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真行寺家の中庭で、ちょっとした騒ぎが持ち上がりました。
車庫から美和子一行が乗り込むことになる、蒸気車が引き出されてきたからです。
蒸気車は白鷺号という名車でした。
しゅぽっ、しゅぽっと盛大に蒸気を噴き上げ、蒸気エンジンで走る豪華な車がぬっとばかりに昼の日差しの中へ出現いたしました。
車体はまぶしいばかりの純白で、七宝焼きの真行寺のエンブレムが車体の先頭に輝いています。
その車体に金筋のラインがはしり、重厚なデザインの豪華な車体でした。
全長は10メートルを越え、車幅は1・8メートル、全高2・5メートルの巨大な六輪の車でした。
前輪は二組の四輪が前半分を占め、すべての車輪が独立に動いてこの巨体にかかわらず、最小回転半径を小さく収めています。
前部の操縦席……あえて運転席とは言いません……は、後部の客室と分離しています。コンソールパネルには蒸気圧計やボイラー温度計、燃料計、各種油圧計などがところせましと配置され、操作スイッチも一目見ただけではどれがどれやら混乱しそうなほど詰め込まれています。
運転するのは当然、筆頭執事の只野五郎です。
中庭に美和子と、同行する召使たちが集まり、興味深く蒸気車を眺めました。
「わあ、これはええお部屋やわ!」
後部の客席をのぞきこんでアイリスが歓声を上げました。
六人掛けのレザー張りの長椅子が向かい合わせに配置されています。たっぷりとした広さで、中間には小さなテーブルが引き出し式で配置できるようになっていました。
天井にはマイクが下がっていて、前部の操縦席と会話できるようになっています。
「わっちは荷物置きのほうでええですだ」
鈴木源次郎が恐縮したようにつぶやきました。
源次郎のつぶやきに、美和子、アイリス、太郎、洋子、幸次、藤村不二夫の六人は顔を見合わせました。




