抜く痛みが走った。膝が崩れ、祈祷台の縁へ片手をつく。彼女自身の脚はまだ動く。それでも表示板の東治癒院枝は脈打ち続けた。
「同期を解きます」
ユリウスは広場を見た。七灯が揃った瞬間、七つの入口へ押し寄せた群衆が前へ詰まり、後列ではまだ祈りの成功を叫んでいる。ここで暗くなれば、狭い回廊へ一斉に戻る。
「西と南の柵を先に開けろ。半刻、保てるか」
警備兵が二つの出口へ走り、露店主たちが荷を退け始める。
「半刻のあいだ、あの枝から戻り続けます」
「では一刻ではなく、出口が開くまでだ」
第一灯の内側に霜のような亀裂が走った。東治癒院の札から戻る熱が、七灯の共通節へ入り、中央石の表面で白くはぜる。配分桿は赤目盛を越えていない。
セレスティアは祈りをさらに弱めた。声を落とし、息を半分にしても、弱い枝から戻る光だけは細くならない。通常なら先に閉じられるはずの患者枝も、水路も、穀倉も、等しい配分の溝へつながったままだった。
東治癒院の表示板で、右脚の旧痕が一度強く光った。その後、何も返さなくなる。
「切ります」
ユリウスが振り向いた。西の柵はまだ半分しか開いておらず、通路の人波が横へ曲がり始めたところだった。
「待て」
セレスティアは祈りの輪から両手を抜いた。掌の皮が金具に貼りつき、薄く剥がれる。次に、七本を同じ目盛りへ束ねていた同期留めを、肩で押し上げた。
金具が外れ、七灯の明るさがばらばらになる。第一灯の覆いが割れ、落ちた破片が石床で跳ねた。遅れて第三、第四、第七の硝子も砕け、広場から悲鳴が上がる。
祈りは止まったが、中央石の残った光が床線へ流れ続けた。運用官たちが各枝の物理栓へ走る。セレスティアは東治癒院の栓番号を叫び、南水路、穀倉の順に、戻り表示の強い枝を指した。
西回廊では、人が閉じた扉へ押し寄せていた。近衛が閂を外す前に蝶番が曲がり、扉が内側へ倒れる。露店四台が押されて横倒しになり、陶器と果物が足元へ広がった。
「走るな。西は開いた。南へも抜けられる」
ユリウスの声が回廊へ通った。近衛を一列に並べ、人の流れを二つへ割る。投げられた小石が柱へ当たり、別の石は兵の肩をかすめたが、剣を抜かせなかった。
セレスティアは、倒れた女の腕を衣の帯で固定した。救護所まで運ぶ板を呼ぶ。足元の少年は額を切っており、布を押し当てると自分で歩けた。
日が昇るまでに、礼拝堂周辺の死者は零と確認された。骨折二人、切り傷と打撲九人。倒れた露店は四台、西回廊の扉は一枚、蝶番ごと外れていた。
東治癒院から最初の連絡が来たのは、その日の第3鐘だった。別の二床で痙攣と体温低下が出たが、閉栓後に収まった。南水路は半刻、供給が落ち、穀倉では警告板二枚が焼けた。東治癒院では担当者が各栓を閉じて管を検め、南水路と穀倉でも焼けた札の先を一本ずつ追っていた。
東治癒院の一床だけ、戻らない動きがあった。事故前の診察では、患者は両手で右膝を正面へ戻せた。踵と小指への刺激にも反応した。事故後は、同じ手順を繰り返しても、足先が動かなかった。
セレスティアは患者番号でイルマだと分かった。通知には名も住所もなく、生命状態、生存、床線番号、新しい動作差だけが記されている。大祭同意欄は、空白の写しが添えられていた。
「会わせてください」
「事故診察の保管者が許可する範囲だけです」
院の受理官は扉を開けなかった。第27日と第29日に同じ検査を行い、さらに日を置いて反復するという。いま分かるのは、できた動きができないことまでで、回復しないとはまだ記せない。
セレスティアは、自分が公式停止欄を空けたことを申告した。運用原本の受諾欄と、切断時刻の両方へ名を残す。ユリウスの継続要求は、別の時刻で記録された。
第29日、第3鐘。第四灯の保守簿から、以前の運用で残ったリディアの署名痕が確認された。王国監査局は、七灯旧線事故、同じ契約官の署名履歴、すでに受理していたサラ・ハーゲンの実名申立てを、責任確定ではなく証拠保全のために一つの調査範囲へ入れた。
発行権限文、申立て受理番号、祭礼対象表と運用原本の認証抄、辺境で封じるべき品の目録が、二重の封筒へ収められる。セレスティアの名も、リディアの名も証拠との関係だけを記され、責任確定欄は空白のままだった。
外封へ押されたのは、王国監査局の黒封だった。




