第27話・自利は私に利他は彼に
流石に、腹に穴が開いた状態で戦い続ければいずれ限界が来る。
アンルーフの前で見せたくなかったのでさっきまで全力で虚勢を張っていたのだ。
「アポロ!」
「アポロさんっ!!」
それを見てすぐにみんなが駆け寄ってくれる。
「その、わ、私のせいで……」
「これは、時間停止の悪魔にやられた奴だよ。そうだ、せっかくだしやって見ようかここで”治療の奇跡”を」
「ち、治療の奇跡をですか!?」
元々、迷宮に行こうとした理由の一つに彼女の特訓と言うのがあった。
そのため、どこかで怪我をする気ではあったのでむしろちょうどいい。
だが、当のカタリナは顔を青くし、自身の責任に悶えている。
「詠唱は覚えてる?」
「は、はい」
正直、内心は痛みで穏やかではないがそれを隠すために必死に笑顔を作る。
呆れた目で僕を見るアフェには十中八九バレている作り笑いだが動揺している彼女は気づかないだろう。
「なら早速やって見よう。失敗してもいいから、ほら詠唱詠唱」
「っ、はい!!」
彼女は祈りを捧げるように両手を重ね合わせ握る。
次に、神の奇跡を発動させるとき特有の神聖なオーラがまとわりつく。
「『”偉大なる我が主”よ。我が捧げし魔力を贄に彼の者を癒したまえ。”治癒の奇跡”』」
そして、彼女の詠唱が成立すると手に緑の光が集まる。
しかし、それが僕に届けられる前に光は霧散して消えてしまった。
「あ、あ、ごめんなさい。も、もう一度だけ」
「いいよ。どんどんやろう」
「はいっ!『”偉大なる我が主”よ。我が捧げし魔力を贄に彼の者を癒したまえ。”治癒の奇跡”』」
だが、彼女の祈りとは裏腹に次も緑の光は霧散していく。
その次も、その次も、そのまた次も同じような失敗を繰り返していく。
(おかしいな。魔力の動きはこれであってるはずなんだけど)
それでも、実際には成功しない。
もしかしたら、魔力とはまた別の要素が失敗に関わっているのかもしれない。
けれど、僕は教会関係者ではないのでそれを教えることはできない。
「カタリナ……」
最悪、火で傷口を焼いてしまおうかと思ったその時、僕は自身の言葉を思い出した。
「君は何をしたい?」
「え」
引っ張られ緊迫した糸が持っている両側から中央に力が加わるような一休止
それを、彼女に与えるような問いだった。
「少しせかすようで悪いけど、それを今聞かせてほしい。もちろん、完璧じゃなくてもいい。長期的なものじゃなくてもいい」
「私のしたい事。でも、今はそれよりもアポロさんが!」
「うん。だけど、一回忘れて……ほら、目を瞑って考えてみて」
何か言いたいことがありそうだったが、僕は構わず血のついてない方の手で彼女の目を閉じさせた。
***
目を閉じて、急に考えてと言われても私には彼の体調の方が心配だった。
教会には怪我人が来ることも多かった。
だから、彼が無理をして虚勢を張っていることだってすぐにわかる。
(考えてって……でも、それよりアポロさんが)
たとえ目を閉じたところで血の匂いはするし、怪我人特有の息遣いは顕著に聞こえる。
そのため、目を閉じても考えるどころか焦るだけだった。
(このままじゃアポロさんが死んじゃう。なのに、何で私は奇跡を使えないの!!)
奴隷に売られる前だって必死に練習した。
買われるために、少しでも有用に見せるために頑張り続けた。
「落ち着いて」
その時、彼の手が私の手を包んだ。
(暖かい)
覚えてる。
買われたとき、私をクランハウスにまで連れて行ってくれた時と一緒に寝た時に感じた暖かさだ。
でも、時間が経つにつれ段々と冷めているような気がした。
(嫌だ、嫌だ、嫌だ……アポロさんが消えちゃう)
手放したくない。
理由はわからないけど、とにかくこれを失いたくなかった。
それに気づいた時、私はゆっくりと瞼を開いた。
「私は、私は!アポロさんがいて欲しいです!一緒にいると暖かいアポロさんと!」
「そっか!」
それを聞いた彼は満面の笑みで答えてくれた。
間違いなく、痛みとかそう言うのを隠している物じゃなくて心の底から嬉しそうな声だった。
「っうぅ!!」
それを見た私は気づいたら彼に抱き着いていた。
血が付くとか、そう言うのは全く気にせずその温もりに飛びつき背中に手を回しながら詠唱する。
「『”偉大なる我が主”よ。我が捧げし魔力を贄に彼の者を癒したまえ。”治癒の奇跡”』」
考えてみれば、私はいつだって誰かのために祈りを捧げていた。
奴隷になった時だって自分を犠牲にする行為こそが尊いものだと本気で思っていた。
でも、それだけじゃダメだ。
(私とアポロさんのために祈らなくちゃ)
片方が欠けてもいけない。
誰かのためにと自分をないがしろにせず、自分のためにと誰かをないがしろにもしない。
アポロをさんの傷を癒すために、自分自身の温もりのために祈った。
***
彼女が僕に抱き着きながら発動させた治療の奇跡は緑の光を放ち体全体を包んだ。
それにより、腹に空いた傷は塞がり、細かい傷も癒えていく。
(凄い。初めてでこんな規模の治療の奇跡が使えるようになるなんて……)
あくまで彼女を落ち着かせるための軽い方便のようなつもりだったが、ここまで効果が出るなんて思わなかった。
「すうすぅ……」
そして、当の彼女はと言うと力を使い果たしてしまったのか僕の腰まで手を回したまま眠りについてしまうのだった。
だけれど、その表情は随分と安らかに見えた。
あ…ありのまま
今起こった事を話すぜ!
『そろそろ飽きて40話くらいで書くのを辞めるかとか思っていた矢先に待っていたように総合評価ポイントが0から10になっていやがった』
な…何を言っているのかわからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…




