477、敵の敵は味方
レッドたちは小国家連合と力を合わせて機界大国の侵攻を防ぎ、戦争に勝利した。
平和協定を結ばせる名目で機界大国に乗り込むため、浮遊要塞を駆り入国を果たす。
そんな浮遊要塞を雲の上から眺める人影があった。
彼らは背中から羽を生やした天使と呼ばれる存在。スロウ=オルベリウスを手に入れるためにレッドたちの動向を監視している。
「いつまでこうしているつもりだ? 監視しているだけでは永遠に彼女は我らの元に来ないのだぞ?」
天使トレスは天使ウノに苦言を呈す。
「そう思うのであればご自分でどうにかする方法を考えてみてはいかがかな? 僕にばかり聞かないでくれよ」
呆れたようなため息交じりの返答にトレスはムッとした顔で詰め寄る。
「私の意見を散々突っぱねておいてそれは無いだろ。……であれば、まずは現状を天位の方々に報告し……」
「あ〜もうっ! そういうのがダメなんだって気づけないかな? 僕が君の意見を突っぱねるのは、無能であることを喧伝する君の無知そのものから来ているんだよっ!」
ウノは苛立っているのか、ヒステリックに叫ぶ。トレスは勢いに気圧されて眉を顰めつつ押し黙る。
「ウノの言いたいことは理解出来るよ。けど、トレスの懸念も考慮に入れてもらえるとありがたいかな。我々に時間の概念があるわけでは無いけど、このままだと確実にスロウ様はデザイアの手に堕ちる。レッド以上に難しくなることを思えば、援軍は必要では無いかと思うがね」
天使デュースが口を挟み、ウノも黙った。
デザイアは魔神を力でねじ伏せ、無理やり従わせる存在。神をも超えた化物。もしスロウがデザイアの手中に収まれば、それこそ天位に出張って来てもらう他に道はない。
「……やはりオーギュスト様に手助けしてもらうしかなかろう」
「無理に決まってる。あんまりしつこいと消されかねないし……僕が今一度レッドに接触して説得するとか……」
「無駄だね。トレスの失敗があるから我らのことを敵認定している。とはいえ、上に頼るのは論外。かくなる上は、新たな助っ人に頼る他ないでしょ」
ウノとトレスはデュースを見る。いったい誰に頼もうというのか見当もつかない。
「まだ接触していない強者。魔導大国に降り立った魔神に会ってみるってのはどうかな?」
デュースの指の先。その方角には『魔導大国アイズ・オブ・トゥルース』がある。
「気は確かかい? 本来僕らの側であるオーギュスト様がかの大災厄デザイアを立てているんだよ? なら、他の魔神なんて心酔しているのが当たり前。デザイアの意に背くようなことを提案すれば最悪攻撃を仕掛けてくる。敵を増やすだけじゃないか」
ウノの発言にデュースは鼻で笑う。
「馬鹿正直にこちらの情報を伝える必要はないね。必要なのは何を伝えて何を伝えないかだよ」
トレスはデュースの発言に険しい表情を向ける。
「騙すのか?」
「ふっ、今更何? 誘拐に色仕掛けにオーギュスト様に助力の懇願。この教訓を踏まえて、我々だけでは不十分ということが身に染みて分かっただろう? ……手段を気にしている段階はとうに過ぎたよ。様子を伺う時もね」
既に何度となく汚い行為は繰り返し、それでもスロウを確保できない現実がある以上、魔神を騙してレッドたちと戦わせている隙にスロウを奪還するのは理に適っている。魔神を丸め込める前提の話になるが、もし仲間意識を芽生えさせることが可能なら、背中を気にすることなく悠々とスロウを連れていける。
現在レッドたちが機界大国に乗り込んでいることを思えば、魔導大国に回り込んで待ち伏せという形を取れることも魅力的である。
「……そうだね。どうせこのまま手を拱いていても仕方がなかったところさ。その提案、乗ってみようじゃないか」
3人の天使は一か八かの策を信じ、魔神との接触のために魔導大国へと向かった。




