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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
18章 龍球王国 後編

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419、愛オーラ

「レッドっ!」


 これからこの国の命運をかけた戦いをしようとお互いが示し合わせたところに、アキマサがやってくる。レッドは視線を切らないように「はいっ」と返事をした。アキマサはレッドの側に素早く寄って耳打ちする。


「……あいつは再生能力を持っていて普通じゃ勝てねぇ。だから取って置きの秘策を用意した」

「秘策?」

「……ああ、そうだ。と言っても、準備中にさっきの能力で気を散らされちまったから1からやり直しだ。すまないが、時間を稼いでくれ。頼むからあの空が黒くなる奴だけは使わせないでくれよ?」

「分かりましたっ」


 レッドの簡潔な受け答えにアキマサはニヤリと笑って踵を返す。


『……いまさら何をしようとも無駄なことよ……お前たちではわらわに勝てぬ……』


 アキマサはピタッと足を止めて肩越しに大禍津日神を見た。


「無駄じゃねぇよ。間違ってたら次の手を考えるだけだ。……お前が諦めるまでな」

『……ほぅ……精々足掻くがよい……万策尽きて絶望に歪むお前の顔を見てやろう……』

「面白れぇ。また後で会おうぜ禍津神……いや、大禍津日神」


 それだけ告げると体に電気を纏わせ、一瞬の内に消えてしまう。移動速度が他のものと比べても桁違いだ。


「んふっ、レッドちゃんだけにいい格好はさせらんないわね。私も少し、張り切っちゃおうかしら?」


 グレゴールは全身にピンク色のオーラを纏う。『(ラブ)オーラ』と呼ばれるこの力は、この世界で一般的に使用されている『気』や『魔力』と違う性質を持ったグレゴール特有の力。感情や想いの強さで身体能力を格段に引き上げ、逆に愛や慈しみで対象を保護し、危険から遠ざける効果を持つ。

 さらに、パンツの中から取り出した神器『愛鎚(ミョルニル)』によって相乗効果が発生し、グレゴールの戦闘能力は爆発的に向上する。


「私は男の子のほうがタイプなのだけど、愛は性別を超えるわ。博愛の精神であなたも愛してあ・げ・るっ」


 チュッと唇を窄めて投げキッスを送るが、大禍津日神に嫌な顔をされる。いつの間にかレッドの隣に居たドラグロスが嫌な顔をしながらグレゴールを見ていた。


「いや、男女だから普通じゃねぇか……」

「あらやだっ!? あの子男の子なのっ?!」

「あーもう嫌こいつっ。頼むから男であることを自覚してくれぇ……っ」


 ドラグロスは天を仰いだ。


 ──チリリーンッ


 即興コントになってしまった会話を叱責されるように澄んだ環の音が鳴り響く。


『……遊びは終わりだ……』


 ふざけていたつもりはないが、大禍津日神の言葉に身を引き締める。戦闘態勢に入ったのは大禍津日神に指摘されただけでなく、お堂の開いた扉の向こうから何かが迫ってきている気配を感じ取ったからだ。気配が大きくなっていくごとにお堂の奥から聞こえていた赤子の泣き声が大きくなっていく。


 光の下に姿を現したのは能面のような女性の頭部で体は大蛇という異形。頭部から背中にかけて垂れ下がるほど長い濡れたような毛が生え、その下に無数の目玉と裂けた口が鱗のようにびっしりと見え隠れしている。その体中に開いた口から赤子の泣き声が聞こえている様だ。手足が無く、蛇腹で動いている気色の悪い化け物。

 その胴体はお堂の中にあるが、かなり外に出てきているはずなのに尻尾が見えない。お堂は大蛇が収容されるには小さく感じるが、中は異空間のようになっていて見た目よりも奥が深いのだろう。大蛇の全長がいったいどのくらい長いのかなど想像すら出来ない。


「趣味悪ぅ……」


 博愛の精神を自称したグレゴールもドン引きの気持ち悪さに血の気が引く思いだ。


『……本来はこの姿を視認しただけで発狂し、自我を失う……お前たちには関係ないようだが関係ない……本来の力は別にある……』


 ──ゴボォッゴボォッ……


 水の中で空気を一気に吐き出した時の泡が昇ってくるような音が鳴る。音の出所はお堂から現れた大蛇。何が起こっているのか注視すると、大蛇の体がお堂の奥から順に胴体が膨らんで喉元までやって来た。膨らんだ胴体が垂れ下がった毛をかき分けて一生隠れていて欲しい目玉や歯茎が剥き出しの口を露わにする。口を閉じているために赤子の声は聞こえないが、代わりに何かを我慢するように口を一生懸命閉じているのが確認出来た。


