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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
18章 龍球王国 後編

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433、脱却と解放

 ジャガラームを占拠したエルフたちを指揮するギルノールの前に現れた男、レッド=カーマイン。魔神オディウムを引き連れ、ピラミッド侵入前にハヌマーンへの挨拶に宮殿を訪れたのだが、エルフ侵攻の犠牲者となってしまったのかハヌマーンは不在。宮殿に訪れただけ無駄となってしまった。


「な? だから言ったろ。そもそもモラクスがピラミッドの管理者なんだから、人間に聞きに行く必要なんざないんだよ」

「でも外じゃジャガラームの土地にあるし、ハヌマーンさんは自分の所有物みたいに主張してたんだよ。そういう人を蔑ろにすると後が怖いからさ」

「何が怖いんだよ? 逆らうってんならぶっ飛ばせばいいだろ。こいつみたいに」


 そう言ってルードウッドを指さす。ギルノールはチラッとルードウッドを見て心臓を跳ねさせた。


「も……もしかして貴様ら……ルードウッドを殺したのか?」

「殺していませんよ。……多分」


 ギルノールは「おいっ」と部下に呼び掛ける。しかし、部下は全く聞こえていないのか、へたり込んだまま放心している。1度の呼び出しでは放心状態が解かれず、3度目の呼びかけでようやく反応する。振り向いた部下に顎をしゃくってルードウッドの状態の確認を急がせ、生きていることを証明させた。


「縛られているわけじゃなしに、生きている確認くらい自分で出来なかったのか? 人を顎で使って情けねぇ野郎だぜ」

「仲間の生死を確認中に襲われでもしたら厄介だからな。それに部下は私を助けるためのみに存在することを許されている。貴様如き魔族にエルフの在り方をとやかく言われる筋合いはないっ」

「なに? この俺様に逆らおうってか?」


 オディウムが一歩前に出て牽制するが、ギルノールは身を翻してレッドに向かう。見た目から強そうなオディウムには(はな)から勝てないと悟り、まずはレッドを倒そうと部屋に侵入された段階で決めていた。

 魔族殺しのルードウッドは初手でオディウムに掛かっていっただろうがギルノールは違う。絶対勝てそうな奴を叩く。実際、誰の目から見てもレッドの装備はみすぼらしく、誰の目から見ても弱そうに見えるただの人間。


 ギルノールの持つ魔剣は『原初魔法剣(ルーンソード)』と呼ばれるゼロニアスから直々に与えられた希少な剣。かつて神が常用していた魔法『原初魔法(ルーン)』が付与されていて、その効果は『魔法』を斬ることが出来るというもの。それ以外の効果は確認されていないが、魔障壁や結界も斬ってしまうので、かなり破格の性能と言える。

 さらに反撃を防ぐための盾『原初魔法盾(ルーンシールド)』は魔法を反射する効果だが、盾その物が硬いので、近接戦闘同士でも通常通り使用可能。

 他にも防具やマントなど、固めた装備はどれも一級品。レッド如きが張り合うことなど出来ない国家予算レベルの装備たちなのだ。


 ──ブンッ


 鋭い太刀筋。ルオドスタ帝国で言えば剣師1級上位の腕前。剣聖にはわずかに届かなくとも、エルフ族の中では最強と言える近接戦闘能力を保有している。

 しかしレッドには攻撃が当たらない。スイッと剣があらぬ方向に空振る。

 おかしい。返す剣で切りつけようと腕を振る。途中までレッドに向かって剣が走るが通り抜けるように外れる。レッドはいつの間にか剣を抜き、ギルノールの剣に合わせてわずかに軌道を逸らしていた。何なら振る速度をわずかに加速させてバランスを崩している。


(こいつっ?! 私の剣を往なしているっ!?)


 その事実に気付いた時、ギルノールの中でレッドの評価が爆上がりする。ギルノールを軽くあしらえる強さは(すなわ)ち剣聖の中でも最強クラスか剣神の領域。勝ち目は皆無。

 ギルノールは失念していたことをここで知る。ただのみすぼらしい剣士が凶悪な魔族と普通に会話出来るはずがない。行動を共に出来るはずがない。今目の前にある状況全てに答えがあったことを。


