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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
19章 機界大国 編①

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458/510

458、闇の交渉人

 ──同時刻。

 赤い水晶が剣山のように無数に突き出た浮遊要塞は魔導大国の領空を侵犯した。


「こちら魔導機関ケレブルム。応答されたし。……こちら魔導機関ケレブルム。応答されたし」


 通信兵はしばらく耳当てを押し付けて小さな音も見逃さないように応答を待ったが、反応がないことを悟って機関長に首を振る。魔導機関長プライム=パクストンは下唇を噛みながら必死に状況の整理をする。


「……ダメだな」


 機関長はケレブルムの戦力で撃墜可能かを判断し、即座に断念。魔導大国のある意味頂点である四賢冠(リゾーマタ)直通の通信機を手に取る。


「こちらケレブルム機関長プライム。浮島の侵入を確認。指示を仰ぐ」


 プライムの通信後、すぐに返信があった。


『──我々が出る。合図を待て』


 プライムは鼻で笑い、通信機を起動する。


「……了解しました」


 通信を切ると振り返って部下たちを見回す。


「喜べお前ら。御大(おんたい)が先頭を切ってくれるぞ。またとない機会だ。しっかりと記録を取れよ」

「了解……あの、機関長。我々は手出し無用ということでしょうか?」

「いや、機を見て攻撃の合図があるだろう。用意だけはしておけ。後で攻撃が遅れたと文句を言われても面倒だからな」

「了解しました」


 魔導機関ケレブルムは四賢冠(リゾーマタ)の指示の元、合図があるまでは待機となる。


*


「……ね、ねぇマイラ。こ、答えなくても良いの?」


 真っ黒なドレスをはためかせながら不安そうな顔でリジュールはマイラを見る。


「はぁ? 必要ねぇだろ。俺たちの邪魔すんなら殺すだけだ」

「おい。目的は支配だ。デザイア様に献上するためのな」


 ヴィシャナの言葉にマイラは肩を竦める。


「わーかってるよ。でも攻撃を仕掛けられたら、反撃しない手はねぇよな?」


 マイラはスッと立ち上がって首をコキリと鳴らす。目の前には空を飛ぶ4人の影が見えた。


「……まずは対話から。リジュ」


 ヴィシャナはリジュールを見て顎をしゃくる。リジュールは何度かヴィシャナと飛んでくる4人の影を交互に見た後「え? リジュが?」と慌てふためく。


「あんたじゃない。例の執事を出しなって言ってんの」


 リジュールはようやく気付いたように頷く。そのままおもむろに手をかざし、中空に闇の如き黒い何かを集め出したかと思うと、いきなり古びた本が出現する。赤錆びたような色合いで皮をつなぎ合わせたような気味の悪い本。特にこれと言ったタイトルも書かれていないので、何が書かれているのかは分からないが、見たままの姿で想像するなら呪いの本だと認識するだろう。

 常人なら触れたくもならない気持ちの悪い本を何でもなく手に取り、パッと中間付近で開く。指の感触だけで開きたいページを開けるほどに使用している証拠である。


「──リジュール=メイスンの名において命ずる。我が元に来れ。いでよ『黒翼の暗殺者(グラシャラボラス)』っ」


 ──パァッ


 リジュールの目の前に魔法陣が出現し、光を放つ。そこから黒く怪しく、そして禍々しい羽根がパッと舞い散る。ゆっくりと顔を覗かせるように出現する人型の何かは黒い翼を携えてエデンズガーデンに顕現した。

 浅黒い体に犬の頭、黒い翼が一戸建ての住宅を覆いつくすほど大きい。細身ではあるがしっかりと筋肉を備え、手にはジャマダハルと呼ばれる鋭い刀剣を装備している。手足が長く獣のように毛で覆われていて、手は人間のようだが足は犬の後ろ脚のように膝のすぐ下に足首があってつま先立ちの要領で立っている。二足歩行をするには不便そうな足の形をしていて、そのシルエットは奇怪そのもの。口は鼻先と顎を布で結んで開かないようにしている。尻尾も大きく長い。