「……何かヤベェぞ」

「……き、斬りましょうか?」

「いや、やめとけ。斬ったら今出そうになっている何かが傷口から溢れちまう。……おいオカマ、お前のそのピンクの奴であいつを包めるか?」

「全部は無理そうだけど……今見えてる部分位ならイケそうよ」

「それで十分だ」


 ドラグロスの言葉に従ってグレゴールは化け物を包むように(ラブ)オーラを使用する。ピンクのラップに包まれたような見た目の大蛇にドラグロスが拳を振りかぶった。


「ぶっ飛べぇっ!!」


 ──バォンッ


 ピンクのオーラをぶち抜く勢いで放たれた拳は空気の壁を破りながら大蛇の能面を殴りつける。ピンクのオーラに包まれ、口を封じられた化け物は、喉から出かかった何かを吐き出すことが出来ず、踏ん張ることも出来ない体は長い胴体を巻き込みながらお堂の奥へと吹き飛んでいった。


「へっ! こんなもんかよっ!」

『……力任せが過ぎる……が、甘いな……』


 お堂の奥からドドドッと木の床を這うように何かが押し寄せる。


「甘いだぁ? へっ、そいつはお前だぜ馬鹿めっ! あのバケモンが何かを吐き出したとしてもこいつを閉めちまえば……っ!」


 ドラグロスはお堂の扉を閉めに掛かる。しかし、まるでそこに存在していないかのようにドラグロスの手は空を切った。


「おぉっとぉっ?!」


 片足で崩れたバランスを何とか立て直す。


『……訂正しよう……愚かの間違いだったようだ……』


 ──ドパァッ


 お堂の奥から出て来たのは呪いの液体。それはレッドが先ほど消滅させたはずの八十禍津日神。そしてその波に乗るように大蛇の化け物が飛び出してくる。能面の顔は目に見えるほどの怒りの表情に変わり、『泥眼(でいがん)』と呼ばれる表情から『生成(なまなり)』と呼ばれる少し角が生えた能面に変わっていた。同時に赤子の泣き声がうるさく響く。


「──爪刃っ!!」


 ──ザンッ


 レッドは大蛇に斬撃を飛ばす。斬ることは出来たが、斬った先から皮膚や筋肉が手を伸ばすように繋がり合って再生する。大禍津日神の再生方法が巻き戻るように滑らかなのに対して、必死に繋げて治そうとするさまに怖気(おぞけ)が走る。

 大蛇は攻撃が加えられるごとに能面の顔が変化し、『生成(なまなり)』から『般若(はんにゃ)』、『般若』から最終段階の『真蛇(しんじゃ)』へと変化を果たした。

 能面の変化と共に体の表面にある口から赤子の泣き声の代わりに、細く長く虫のような節のある黒い腕が吐き出される。目玉は泣き喚いた後のように赤く充血し、涙の代わりに呪いの液体を流し続ける。

 呪いの液体は湖を形成するかのように広がりを見せ、波打ち、レッドたちを襲う。


「わわっ!? 不味いっ! また飲まれるっ!!」

「私に任せてっ!──愛の抱擁(ラブフュージョン)っ!!」


 グレゴールは自分とレッドにピンクのオーラを纏わせる。すると呪いの液体はピンクのオーラを避け、飲まれることは無かった。


『……その力……神聖性を持ち合わせるか……』

「そうよ。私は愛の女神だから呪いも弾くのよっ」


 グレゴールは胸を張って主張する。ドラグロスは大蛇を殴りながら声を張り上げる。


「ったく、まだ言ってんのかっ! しつけぇなお前もっ! この気持ち悪ぃバケモンと大差ねぇぜっ!!」

「ふっ……素直じゃないんだから。……レッドちゃん。このオーラを纏う限りこの液体に飲まれることは無いわ。あの子をコテンパンにしちゃうわよっ!」


 グレゴールの自信たっぷりの言葉にレッドは大きく頷いた。


「はいっ! よろしくお願いしますっ!!」

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