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かつて東京都と呼ばれた行政区分は、この時代大京シティと呼称が変わりました。
千葉、埼玉、神奈川の都市部が発展を続け、ついには東京都と融合してしまい、ひとつのメガストラクチャーとしてまるで大きな山塊のような形になってしまいました。巨大なビル同士が様々な回廊でつながり、その間を無数のコンポーネントが動力、上下水道、真空トンネルによる物流が交差し、市民の生活のすべてをささえています。
森を抜けた太郎の目の前に広がっているのは、きらきらと日差しに輝く無数の窓ガラスと、その間に見え隠れする林立するビル群の縦の線です。
あまりに密になっているので、どこからが建物の外側か、どこまでが区分けの外か判別は困難です。
メガストラクチャーのもっとも高い場所は、地上1000メートルを越しており、雲がひくく垂れこめるときは完全に霧の中に没して、見上げても頂上は隠れてしまうほどです。
今まで太郎が暮らしていた真行寺を取り囲む深い森に遮られ、大京シティの全貌はほとんど視界に入ってきませんでした。
それでもまだシティには遠く、蒸気車が走り続けてもほとんど近づいてはいないように感じます。
「きっとたくさんの人が住んでいるんだろうな」
太郎のつぶやきに、さっそく車のAI、マルが反応しました。
「さようですな、あっしの記憶バンクによりますと、大京シティには約1億人の人口が集まっているそうでございますな」
太郎は仰天しました。一億人とは、日本中の人口とほぼ同じくらいです。
マルは調子に乗ったのか、つぎつぎとデータを開陳し始めました。
「大京シティはほぼ三層にわかれまして、第一層はもっとも広い最下層でございまして、ここには八千万の人が暮らしております。ま、下層階級といってよく、お偉い貴族の方々には関係ございませんが」
どうもこのAIは、身分というものに敏感な性質をもっているようです。太郎は召使という職業柄、ちょっと気になりました。




