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店内に案内され、昼食をおのおの摂ると、洋子はこっそりとアイリスを女子トイレに誘いました。
女子トイレや給湯室は、女の人の内緒話の舞台です。
一緒に手を洗いながら、洋子はアイリスの耳元にささやきました。
「ね、あのAIの喋った”案件板”って、気にならない?」
「あかん、いちびり(ふざけること)でっか? そらまあ、芸人はんがやっちゃいけないことって、お客はんをいらう(いじる)ことでっしゃろ? 横山やすし師匠も仰ってましてん。芸人は板(舞台)に立ったら真剣勝負やって……」
「違う、違う!」
洋子は地団太を踏みました。
「”案件板”って言ったでしょ。なにわざとボケてんのよ!」
「すんまへん。うち、アメリカ育ちでしてん。日本語よう聞き取れまへんねん」
「そんなのに、妙な大阪弁は喋れるんだから……」
ぶつぶつと文句を言いながら、洋子は真剣な表情になります。
「あたし、どうしてもその”案件板”が欲しいんだ」
アイリスは目を見開き反問しました。
「洋子はん、お金に困ってはるんでっか?」
ぶんぶんと洋子は激しく首を振って否定しました。
「困ってはいないわよ。ただ、あれがあればメイドカフェを開けると思うんだ」




