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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
18章 龍球王国 後編

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435、新たな一歩

 グルガンが到着してからは怒涛の展開だった。レッドが事情を話すとグルガンは即時対応して見せる。聖王国圏内を飛び回り、ローディウスと話を付けた。


 ハヌマーンが去った今、国王と呼べるものがいなくなったこともあり、聖王国の属国として使者が派遣されることになる。お抱えの司教(ビショップ)司祭(ハイプリースト)ではジャガラーム王国国民の反発を生む可能性を考慮し、宗教による弾圧に異を唱える諸教派のエイブラハム=アースノルド卿が選出され、当面の間ジャガラームの指揮を執ることになった。

 

 最初はハワード=ガストン卿がジャガラームへの派遣を願い出たが、力を蓄えようとする動きであることを見抜かれ、エイブラハムにローディウス教皇自らお願いした経緯がある。


「ミノタウロスをさらに100体ほど生み出すことは可能だろうか?」


 エイブラハムの注文にオディウムは反発したが、元よりオディウムに拒否権は存在しないので言われた通りポコポコ生み出す他なく、ジャガラームの防衛はミノタウロスと諸教派の衛士たちで行うこととなった。


 エルフたちの侵攻を止める防波堤として機能するジャガラーム王国。上手くいくならすぐにも援軍を送る用意があるとローディウスは言う。毎日欠かさず決まった時刻に連絡を行い、エルフたちの動向を見極めて行くことで決着する。

 ガブリエル元教皇の時とは打って変わって状況判断も配置する人員も最適なのは、宗教の垣根を超えた人の繋がりを大事にする政策が上手く機能しているおかげだ。

 あれがあったら、これがあればなどと贅沢は言ってられない。今持っている手札で何とかしなければならないのだ。


 エルフの侵攻を機に、ルオドスタ帝国も動き出す。

 第一剣聖アシュロフ=ミニッツ=べスターを隊長としたエルフ殲滅部隊を組織し、『五神隊(ゴスペル)』の3人を士官とするエルフ軍と衝突。剣師からも何人か犠牲は出たが、撃退に成功する。エルフたちは撤退し、ルオドスタ帝国はエルフ軍の侵攻を防ぎ切った。

 この報告はジオドール皇帝がローディウス教皇に直接通信を送って知らせたもので、国のトップ同士で通信会談が急遽行われていた。


 共通の敵の出現がいがみ合っていた他国同士をつなぐ架け橋になったこともあるが、やはりここでもローディウスが教皇になったことが効いてくる。ガブリエル元教皇をジオドール皇帝が個人的に嫌っているだけだが、もしここでまだガブリエルがトップだったら連絡を送ることは無かったと思われる。


「デザイアという大魔王の侵略行為が人間同士の結束を深めることになるとは皮肉なものだ」


 エイブラハムは腕を組んで唸る。魔神だけでなくエルフの戦争行為も相まって連合国が立ち上がろうとしている。その一番槍を担うのはレッドたちだ。


「……さて、後のことは私に任せて君たちは龍球王国に戻るといい。アリーシャによろしく伝えてくれ」


 短い会話を済ませ、レッドたちは龍球王国へと戻る。

 レッドは早速ニシキたちの元へと向かい、ジャガラームで手に入れた財宝の半分を災害支援金として寄付する。

 本当は全部寄付するつもりだったが、流石に多すぎるのではないかとシルニカたちに諭され、半分という話で落ち着いた。それでもジャガラームが国を興すきかっかけとなった財宝がはした金に見えてしまうレベルの寄付はニシキたちの度肝を抜く。


「……りゅ、龍球王国を買い取るつもりですか?」


 シズクの表情と言葉でレッドもこれがとんでもないことなのだと気付く。『忘れられた大陸』でいじけていた時に心の支えとなった薬草採取がフラッシュバックした。あの街『プリナード』を出て行く前に貯め込んだ薬草を道具屋に売りに行き、『破産させる気か!』とブチギレられた時まで鮮明に。

