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第45話・救世主再臨のアポカリプス



 クランハウスで倒れ次に目を覚ましたのは――


 無数に十字架の生えた雪の積もる銀世界だった。

 空を見上げると、分厚い日差しをろくに通さない暗雲が立ちこんでいる。


「はぁはぁ……ここは、どこなんだ」


 幸いにも寒さは一切感じないし、凍傷にもなっていないためその心配はない。


 だが、問題は足元の雪が踏むたびに僕の足を取って離そうとしないのだ。

 そのたびに体力も気力も削られ段々と恐怖も沸き上がってきた頃


「人?人だ!人がいる!!」


 遠目から雪景色の中に淡い輪郭の人影が現れる。


 後で考えてみれば、僕の立場は誘拐や幻覚を疑うべきだというのにこの行動は軽率だった。

 それほど、僕の精神が追い詰められていたと言えるかもしれない。


 ともかく、十字架と雪しかない世界で初めての住人だ。

 必死に雪をかき分けて進み、たどり着く。


「……!?」


 言葉を失う。

 頭の中が目の前の存在を分析し飲み込もうとしてもつっかえて呆然と”僕”を見る。


 そう、銀世界に突っ立っていたのは僕と全く同じ姿をした正体不明の人間だった。


「お前は誰だ」

「誰か。難しい問いだねかつて、僕は『無涅(むね) (めぐる)』と呼ばれ、いつかに、私は『強化人間プログラム』と呼ばれ、最初に俺は『影山(かげやま) 阿歩炉(あぽろ)』とも呼ばれた」

阿歩炉(あぽろ)?って、それでどれなんだ結局!」


 僕の顔で僕の声で、謎の人物は三つの名?を名乗る。

 だが、表情はかなり乏しいのかよく顔に出る僕とは異なり全く動かない。


「選ぶとしたら、俺に一番ふさわしいのは影山(かげやま) 阿歩炉(あぽろ)だ。カゲヤマと呼んでくれ」

「か、カゲヤマね。それで……」

「鹿児島県生まれ、好きなものは特になし、趣味もない。夢は救世主だ」


 この世界について聞こうと思ったが、僕の言葉を遮ってカゲヤマは自分語りを始める。


(カゴシマ?聞いたことない地名だな)


 まあ、トラウアンデ大陸は広い。

 知らない地名の一つや二つあってもおかしくないだろう。


「う、うん。それで、君はここがどこか知ってる?」

「もちろん。ここは、お前の心の中の世界。この雪も、十字架も、暗雲もお前の心から生まれた物だ」

「は、はい!?ここが、僕の心の中。こんな世界が……?」


 辺りに埋まる十字架。


 それを、じっと見てみると『アテナ・スキュータム』や『サンライズ・ミラキュルム』など名前が彫られていた。

 それ以外にも必ず十字架には見覚えのある名前がある。


「その十字架は墓標だよ。お前が殺して来た人のね」


 抑揚のない、淡々とした声で彼はそう告げた。

 すとん、と体の中から音が聞こえてくるくらい腑に落ちるのがわかる。


「……そうか、なら君も僕が殺した誰かなのかな」

「違う。だとしたら、お前は俺のことを名前を知っているはずだ」

「それは、そうだね。うん、忘れることなんてないかな」


 殺した人間の顔と名前は一人残さず記憶の片隅に納めている。

 いや、正確には忘れられず永遠にこびりついているだけなのだが


「じゃあ、何で君はここにいるんだい?人の心の中ってそう簡単に入ってこれるもんなのかな」

「いいや、俺は最初からここにいたし後から来たのはお前だ」

「え?いや、ここは僕の心の世界なんだよね?」

「そうだ。けど、ここは俺の心の世界でもある」


 改めて確認しても、カゲヤマはここを自身の心の世界だと主張し続ける。


(そんなのまるで、僕とカゲヤマが同じ体を共有しているみたいじゃないか)

「その認識で大体は合ってるよ」

「っ!?」


 今、考えていたことは口には出していなかったはずだ。

 だというのに、彼はそれをわかっているかのように返答して見せた。


「共有してるの?体を!?」

「そう言うことになる。ただ、勘違いしないように言っておくと俺はこの体で動いたことはない」


 僕も自分以外の意志で体を動かされた思い出はない。


「結論から言おう。お前はこの場にいちゃいけない。さっさと現実に戻れ」

「僕だって好きで来たわけじゃないんだけど……」

「大丈夫だ。原因は、何者かが俺の魂に干渉したことで引っ張られるように来てしまっただけだ。時間が経てば勝手に目覚める」


 一生出られないとかだったら、どうしようかと思っていた所だ。

 だが、安心したのもつかの間に聞き捨てならない一言が耳に入っていた。


「魂に干渉?」

「そうだ、お前じゃなく俺の魂に干渉した奴がいる。まあ、そんなことはどうでもいい」

「どうでもいい訳ないんだけど!?」


 カゲヤマの態度から本当に別人なんだと確信する。

 こいつが、僕なら絶対にどうでもいいとか言わないからだ。


 だが、話を聞き出そうと詰め寄ろうとした瞬間に僕はその場で崩れ落ちた。


「どうやら、お迎えが来たらしい」

「くっ、クソ……だから、魂に干渉したのは誰なんだ」

「知らん。自分で探せ」


 急激な眠気で瞼に重りでもついたのかと勘違いするほど重い。

 適当な返答しかしないカゲヤマへのイラつきで何とか保たせているも時間の問題だ。


「ただ、これだけは教えてやる。もし、アフェやカタリナ。みんなを救いたいならメサイアだ。メサイア計画を止めるしかない」

「メサ、イア……?」


 妙に聞き覚えの名前だ。

 だが、それを聞き返す力すらなく僕の意識は再び闇の中に落ちていった。


「……じゃないと、みんな死んじゃうよ。新人類さん」


 アポロがさっきまでいた雪の跡を眺めながらカゲヤマはそう呟いた。

これが、いつ普通のファンタジーだと言った!!

転換編も佳境に突入するでぇ!!


いつも通り、応援よろしく!

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