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美和子はそれまで座っていた椅子からすっくと立ちあがり、こぶしを握り締め宣言しました。
「F田のお宝を探すのよ!」
藤村が美和子を見上げ、呆けたような表情になりました。
一方、筆頭執事の五郎はかすかに笑みを浮かべたきりです。
太郎はぎくりと肩を動かしました。
大股に美和子は部屋の中を歩き回り、話をつづけました。
「F田のお宝は実在するとは思っていなかったの。今までいろんな噂を聞いてきたけど、本当にあったなんて知らなかった。こうなったら、何が何でもあたしが見つけてみせる!」
そこまで一気に話し終えると、鋭い仕草で太郎に向き直りました。
「太郎、すぐに旅の支度しなさい! 今からF田のお宝を探すため、家を出るわ」
「お嬢様……」
太郎がおどおどとした表情で小声で話しかけました。
「なあに?」
美和子は太郎に顔を向けました。美和子にとって三才年下の太郎は弟のような存在で、ちょっと保護者的な気分が声にふくまれるのです。
「ご両親はお許しになられるでしょうか?」
太郎の疑問に、美和子はきりりと眉を上げましたが、それでもぐっとこらえているようでした。
「なんとかするわ……」
しかし今度の美和子の返事には、気のせいかさきほどまでの圧倒的な気力が失われているようでした。




