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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
20章 魔導大国 編①

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486、魔導の最高峰

 フェーデラントの仕掛けたカウンタートラップ。

 相手の虚を突く防御する余地のない攻撃だったはずだが、彼女にはまるで関係のないことらしい。


 マイラを覆う赤い膜は彼女の腕に吸収されるように消失する。


(あれは体液操作による防御だったか……。体内に駆け巡る血を皮膚から体外に放出できるなら魔法を使用するよりも早く全身を守ることが出来る。私の魔法の粒を射程外に押し除けつつ強力な血液のバリアーを形成すれば掠り傷一つ負わない寸法か……)


 だがこの時、フェーデラントの目に映った光景がヒントとなり打開策を見出す。


(強大な魔力に加え、かなり強力な能力。だが、体内の血液に依存しているならば……)


 次の行動は早かった。

 フェーデラントは即座に攻撃魔法を無数に放つ。


「──灰燼・焔渦《ヘルフレイム・ハリケーン》っ!」


 どこからともなく炎の渦が発生し、マイラを包み込む。


「──荒嵐竜・雷旋爪《ストーム・ライトニングクロー》っ!!」


 槍を掲げると先端から凄まじい電撃が走り、竜を象(かたど)った稲妻が炎の渦を貫く。雷の爪でマイラの体を裂き、地獄の炎がその血を蒸発させる。そう考えていたが、炎の渦を真っ赤な爪が切り裂き、何事もなくマイラが現れた時に通用しなかったことを悟る。無論、想定内だ。


「──闇霧・旋穿氷柱《ダークネス・アイスピラー》っ!!」


 視界を覆う黒い霧。頭から足先に至るすべての箇所、すべての方向から鋭利な氷柱が発射される。だが当然のように防壁を張って無傷。これもまた想定内だ。四賢冠(リゾーマタ)もこのレベルの魔法攻撃は仕掛けているだろう。もちろん四賢冠(リゾーマタ)の魔法よりも威力は高い。


「──属性融合《エレメンタルフュージョン》っ」


 弾丸のように回転しながら亜光速で迫る氷柱に様々な属性を付与していく。あらゆる角度からあらゆる属性攻撃を繰り出す。マイラはその度に血液を操り、フェーデラントの攻撃を弾いて行く。段々面倒になってきたのか、血の膜を張って楽をし始める。


「ふっ……それを待っていたぞ」


 フェーデラントの言葉に呼応するように視界を遮っていた黒い霧がマイラを血の膜ごと包み込む。


「──奈落・圧砕旋球(ブラックホール)っ」


 山ほどの質量ですらビー玉サイズまで圧縮可能な重力がマイラに襲い掛かる。しかし血の膜を包んだ時と変わらない大きさのまま、黒い球体はプルプルと震えるばかりで一向に縮む気配がない。


「こんなもんかよ? 王様つっても大したことねぇなぁ」


 ──ギィンッ


 黒い球体の中から鋭い針が無数に生え、奈落・圧砕旋球(ブラックホール)を破壊した。完璧に決まったはずの攻撃がまさか破壊されるとは思っていなかった。

 この事態に業を煮やしたフェーデラントは霧散する魔力を火薬がわりに破裂させ、巨大な爆発を引き起こす。今までの魔法攻撃に比べれば不格好な魔法攻撃。黒煙が晴れるとそこには血をわざと液体化させ、見せつけるよにドクドクと滝のように流しているマイラがいた。『これで満足か?』とでも言うように。


(この女の血は底なしかっ?)


 フェーデラントも流石に悟る。この女はこちらの意図に気付いていると。血を失わせることが体力を削ることに繋がるのではないかという思い付きを。その全てを嘲笑ってやろうとする底意地の悪さを。


(恐らく魔力で血液を生み出している。魔力が底をついた時、初めて命に直結する血液が消費されるのだろう。だが奴の体から漏れ出る魔力はこの魔導帝をもって計り知れん。……修正が必要だな)


 いつまでも続くように感じられた戦いに終止符を打つべく、フェーデラントは槍をくるっとひと回しして穂先で足もとの中空を突く。その瞬間、フェーデラントの足のすぐ下に魔法陣が複雑怪奇な模様を描きながら出現し、凄まじい速度で広がっていく。限度いっぱいまで広がった巨大な魔法陣は白金に光り輝きながら常に違う形を描き続け、まるで生き物のように蠢いている。


