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無理もありません。
真行寺家の跡取り娘の美和子は、それはもうご両親から溺愛されていますから。
ちょっと熱が出た、鼻血が出た、すりむいたなどのほんのちょっとした不調でも、彼女の両親は大騒ぎしてやれ医者だ、救急車だとおろおろする始末です。実際に鼻血のときは、本当に救急車を呼んであとで救急隊員に平謝りに謝罪した事件があったくらいです。
まあそれも、美和子が武道の師範をやとって日常的に軽いケガをするようになってからは、大騒ぎの頻度は少なくなりましたが。
両親の過保護といえる心配性を知っている美和子は、自分が旅をすると宣言したらどんな反応がかえってくるか予想できました。
その時パタパタという軽い足音が近づいてきました。
「美和子お嬢様、おられんかいな?」
妙な口調の持ち主が、ふいに部屋に顔を見せました。
浅黒い肌に、肩までおおうたっぷりとした黒髪の少女です。身に着けるのは真行寺家お仕着せのメイド服です。小柄ではありますが、胸と尻に充実したふくらみを持ったあきらかに日本人とは違うタイプの少女でした。なにより目につくのは、彼女のすみれ色の瞳でした。
「アイリス、何か用?」
彼女はアイリス加藤という、アメリカ出身の真行寺家メイド見習いです。
加藤という姓からおわかりになるように、国籍はアメリカですが、日本人の父親と、アフリカ系の母親のハーフです。
母親からはアフリカ系の浅黒い肌と日本人ばなれした胴が短くて足が長いモデル並みのスタイル(もっとも身長が低すぎてプロのモデルにはなれませんでしたが)と、父親から受け継いだまっすぐなストレートヘアが自慢でした。瞳がすみれ色をしているのは、両親のどちらかが白人の遺伝子を受け継いでいるからかもしれません。
日本語はアメリカに住んでいたころから日本のバラエティ番組をむさぼるように視聴し、自然と覚えました。だけど手本にしたのが芸人が多く出演するバラエティ番組なので、奇妙な方言(主に関西弁)のミックスになってしまいました。
本物の関西人が聞いたら腹が立つようなパチモン関西弁ですが、そこは大目に見てやってください。