 まるでハイイロオオカミを無理やり2m前後まで引き延ばし、人間のように二足歩行に立たせ、前足を人間の手と取り換えて羽が生えたような合体生物。


 殺意を具現化した存在、黒翼の暗殺者(グラシャラボラス)がリジュールの呼びかけに応じて顕現した。

 グラシャラボラスはぐるっと風景を観察し、最後にリジュールの顔を見た。


『チッ……お呼びでございますかリジュール様』


 舌打ちをしながらも、低姿勢でリジュールに平伏する。


「い、今舌打ちした? グラったら態度が悪いなぁ……」

『いえいえ、とんでもございません。リジュール様に対して舌打ちなどと……きっとわたくしが口を開いた拍子に出た音ですよ。リップノイズという奴です』


 グラシャラボラスは顔を上げて口を指す。その口には布が巻かれていて口を開くことは出来ない。今もテレパシーのようなもので会話している。わざわざ口の端を上げてまで舌打ちしたのが真相だが、リジュールはあえてスルーする。


「ま、まぁいいや。それよりもグラ、あの4人と会話してきて。今の状況を要約するとこんな感じ」


 リジュールはグラシャラボラスの頭に指を差す。すると口で説明するよりも鮮明な状況がリジュールの記憶を通して流れ込んでくる。その瞬間にグラシャラボラスの顔は歪み、嫌そうな顔でジロッとマイラやヴィシャナを見た。


『……つまり交渉人にわたくしを呼び出したと。そうやってほいほい呼ばれてはこちらも困るのですがね……』

「い、いいじゃん。暇でしょ?」

『わたくしは悪魔ですよ? 何の代償もなしに呼びつけた上に見返りもなしでは来る甲斐というものがありません』

「リジュの魔力をあげてるじゃん。欲張りさんだなぁ……」

『それは呼び出した者が負う責務ですよ。普通は呼び出すのに100人の魂とか、生贄が必要とかあるでしょ?』


 いつになく駄々を捏ねるグラシャラボラスにマイラがキレる。


「ったく、ごちゃごちゃとうるせぇなぁっ。とっとと行けって。それがお前の仕事だ」


 この言い様にはグラシャラボラスもムッときたが、リジュールに早く行くように促されて仕方なく4人の元へと飛んでいく。

 相手はこの魔導大国を仕切る四賢冠(リゾーマタ)であることを知らないグラシャラボラスだったが、マイラのように喧嘩腰ではなく交渉人として話始めることにした。


『どうも。ご機嫌はいかがかな? 人間の諸君』

「ご機嫌ねぇ……。君たちのおかげでそんなに良くないなぁ。許可なく立ち入ることは犯罪だよぉ? 申し訳ないんだけど、どういった用事で来たのかな? まずはそこから聞かせてくれるとありがたいんだけど……」


 水賢師ダルクフは敵意のなさそうな優しい口調で尋ねる。


『それは気になるでしょうなぁ。まさにそれが本題であり、確信ですからね。……答える前に一つ、あなた方はこの広大な国の何なのでしょうか?』

「……国の舵取りを担う『長(おさ)』のようなものだ」


 その問いには火賢師ジェダが答える。


『なるほど、それは好都合。実はわたくし、彼女たちの代わりにあなた方との交渉事を承りまして……丁度、上の方とお話がしたかったところです。わたくしたちの用事はこの国への侵略と統治。この国を抵抗もせず、明け渡していただければ至上の喜びです』

「ふむ、やはり支配が目的か」


 地賢師サルモンの言葉に『はい』と一言返答する。すぐさま風賢師ルタが噛みつく。


「そんなことはさせないっ」

『そう熱くならないでいただきたいですね。あなた方に勝ち目はありません。こちらも無闇矢鱈に傷つけたくありませんし、わたくしたちの支配を二つ返事で受け入れていただければ血は流れません。いかがです? 良い交渉だとは思いませんか?』

「ふんっ! そんなあなたにこの言葉を送るわ。ふ・ざ・け・る・なってねっ!」


 凄まじい力を持つ4人がルタの言葉を合図に一斉に力を出す。四賢冠(リゾーマタ)とは『魔導帝』を除く魔法使いの頂点。究極の力を持つ4人の英雄が今、その力を発揮しようとしていた。


『やれやれ……俺様が下手に出ていれば調子に乗りおって。そこまで強情であるのなら、少々分からせてやらねばなるまい。自身の選択の愚かさを知り、這いつくばって闇に媚びよ』


 グラシャラボラスはバッと翼を大きく広げて威嚇する。


『──侵略せしは深い闇。世界を覆い尽くす暗黒の衝動をその身に刻むが良い』

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