「おいおい。今度は何をしようってんだ?」


 マイラは尖った指先をペロリと舐めつつ様子を伺う。その様にフェーデラントは訝しい目を向けた。


「……何のつもりだ異世界の魔女よ。さっきから為すがままではないか。貴様自分からは仕掛けられないのか?」

「あ? 俺のことをテクなしって言ったか? だとしたら訂正しろよ。俺がわざわざお前らのテクを見てやってんじゃねぇか。俺がいきなり手を出しちまったらお前らなんて一瞬で逝っちまうからなぁ。手加減だよ手加減」

「ふっ……自信に満ち溢れているな。自分が負けるわけが無いと高を括っている。魔導の最高峰であるこの私を前にして尚その余裕。……不快だ」


 フェーデラントは槍の先端で魔法陣を突く。それが魔法発動の合図となったのか、目を潰すほどに眩く光り始め、そのまま空間を覆う。視界が晴れた時、目の前に現れたのは空間を覆い尽くすほどの歯車。大きい物から小さな物まで様々で、ゆっくりと回る物から早く回る物があり、まるで巨大な時計の中に閉じ込められたかのようだ。閉じ込められたのはマイラとヴィシャナ、リジュールとグラシャラボラスの4名。


「ただ踏み潰してしまおうと考えていた。だがやめだ。この私を舐めたことを後悔させてやろう」


 フェーデラントは魔女たちを相手に槍を掲げて不敵な笑みを浮かべてみせた。


*


 フェーデラントが敵を支配空間に取り込んだところでジェダが目を覚ます。

 ルタとサルモン、そしてダルクフの回復魔法の効果は絶大であり、瀕死の重傷だったジェダをほぼ完全に回復させた。自身最大の奥義で限界まで戦い、傷を負った際少しでも命を繋ぐために無意識の内に使用していた魔力は戻ってこないのでこれ以上の戦いは困難だが、何不自由なく動くことは可能となった。

 意識が戻ったジェダは目の前に広がる光景に夢中になり、3人に目もくれることなく一言口にする。


「……あれはまさか……陛下の……」


 ジェダの呟きにダルクフが答える。


「そうさ。陛下の支配空間。ごめんねぇジェダ君、もっと早く回復させて上げれたら良かったんだけど……」

「ちょっとっ! どういう意味よっ!」


 即座にルタがツッコミを入れる。サルモンはルタの激情を押さえるために「まぁまぁ」と宥める。


「儂が思うに、もう少し早く陛下が参戦していただけたら事態も大きく変わっていたと思うのじゃが……最終的には良きところに収まったと見て良かろう」


 サルモンもジェダの視線を追うようにフェーデラントの発動させたドーム型の支配空間に目を向ける。


「どのような工程を踏もうとも結果は同じ。後は陛下の勝利を待つばかりよ」


 不安に駆られていた気持ちが軽くなっていく。

 普段扱いが難しいフェーデラント。彼が味方で本当に良かったと心から思える瞬間だった。


*


 この光景は魔導大国各地で観測されていた。魔導帝の本気を見て戦々恐々とする者、興味津々に事の成り行きを見守る者、敵に着目する者や、目の上のたん瘤である四賢冠(リゾーマタ)や魔導帝が戦っている今を好機と捉えてこっそり動き出すものなど様々。

 その中でアリーシャとアセリアは館の屋上から戦いを見守っていた。


「何てこと……あの陛下が支配空間を展開するなんて……」

「──ええ。嗾(けしか)けて正解でしたね。相手を見縊(みくび)ることなく本気を出して下さるなんて……」


 アリーシャはニコリと微笑んでいる。アセリアは眉を顰め、肩を落とす。


「……まったくね」


 アセリアの胸中は複雑である。いっそ負けてしまえと思う心に蓋をしてアリーシャを見る。


「それで? 陛下の使う支配空間のことは知っているの?」

「──いいえ」

「そりゃそうか。陛下と事を構えることなんてないもん。知る由も無いよね」

「──ええ、そうですね。しかし、支配空間とは使用者の世界、使用者が定めた規則(ルール)を押し付ける魔法の極致。……陛下の思いのままに敵を薙ぐことでしょう」


 アリーシャの見立ては魔導帝を知る全ての者たちの見解だ。彼が本気を出せば、大国を亡ぼすだけの破壊を期待出来る。

 アノルテラブル大陸でもっとも有名な『剣神』ティリオン=アーチボルトも生前は戦いを避けたという逸話を持つ『魔導帝』フェーデラント=エディドヤ=リースハイン。魔導の最高峰たる支配空間を展開し、単独で魔女と対峙する。

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