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正しさの漏れ穴

ベルトの問いに答えられないまま、七人は三人を松割宿へ戻した。宿までは馬で四半刻だった。現場で矢を抜かず、軸だけを短く切り、厚布と割り板で動かないよう留める。


ガルド、ハイン、オルド、オスカーが外套の担架でベルトを運び、エルクは騎乗馬へ横乗りさせてカミラが曳いた。ヨナスはロスの肩を借り、左腕を胸へ固定して歩いた。リディアは残る馬をまとめた。


宿の主人は低い干草車から藁を腕で掻き落とした。


「先に乗せろ。札は走りながらでいい」


カミラが南方商会の借用札と印を主人へ渡し、生き残った荷馬一頭をつなぐ。ベルトとエルクを幌の下へ横たえ、オスカーが御者台に座った。リディアは荷台でベルトの当て布を押さえた。


ヨナスは一頭へ横乗りし、ロスが曳く。ガルド、ハイン、オルド、カミラが四頭へ乗り、傷を負ったベルトの馬を一頭、手綱だけで連れた。人は十人のまま、馬は七頭。二台の荷車は車軸まで焼け、坂へ残した。


城下へ戻ったのは、夏第6月第4日の第1鐘前だった。治癒倉庫でルッツがベルトの矢を外した。右下胸から入った矢じりは肺を裂き、その奥の太い血管にも届いていた。胸へ管を入れ、外から押さえられる出血は止めたが、脈は一刻ごとに浅くなる。


「意識が戻っても、長く話させません」


ミナはそう言い、聞き取り票を寝台から遠ざけた。ヨナスの左前腕は骨を外れていた。エルクの矢も大腿の外側で止まり、大きな血管には触れていない。二人は手術を終えれば助かる見込みがある。その言葉をベルトへ伝える役を、ガルドは他人へ渡さなかった。


リディアは隣の洗浄室へ、公開表の原本と封印台帳を運んだ。誰かが表の写しを襲撃者へ渡した。あるいは、経路を記した関係者紙が開かれた。最初に考えた二つを、調査仮説として書く。


公開表は広場、五区、薬舗、南門へ出している。写しを入手するのに、盗みも内通も必要なかった。関係者紙の封は、出発時と事故後の二度、留め金番号が一致している。カミラ、会計吏、南荷出し所検量係の印にも欠けはない。


「開けられた跡はありません」


リディアが言うと、カミラは焼けた外套を脱がずに答えた。袖口から落ちた煤が、封印台帳の脇へ黒い筋を作った。


「開けなくても、出た日は分かりました。けれど松割と柳床、どちらへ入るかは分からない」


二つの初動路と双楡分岐、二つの最終進入候補を知っていたのは、署名者と御者、護衛だけである。宿札にも道名は残していない。公開表だけを止めれば次は防げる、という仮説は、そこで外した。


第2鐘、トーマが南荷出し所からの追送袋を事故室へ持ってきた。隊商が出た第1日第3鐘の四半刻後、商会札も村札も持たない二騎が南荷出し所の出門を通っている。検量係が閉門時に写しを北行きの早便へ託し、二日かけて城下へ届いた。出門番は通行を拒む理由がなく、馬の色と外套だけを記した。その二頭が替馬札の馬と同じかは、まだ分からない。


トーマは、第17日、第24日、第1日の売買抄を出門帳へ重ねた。安全附表には時刻、頭数、札の有無しかなく、出門帳にある馬色とは照合できない。三日前に買われた二頭と、四半刻後に出た二騎が同じだとは、まだ書けなかった。


松割宿へ送った警備班からも、昼に第一報が来た。双楡分岐で、松割側へ進んだ隊商の轍を追う一騎と、林側へ戻る一騎の新しい跡が分かれている。襲撃場所の上では枝が人の目の高さで刈られ、坂を見下ろす穴になっていた。


追尾された時刻は見えた。それでも、林へ戻った一騎が六、七人を先回りさせた道は、商用図にない。ガルドは血のついた手袋のまま、アレクシスへ軍道記録の閲覧を求めた。


「松割坂へ入れる軍用路があるなら、護衛判断に要る」


「斥候の配置まで、事故室へ出せない」


「名を出せとは言っていない。俺が知らずに部下を通した情報があったかを聞いている」


アレクシスはすぐに封を切らなかった。事故調査の目的、閲覧者、開始時刻、伏せる範囲を先に書く。領主だけでは開けず、護衛指揮官ガルドの調査印を加えた。斥候名と旧境標からの正確な距離、迎撃班の位置は黒紙で覆われる。


