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「どうですの? まずはお会いになって、お話とかなされば……」
なおも話を続けようとする百合子を、美和子は話の接ぎ穂でさえぎりました。
「お母さま。その前にすることがございます」
「すること?」
美和子は背筋をのばし、まっすぐ百合子の目を見つめています。
「結婚をする、しないにかかわらず、わたくし花嫁修業をしたいと存じます」
「花嫁修業……」
百合子は矢継ぎ早の美和子の言葉に、おもわずオウム返しをしてしまいました。
「わたくし、考えました。花嫁になるのには、世間知らずすぎると」
美和子はハンケチを膝の上でひねくり、しゃべりながら鶴を折っています。
話の展開が意外すぎて、百合子と大吾は思わず顔を見合わせてしまいました。
「お母さまはグランド・ツアーという言葉をご存じかしら?」
美和子の言葉に、大吾は思わずにっこりと破願しました。
「そうか! グランド・ツアーか!」
「それはなにかしら……」
百合子はわけがわからず、思わず言葉が途切れがちになりました。大吾は百合子に向き直り、嬉々として説明を始めました。
「17世紀から19世紀にかけて、欧州の上流階級の子息や令嬢がやった大旅行のことだよ。社交界にデビューする前に、教養を磨くため、身分を隠して様々な名所旧跡を巡った旅行だ」




