第40話・鴨が葱を背負って来る
追い出された僕たちはクランハウスへの帰路についていた。
まだ、日も落ちて切っていないため出ているのは通常の露店ばかりで、奴隷など裏の商売はまだ影に隠れている。
とはいえ、活気が無いわけではなく人で賑わい。
偶に店頭に置いてあるレリックには目を引く品が何個もある。
だが、その店に近づく前にカタリナが僕の前に立ちはだかった。
「ダメですよ」
「まだ、何も言ってないんだけど」
「アフェさんから言いつけられてるんです。アポロさんにこれ以上余計な出費を重ねさせないようにって」
「あはは、そんなことするわけないじゃないか。僕だってもう24歳の良識ある大人なんだよ」
「特に光ったり、動いたり、音が鳴ったりする物は危険だと言われてます」
なんてことだ申し開きも出来ない。
どうやら、聖剣をレインボーソードに交換した前科が相当重く見られているようだ。
何ならカタリナに渡したレリックも音が鳴る物だったことが尾を引いている。
「アポロさんはそう言うレリックが好きなんですか?」
「そう、だね。うん、そうだよ」
「何故そんなに歯切れが悪いんですか」
イージスからの質問に口ごもったのには理由がある。
僕が間違いなくそう言うレリックが好きなのは間違いない。
ただ、聖剣をレインボーソードと金貨300枚を交換して来た時と同様に割と衝動に従って買ってしまうことも多々あるため実際は後悔していることの方が多いのだ。
「……早めに帰ろうか。ここにいると、体が勝手に動いちゃいそうだし」
そう言って僕達は後ろ髪を引かれる思いでその場を足早に立ち去ることにした。
それに――
(さっきから見てるやつがいるな)
ギルドを出た時からずっと視線を感じていた。
おそらく、僕とベラルトさんとの戦いを見ていたギャラリーのうちの一人だろう。
今の所、敵意は特に感じてない。
(露店を見るついでに何度か視線を向けてるんだけど反応なし。素人か、それともバレるのを前提に動いてるか)
どちらでも面倒ごとが服着て向かってきていることに変わりない。
どうしようかと思案したが迷宮に潜る前に厄介事は片付けておくことに越したことないだろう。
と言うことで、並んで前を歩いている二人に小声で指示を出す。
「二人とも、このまま自然に歩きながら聞いて。タイミングは次の路地に入ったら、イージスはカタリナを連れてクランハウスに帰って」
「ど、どうしてですか?」
「つけられてる。これで納得して欲しい。あと、なるべく遠回りして帰るんだ。アフェには大丈夫って言っておいて」
クランハウスの場所は調べれば簡単にバレるが、尾行が一人とは限らない。
無いよりはマシだろう。
二人ともこちらを向かず無言で近くの路地裏に入った瞬間――
「……!」
イージスは無言でこちらを振り向き頷いた後、カタリナを抱えてその場を走り去っていった。
対して僕は路地裏でそのまま息を殺し尾行者が来るのを待つ。
「ッ!?」
「さてと、何のようかな」
それだけで、無警戒に走り込んできた尾行者の背後を取り、トンッと肩をつついた。
「な、何で、尾行がバレ……!?」
「バレバレだよ。視線向けすぎ、魔力漏れてる、僕達の動きに合わせて動きすぎ、尾行するならもっと気を付けなさい」
「は、はい!精進します」
「うんうん……って、僕は何やってるんだ。追って来た相手にアドバイスなんて」
少なくとも手練れではなく、素人だとわかって気が抜けてしまったのだろう。
そうだとしても、すぐ気を抜いてしまう事から騎士時代と比べて僕もそこそこ平和ボケしているのかもしれない。
「それで、何の用?」
「あ、そ、そうでした。じ、実は貴方の実力を見込んでお願いがあるんです」
「その前に、君は誰だか教えてくれないかな」
会話の段階を一、二歩飛ばした質問に待ったをかけ問いただす。
「わ、私は、その……いえ、私はアンルーフ・コンボイションの娘。ヴォカ・コンボイションです」
「そう来たか……」
思わず空を見上げる。
今日だけで一体何個面倒ごとが転がり込んでくるというのか。
魔力の流れなどから魔法使いには見えないし、身綺麗なことからどこかの有力者の娘って所だと推測していたが予想外の名前が出て来て困惑が抑えられない。
「その名前を僕に出すってことは全部知ってるってことで良いんだよね?」
「はい」
もちろん、彼女の兄が犯した悪魔召喚と保険金詐欺事件についてだ。
それを知った上で僕にお願いと言うなら――
「事件の告発?」
「お、おっしゃる通りです。ですが、どうして私が言おうとしたことがわかるんですか!?」
「何となくだよ。それで、何についてかな。悪魔はもう証拠が上がってるし、保険金詐欺の方も時間の問題だと思うけど」
「じ、実は兄の件ではないんです。私の父の件です」
「……へえ」
それは興味深い。
透明化の魔法を使うフォラスのことを話した時の反応は無関係とは言い難いものだった。
あの時は、確固たる証拠を出させられる状況でもなかったので見逃す結果となった。
だが、その尻尾を掴むチャンスが目の前に転がって来ることになるとは――
「その話。ぜひ、聞かせてほしい」
今度こそ、捕まえて見せると決心を固め、まるで騎士だった時のように面倒ごとに飛び込んでいくのであった。
次回は、明日の20時43分あたりに投稿しようと思います。
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