その手順を終えてから、夏第5月第29日の要約が開かれた。旧境標の西に、身元不明の騎手が六、または七人いた。蹄跡は炭焼谷の閉鎖軍用脇道へ続いている。


国境巡回の信号が城へ届いたのは、第29日第1鐘の四半刻後だった。南へ出たリディアたちは、まだ城下から四半刻ほどしか離れていない。第2鐘に早馬を出せば、最初の宿で追いつける時刻である。


アレクシスは北西側へ迎撃班を出し、情報源と脇道の位置を守るため記録を封じた。騎手が隊商を狙う証拠も、南へ回った証拠もなかった。隊商を護衛するガルドと、リディアへは、越境騎手がいたという警告も送っていない。


紙を読むあいだ、治癒倉庫の向こうで金属盆が落ちた。誰かが拾い、すぐ水音が戻った。


「これを知っていれば、私は止めました」


リディアは第1日の自分の勧告を机へ置いた。購入者も行先も分からず、条件を増やして運行する、と書いた紙だった。


「隊商を狙う証拠はなかった」


アレクシスは、封印要約の騎手数を指した。指先は、日付も積荷も記されていない余白で止まった。


「日付も荷もない。南へ兵を回せば、北西の村を空ける。私は迎撃をそちらへ出した」


「兵を南へ回してほしかったのではありません。騎手がいると知れば、三枚の替馬抄を別の重さで見ました」


「公開時刻を決めた時、私は出発日を読めると記録した」


「それでも印を押した」


「買い手の条件だった」


夕刻、炭焼谷側を調べた班が戻った。閉鎖脇道の出口には、まだ白くなり切らない小さな焚火の灰があった。馬を木陰へ置いた踏み跡と、松割坂を見通すために落とされた枝もある。林へ戻った一騎の蹄跡は、その出口近くで消えていた。


リディアは公開表の到着時刻から、通常三日の行程を差し引き、第1日へ指を置いた。横へ、南荷出し所の出門帳を置く。二騎は四半刻後。双楡分岐の略図では、一騎が松割側を追い、もう一騎が閉鎖脇道へ戻っている。最後に、半日以内の灰と刈られた枝の現場札を重ねた。


リディアは原因票を二枚に分けた。一枚には、公開表による出発窓と積荷価値の絞り込み、出門後の二騎による追尾、閉鎖脇道からの先回りを記した。札なし替馬の反復は準備の可能性あり、買い手と二騎の同一性は未確定とした。もう一枚には、越境騎手の警告を南へ向かう護衛へ送らなかった時刻を記した。犯人名は空欄、内通と封印不正は確認なしとした。


カミラは二枚を最後まで読み、南方商会の運行札を机へ出した。煤で汚れた指を拭かず、すべての便名へ横線を引いた。オスカーとロスは事故室の戸口に立ち、最後の便名が消えるまで濡れた帽子を被り直さなかった。ロスの片方だけ紐を替えた長靴には、石折橋の泥がまだ乾いて残っていた。


「北へ出す便を、全部止めます」


「次だけ延期では」


「御者へ、同じ仕組みで今度は安全だと言えません」


危険手当前半は履行済みだった。商品は全損し、五区にはエリオへ返す五十二枚だけが残る。受領時の供託は南市場商人会へ戻し、南方商会の荷車と死んだ荷馬は設備損の別頁へ移した。


五区代表のうち、マルタは焼けた布も売れないのかと尋ねた。ミナが煤のついた薬箱と、水を吸った布を一つずつ不適合へ置く。針包は外箱が焼け、油と泥が中まで入っていた。


「使って化膿した時、襲撃のせいだと確かめられません」


救えた品はなかった。日常薬は重症と術後へ絞っても第7日第1鐘までで、私売り棚も空だった。越冬薬草は四束不足し、ヨナスとエルクの処置で清潔布も減った。リディアが次の供給者欄を開いても、カミラの下は空白だった。


カミラはその欄を見ず、折った運行札をオスカーへ渡した。オスカーが受け取った紙から、煤が机へ落ちた。


「御者を帰して」


ロスは帽子を握ったまま動かなかった。オスカーが先に肩を押し、二人の濡れた靴の音が治癒倉庫の扉の向こうまで遠ざかった。


夜の第4鐘前、ミナが事故室へ来た。前掛けに、洗っても落ちなかった血の色が残っている。


「ベルトさんの脈が、また落ちました」


ガルドが立った。椅子の脚が床を引っかき、事故室の全員が顔を上げた。


「次の朝、第1鐘までは」


ミナは首を振った。洗い切れなかった血の色へ、視線が落ちた。


「保たないと思います」


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