↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
20章 魔導大国 編①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
506/510

506、剣聖の誇り

 相対したデュランとルグラトス。2人の剣士が敵意むき出しで睨み合う。


「ちょっ……デュランさん。不味いですって……っ!」


 先行したデュランに追いついたアレンたちは小声でデュランを諌めようとする。しかしデュランはそれを無視する。


「正義の心を忘れたかルグラトスっ! 自ら悪の手に落ちるとは笑止千万っ!」

「ふんっ!……こんなところまで来てご苦労なことだな。だがっ、私は帰らないぞ。私は既に帝国に見切りを付けたのだからなっ」


 抜こうとしていた魔剣から手を離し、ビシッと音が鳴りそうなほどの勢いで指を差す。


「思い上がるなっ! 貴様の様な下衆など願い下げだっ! 誰が貴様を連れ帰ろうなどと……っ! 私の気を逆撫でするのも大概にしろっ!!」

「なんだとっ!? 言うに事欠いて貴様……っ!! では何の様だっ! 私に用があるから話しかけたのではないのかっ!?」


 デュランの怒りを上回るルグラトスの虚勢が響き渡る。今すぐにも剣を抜き、敵をなます切りにする様な気迫に背後のゴロツキたちは怯えている。

 デュランはイライラしながらも少し落ち着き気味に話す。


「……元剣聖である貴様を見つけ、何をしているのかと見ていたのだ。まさか闇取引が行われているとは思いもよらん。そして貴様はその用心棒。貴様は魔剣の所有者に相応しくない」

「無礼者めっ! これは我が師匠から受け継いだ魔剣だぞっ!! 私が師匠から託された想いを踏みにじるつもりかっ!!」

「それはこちらのセリフだっ! 貴様を信じて天に旅立ったロイド氏も今頃失望していることだろうなっ!!」


 ルグラトスの前任、元第六剣聖のロイド=ファルケン。生前は剣聖として一時代を築いた男。ルグラトスが剣聖になる直前まで剣聖であり続けた第一剣聖アシュロフに次ぐ最年長者。

 彼の最期の仕事として知られる聖王国諸教派のタカ派、ハワード=ガストン卿との小競り合いの末、ガストン派閥最強の戦士『暗黒騎士(ブラックナイト)』フィアゼス=デュパインオードの手によって深傷(ふかで)を負い、風前の灯となる。死の間際、弟子であるルグラトスに自分の魔剣と剣聖の立場を受け継がせた経緯があるのだ。


「き、貴様……っ!!! 愚弄するかデュランっ!!!」


 ──シパッ


 ルグラトスは剣を抜き払い、そのまま剣を振り被ってデュランを襲う。デュランはとっさに応戦しようと身構えるが、自身が魔剣を持っていないことをこの瞬間まで忘れてしまっていた。いつもなら剣の柄のある腰の位置で何も捕まえることが出来ずに宙を握る。


(し、しまったっ!?)


 もうすぐそこまで迫っているルグラトスの剣を防ぐ手立てがないことに絶望したデュランは、何とか死なない様に両腕をクロスして防御の姿勢を取る。


 ──ギィンッ


 デュランの腕が切り裂かれるあと一歩のところで剣が弾かれ、面食らったルグラトスは間合いを開ける。ルグラトスとデュランの間に割って入ったのはティオ。小柄な体とは思えない膂力で切っ先を追い返された。


