第47話・冷酷無常のスリーパー
そう言えば、最近知ったんですけどブックマークってログインしないとできないんですね。
アポロが倒れた、突然目の前で
こんなこと、今までなかった。
いや、正確に言えばお腹の傷をやせ我慢して限界に来たときに倒れるとかはあったけれどこんな脈絡なく倒れるのは初めてだ。
「アポ、ロ?」
地面に激突する前に何とか抱き寄せ回避する。
だが、いくら揺すって見ても彼は唇一つまともに動かしてくれない。
突然の出来事にあたしも動揺が抑えられず取り乱してしまう。
***
(今だ!)
そこを、狙う者は当然動き出す。
奴隷紋を失ってなお、ヴォカを名乗る彼女は主のために動いた。
すなわち、狙うはアポロの命か最低でも人質は取りたい。
アフェは寝たふりに気づいていたとはいえ、背も取り動揺した状況ではそんなアドバンテージは会ってないようなものだ。
武器はないため叫ばれる前に素手で締め落とそうと彼女がアフェに手を伸ばす。
「とった」
だが、その手がアフェにたどり着くことはなかった。
その前に、ありえない所から伸びる腕によって手首が掴まれ止められてしまったからである。
「何ッ!?」
反撃など来ないという油断、それゆえに掴まれてしまった手首。
そして、これが彼女にとって致命的なミスになってしまう。
「アポロが動いてる」
そう、動き出したのはついさっき気絶したアポロであり無意識に反撃行動に移っていたのだ。
意識がある彼ならまだしも、今の優しさも何も通っていないように見える状態で掴まれでもすれば――
「離せッ……ぎゃあぁっ!」
当然、へし折られる。
圧倒的な万力で締め付けられたヴォカの腕は悲鳴を上げ、同時にあり得ぬ方向へ曲がってしまった。
(そうか、アポロの意識が無いから加減が出来ないんだ)
アポロらしからぬ行動をそう分析しながら、アフェは考える。
もちろん、この場をどう収めるかどうかだが、下手な動きをすれば彼に攻撃されたり、最悪ヴォカが殺されかねない。
だが、そんな分析なんて露知らずヴォカは既に反撃の動作に入ろうとしていた。
(目の焦点があってない。やっぱり、意識はないんだ。だったら、私の魔法でも殺せる!)
手の痛みは決して無視できるものではない。
だが、奇襲に失敗した今は数的不利を覆すため仲間を呼ばれる前に一人殺しておこうと判断したのだ。
自身の体の刻印に魔力を灯し、発動させる。
「『粒子加速!』」
それは、端的に言えば自身の速度を理論上は『光速』に近づけるまで加速させる桁違いの力を持つ魔法。
ただ、悲しいかな――
加速、つまり最初の方のスピードはたかが知れているのだ。
「ふぐっ」
「……」
加速させればこちらの物と言う魔法だが、動き出しの早かったアポロには意味がなかった。
ゆえに、加速前に首根っこを掴まれ空中に制止させられた。
(首を掴んで詠唱を封じたのね。でも……)
こうなれば、もうヴォカに逃げるすべはなく。
このまま、ただ彼女を気絶させるのなら何も問題はない。
だが、今の理性のないアポロがその程度で終わるだろうか。
(いや、終わるわけない!確実に彼女の首を折る)
そう確信した瞬間にアフェは動き出した。
別に、ヴォカを助けるつもりじゃないアポロに殺させないために動いたのだ。
「な、何やってるんですか!?」
だが、彼女がアポロの手を止める前に声を上げた者がいた。
そう、下の物音に違和感を感じて降りて来たカタリナである。
そこで目撃したのは意識を失ったアポロがヴォカの首を締め上げている姿
「アポロ意識ない!襲撃!イージス呼んでてきて!」
「は、はい!!」
アフェは簡潔に状況を説明して、増援が必要と伝えてカタリナを危険な場所から遠ざける。
そして、彼女が背を向けたと同時にアフェはアポロの腕に手を伸ばす。
「何よ。この馬鹿力は!!」
幸いにも敵味方の区別はちゃんとついているのかアフェは攻撃はされないものの全く腕が振り解けない。
だが、彼女の目に一切の曇りはなく、むしろ笑みを浮かべる。
(こっちだってあんたの隣に立つために努力してんのよ。意識のないあんたに負けて堪るもんですか!)
イージスの身体強化が独学だったように、アフェも同様に独学だ。
ベラルトのように膨大な筋力に大量の魔力を纏わせるようなやり方はできない。
「抜けろぉぉ!!」
だが、アポロの近くにいた彼女だからこそ、技術を学び吸収し己の元へとできたのだ。
「けほっ」
それによって、手を離すとまでは行かなかったが多少手を緩めさせることには成功した。
だが、それは掴まれていたヴォカにとってはチャンス以外の何物でもなかった。
「『粒子加速!』」
手が緩んだ瞬間、喉が解放されたことで自身の魔法を詠唱し加速状態に入る。
当然、ここはまだアポロの間合いだ。
だけれど、物騒な手はアフェによって掴まれているため反撃は来ない。
(今なら、こいつを殺せるかも……)
そう、頭をよぎる。
だけれど、彼女がそうはしなかった。
「きゃあっ!?」
「ついて来てもらう!」
加速状態のままアフェを連れてクランハウスを出ると夜の街に消えていく。
その瞬間を目撃した者はおらず、アポロも倒れ、数分後にはカタリナの悲鳴が木霊することになのだった。
この話がどういうことなのか……
第46話で『常在戦場』の不備だったと思われていたが、実際は逆に『常在戦場』が極まりすぎて連れ去られていたというわけです。
皮肉―




