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静けさがあたりを支配しました。
空は晴れ上がり、日差しが美和子の髪の毛を金色に浮かびあげました。
バルコニーに立つ両親は、じっと美和子を見下ろしています。
いや、見下ろしているのは百合子のほうでした。
父親の大吾はすでに感極まり、噴き出す涙を隠そうともしていません。声もなく嗚咽を繰り返し、そばにいた召使の一人がかいがいしく手にしたハンケチで涙をぬぐっていました。
美和子が口を開きました。
「お父さま、お母さま、これまで美和子を大切に育ててくださいまして感謝の言葉もございません。これより美和子は花嫁にふさわしい大人になるため、世間での勉強を……」
ふいに百合子が右手をかかげ、美和子の別れの挨拶をさえぎりました。
感動的な挨拶の言葉でしたが、ちょっと美和子の口調が棒読みすぎたかもしれません。
「美和子さん。あなた、本気で花嫁修業をするつもりなのですか?」
そばに立っていた大吾が、ぽかんとした顔つきになって百合子を眺めました。
「百合子、何を言い出すんだ?」
「あなたは黙っていて!」
切り口上での百合子の返答に、大吾は肩をすくめました。
百合子はバルコニーの手すりに身を乗り出し、まじまじと美和子を見下ろしました。
「あなた、何かたくらんでいるわね?」




