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「お嬢様、それも必要なのですか?」
「当り前じゃない。お宝が見つかったら、すぐに内容を確かめないと。まだデータが破壊されていなければ、ゲーム機が起動するはずだもん!」
「だってもう、荷物はこんなに一杯……」
積み重ねられた無数の箱の前で、太郎はおろおろとしていました。美和子の所持しているゲーム機は部屋の中だけでなく、通常は衣服を保存するためのクローゼットまで積まれていて、それらを次から次へと持っていこうとしているのです。
旅の準備という心構えで太郎は美和子の着替えとか、宿泊するための様々な道具を心づもりにしていたのですが、そんなもの一切興味を示さず、彼女はともかくゲーム機と旧式なディスプレイを持っていきたがったのです。
荷造りには太郎のほかアイリスや、洋子も動員していました。なにしろ真行寺家の一人娘が旅に出るのですから、必要なもののリストはぼう大でした。
大騒ぎの中、筆頭執事の只野五郎がやってきました。
五郎を見て太郎は救われたような表情を浮かべました。
一目見て状況をつかんだ五郎は、美和子に話しかけました。
「お嬢様、そのゲーム機の山、必要ですか」
五郎に背を向けたまま、美和子は両手いっぱいにゲーム機を抱え答えました。
「当り前じゃない、何度言ったらわかるの?」
「しかしF田はゲームだけをコレクションしていたのですかな?」
「え?」
そこで美和子は、はじめて太郎ではなく五郎が話しかけていたことに気づきました。かかえていたゲーム機をそこへ置いて、美和子は振り返り五郎に切り口上でたずねました。
「何が言いたいの、五郎?」
「わたくし思いますに、F田のコレクションはゲーム全般におよんでいたと推察いたします。当然、その中にはゲーム機も含まれておりましたでしょう」
ぴしゃり、と美和子は自分の額を手でたたきました。
「そうだったわ! あたしなんて馬鹿なんだろう……」
そしていきなり笑い出しました。
「そうねえ。いいわ、このゲーム機はおいていきます」
美和子の答えを聞いて、太郎はほっとしたように肩を落としました。
その場にいたアイリスと洋子も顔を合わせて「やれやれ」と言いたそうに首を振りました。