 何でも多ければいいというものではないのだと改めて痛感した。



 レッドの寄付騒動があってしばし戦々恐々としていた龍球王国の上層部にもようやく落ち着きが戻って来た。


「ふふふふふっ。いやぁ~っ、居る者ですなぁ。奇特な金持ちというのは……」


 お茶を啜りながら寛ぐのはテルヒサ=ダングリ、もといテルヒサ=テンクウ。

 今回の禍津神騒動でキジン派閥の反乱に気付き、破壊活動が行われる前に国民の避難が出来たという功績を讃えて、天征十一将に格上げとなった元ダングリ家当主であり現テンクウ家当主。

 テンクウの元締めとなったことで隠密部隊『走狗』を解体。元の『猟犬』部隊として再編成し、ハンゾウたちの主人となった。

 そんなテルヒサに同調する男性が興奮気味にふんふんと何度も頷く。


「まさに大英雄と呼べる方ですっ。生きている内にあの様な方に出会えるとは思いもよりませんでしたっ」


 彼の名はウネメ=テンコウ。ムネヤス=テンコウの嫡男。

 若く鼻筋が通っていて、スラッとした長身の男性。猫の毛の様にサラサラふわふわな髪質で童顔。ムネヤスが初老の頃に遺産目当てで近寄ってきた女を興味本位で抱いて作った子供であり、女が産んだ後は関心もなくムネヤスの持つ別荘に放り込まれて育てられた。

 『あのムネヤスの子を手に入れたっ』と自慢げに話していた母は、ウネメが3歳の時に海外に売り飛ばされてしまったので母の記憶はほとんどないという残酷な過去を持っている。

 ムネヤスの死後、唯一の子供ということでウネメがテンコウ家を継ぐ運びとなった。

 剣術流派は父親と奇しくも同じ『天降捻流(てんこうねんりゅう)』の使い手。ただしムネヤスとは違い勤勉だったウネメは免状の腕前である。


「……父が迷惑をかけてしまったので家財を持ち出してでも国のために尽くすつもりでいましたが、レッド様のご好意でシズク様から断られてしまいました。今後のために取っておきなさいと。……複雑な心境です」

「その気持ちは大事になさるが良いですよ〜っウネメ殿〜っ。そのお優しい気持ちでテンコウ家をより盛り上げて行きましょうねぇ〜」

「はいっ。上に立つ器になれる様努力いたしますので、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますっ」


 ムネヤスのような冷血漢と違って朗らかな青年といった印象を受ける。あのムネヤスの子なので油断は出来ないと裏取りを行ったが、外面だけでなく周りからの信頼が厚く評価も高い。探りを入れていたコジュウロウのお墨付きもあり、文句なくテンコウ家の跡取りとして当主に据えられている。


「……どうだか。後で便宜を図れと言ってくるに決まっている」


 クオン=シシゴウ。別名義でクオン=トウダ。トガノジョウの跡をキキョウ=タイインの部下が担うことになり、その席にクオンが座ることになった。

 最初こそ『トガノジョウと同じ姓は嫌だ』とゴネていたが、旧姓を持つことを許されたため、トウダ家を仕切るシシゴウ家の図式となった。当然元シシゴウ家の領地は手放さなければならないが、タイイン家が領地を預かるので実質2つ持っているのと同じ状態となった。


「クオン。確かにそれも考えられなくはないですが、もう少し空気をお読みなさい。皆様の敵意を買ったところで何の得にもなりません」

「キ、キキョウ様っ! も、申し訳ございませんっ!」

「謝るほどのことではありませんよ? それにあなたはもう私と同じ天征十一将の身。発言に自信と責任を持てるのであれば、私に臆することはございません」

「ははぁっ!!」


 クオンは手を突いて頭を下げる。まだまだ上に立ったという自覚が足りない様だ。


「私語はそこまででお願いしますね。さぁ、龍球を立て直して行きましょう。まずは新たに加わった方々を交えた第一回、天征十一将の会合を開きます」


 シズクは張り切って司会進行に努める。今後の展望を見据えた会合は、戦後すぐの鬱屈とした空気を取っ払い、明るく和やかな雰囲気を漂わせる。


 龍球は汚れた部分を削ぎ落とし、ついに新たな一歩を踏み出した。


 ただ良いことばかりでは決してない。

 世界はこれから知ることになる。次なる魔神の襲来を──。

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