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そんな太郎の気分を忖度することなく、マルは機嫌よく続けました。
「次に第二層は中層階を意味しておりまして、だいたい地上300メートルより上の階層がその中層階になっております。ここに住まわれますのは、ホワイトカラーの中産階級と、日本を防衛する崇高な任務をおびております軍人の方々でございますな。このあたりにまいりますと、街のあちらこちらに真行寺家のお人でもふさわしい施設がございますから、お勧めでげす」
時々このAIは、落語家というか幇間のような口調になります。
この幇間というのは……。
脱線しました。マルの話を続けましょう。
「そしてあっしが真行寺家のかたがたに是非ともご紹介申し上げたいのが、頂上付近の上層階でございますぞ! ここには日本全国を統治なさる政治、経済、大学関係の施設が集まってございまして、そこには目もあやな美しい施設や自然が盛りだくさんで、世界的なコンサートやスポーツ、またはイベントが年中開催されているように聞いております」
「ふうん……」
太郎は生返事でこたえました。
想像するに、美和子の目的地はそんなところではなさそうです。
太郎は質問してみました。
「伝説のコレクター、F田という人について何か知らないかい?」
「その話、興味があるわね」
スピーカーから突然、美和子の声が響き、太郎は座席で思わず飛び上がりました。
振り返ると操縦席とへだてた客室の窓越しに、美和子がこちらを向いてマイクを握りしめています。どうやら美和子がこっそり、太郎の会話を耳にしていたようでした。