 この男には勝てない。そう気付いた瞬間に手は止まっていた。


「……わ、私を追いつめてどうするつもりだ?」


 被害者意識丸出しの言い様にレッドは首を傾げたが、オディウムは上から目線で答える。


「そうだなぁ。とりあえずはこの国から出てってもらうとするか。お前たちみたいなウジ虫どもにウロチョロされたら迷惑だ」


 キッとオディウムを睨み付けるが言葉は出ない。


「あ、それから国民を解放してもらうよ。みんなにも生活があるんだからさ」

「まさか逆らうつもりはねぇよな? とんがり耳」


 言いたい放題言われて屈辱を感じるギルノールだが、今は勝ち目がないと悟り、素直に行動を開始する。部下にルードウッドを運ぶ様に指示すると自分だけさっさと部屋を後にする。レッドは廊下に出たギルノールを追う様について行き、「国民は開放するんですよね?」と念押しに尋ねる。


「……図に乗るなよヒューマン。今我々を退けたとて、第二第三の勢力がこの国を襲う。甚振(いたぶ)るために捕まえた国民も今度こそ皆殺しだ。覚えておけっ」

「はい、了解しました。……それで?」

「解放はするっ!!」


 ──ガンッ


 壁にヒビが入るほど思い切り殴りつけ、ギルノールはイライラしながら宮殿を後にした。



 すごすごと帰って行くエルフたちの背中を見送りながら、解放された国民たちは歓喜の雄叫びをあげる。

 エルフ襲来で頼みの軍もハヌマーンが自分を守るために連れて行き、残ったのは太った商人やストリップバーの踊り子、ろくに食べ物にありつけない物乞いや麻薬中毒者くらいで、体力はおろか戦う武器もなく、エルフたちのおもちゃになりざるを得なかった。

 誰からの助けも期待出来ず、往生していたところにやってきたレッドとオディウムはまさに救世主だった。


 次々と感謝の声が聞こえ、いい気分になっていた2人の耳にボソッとネガティブな声が聞こえてくる。


「解放されたのは良かったけど、なんでエルフを帰しちまうんだよ。皆殺しにしちまえばもう恐れずに済むのに……」


 エルフに対する怒りも含まれているが、確かに殺してしまえばここを占領していた人数分まるまる居なくなるので今後も戦争を継続するなら有利に働くだろう。ここでオディウムは両手を上げて静かにする様にジェスチャーを入れた。静まりかえったみんなの前で、コホンと一つ咳払いをする。


「お前らの言いたいことは分かるぜ? だがよぉ、エルフの連中から聞いた限りじゃ、お前らの王様は兵隊みんな連れて逃げ出しちまったんだってなぁ? そんな状態でエルフ共を皆殺しにしてみろ。遺恨が残るだろうが。そうなりゃどっちかが死ぬまで戦争だ。おっと、ここで言っとくが、俺様たちはすぐにこの国を出て行く。当てにはするなよ?」


 オディウムの言葉を鵜呑みにするなら、万が一にもエルフを皆殺しにでもしていたら、ジャガラームの人間にかかわらず日にこんがり焼けた褐色の肌がエルフのターゲットとなってしまうところだった。そして、ハヌマーンという統率者と軍隊を失った国民は今すぐ荷物をまとめて国を脱出しなければならない。何故自分たちがとすすり泣く声が聞こえてくる。


「ちょっと待ってよオディウム。そんな言い方はないんじゃないか? せっかく助かったっていうのに……」

「はん? 事実だろうが。ほら、とっとと行くぞっ」

「ここでの生活を捨てられない人だっているんだぞ? あ、そうだ。オディウムって兵隊出せるよね? あのミノタウロス」


 ギクッと肩が上がる。レッドがその考えに行き着く前に去りたかったのだが、そうもいかなくなった。オディウムは出すのを拒んだが、モラクスからもらったオディウムを従順にする鎖の効果でミノタウロスを召喚させられる。国民は一様に「おおっ!」と感嘆の声を漏らした。


「後でグルガンさんが来るから、その時にもっとマシな方法を考えてもらうとして、こいつで一旦国の警備を固めよう。皆さんは俺たちがピラミッドに行っている間は国外に出ないでください。エルフたちの第二波が来ても大丈夫な様に、十分な数のミノタウロスに国の警備と安全を守らせます」


 レッドの言葉にわっと喜びの声が溢れる。渋々兵隊を出したオディウムだったが、みんなの笑顔に少しずつ絆される。


「……ったく、面倒臭ぇったらありゃしねぇよ」


 そう言いながらポコポコと生み出し続け、オディウムが出現させたミノタウロスの数はゆうに100体を超えていた。

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