「……ぬっ? 誰かと思えば貴様は七元徳(イノセント)の……」


 いつもの年相応の女の子の雰囲気とは違い、大人びた鋭く強い眼光でルグラトスを牽制する。その姿に恐れをなしたのは戦いを見守っていたレザーだった。


「おい嘘だろっ! 七元徳(イノセント)の『謙虚』どころか『純潔』まで居やがんのかよっ! 撤収だ撤収っ!! とっととズラかれっ!!」


 ティオ同様にリディアまで視認したレザーは尻尾を巻いて逃げ始める。


「あっ! おい貴様らっ!! まだ取引の最中だぞっ!!」


 しかし逃げ出したレザーたちを追うことは出来ない。目の前には七元徳(イノセント)が武器を抜いてルグラトスの隙を窺っているのだ。ここで手傷を負うわけにはいかない。

 だが、ルグラトスの心配は杞憂であった。


「剣を収めてください。ここであなた方と戦うつもりはありません」

「な、何? 戦うつもりがないだと?」


 思ってもみなかった言葉に混乱が生じる。デュランもこれに憤慨した。


「な、何故だティオ殿っ! この男には聞くことがごまん(・・・)とあるっ!!」

「そうでしょうね。しかし、我々は別に使命があります。こんなところで道草を食っている場合ではありません」


 ピシャリと言い放たれた言葉にデュランは言葉を詰まらせる。願ってもない状況にルグラトスは安心して剣を納めた。


「ふんっ、貴様らも訳ありの様だな。大方、潜入調査(ワーム)の一環であろうが、仕事の最中に我を忘れて私に挑発などと……それも魔剣を持たぬ状態で喧嘩を売るとは間抜けも良いところだな。流石は激情の男デュラン。その無鉄砲さには感動すら覚える」

「ぐぬぬぅ……っ!!」

「ふっ……言葉すら紡げぬか。髪と共に思考能力まで抜け落ちたと見える」

「これは抜け落ちたのではなく剃っているのだっ!!」

「どうでも良い。そんなことよりも、もうこれ以上私の邪魔をするな。帝国との関係を私自ら断ち切ったのだ。これ以上は容赦はしない。今見た通り、例え丸腰であろうとも私は切り伏せる。夢夢忘れぬことだな」


 ルグラトスは鼻で笑ってデュランを見下す。いい気分になっているルグラトスに部下が恐る恐る声をかけた。


「あのぉ……ゲムロン様には何とお伝えしましょうか?」


 取引が中断され、取引相手も消えた今、任務失敗以外の言葉が出てこない。デュランが割り込んできたとはいえ、取引自体は普通に出来たために勝手に中断していたレザーたちに問題があるとふと思ったが、そんな話を真に受けるほどゲムロンはアホではない。


「馬鹿か貴様らっ! すぐに奴を追えっ! 私の初仕事を台無しにするつもりかっ!」

「あ、も、申し訳ないっすっ! すぐにっ!!」


 踵を返してゴロツキたちに怒号を浴びせると焦ってバタバタと走り出す。その後ろ姿を見送ったあと、ルグラトスは肩越しにティオたちを睨む。


「……『謙虚』と『純潔』だと? まだ子供ではないか……何故私よりも知名度があるのだ……っ!!」


 小声でぶつぶつと怒りを滲ませ、悠々と歩き去る。待てと言いたい気持ちをぐっと堪えながらデュランは何もすることの出来ない自分に不甲斐なさを感じて両膝を突く。しかし、このデュランの行動にアレンは苦言を呈す。


「……ダメです。立ってくださいデュランさん。俺たちはそんなことをしてはいけない」

「……アレン?」

「剣聖としての自覚を持ってください。俺たちは剣師たちの上に立つ資格を得た帝国の剣です。敵に屈するのは許されません。例え悔しさで足の力が抜けたとしても、気合で立ってください」


 アレンはデュランの前に立って手を差し伸べる。


「俺たちは帝国の威信をかけ、魔神ガルムと戦ったんです。誇りに思いましょう」


 デュランはその言葉に自分は何と愚かだったのかと悟る。そして精神統一のためにしばらく目を閉じ、アレンに手を引っ込める様に手をかざした。察したアレンはデュランに頭を下げて一歩引く。同時に立ち上がったデュランの目にもう迷いはなかった。


「私としたことが、感情に任せて我を見失っていた。すまないアレン。すまないティオ殿、リディア殿。ようやく追いついた」


 その顔は晴々として、不安を感じさせない。安心感をようやく得て、最初の任務へと戻る。

 結果として、どうしても風の魔導師《マスター・オブ・ウィンド》には会えず仕舞いだったが、ルグラトスの部下たちが放った『ゲムロン』という名前を手にすることが出来た。


 魔導帝の敗北の裏で行われていたドラッグの売買から、何か良からぬことが起ころうとしている空気を感じ取り、4人はアセリアの役宅へと引き上げることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。