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藤村が興味深げな表情で口を開くと、美和子は小さくうなずきました。
「今から半世紀以上昔だけど、F田というそれはそれは有名なゲームコレクターがいたの。かれは国内外のあらゆるゲームに精通し、全財産を注ぎ込んでコレクションを続けたわ。とくに有名だったのは、初期のゲームカセットのコレクションね。これなんか典型だけど」
と、美和子は段ボール箱からひとつのカセットをつまみ上げました。
「『夢を見る人』、というタイトルの、当時ではクソゲーとして有名なソフトなの。でも本数が少なすぎて、のちに希少性からコレクターの間で値段が跳ね上がったことで逆に知名度が上がったわ」
値段、という言葉に藤村の眼鏡の奥の瞳がきらりと光を帯びました。
「そ、それはどのくらいのお値段になるのですか?」
「そうねえ……」
と、美和子はかすかに首を傾げ、指先を顎に当てました。そのしぐさが決まっていて、まるでアイドルのようでした。
「最低でも10万……この状態の良さから判断すると、おそらく50万はくだらないわね」
「そんなに!」
藤村は驚愕のあまり、思わず膝を立ててしまいました。
「す、すると、その段ボールの中身は?」
大急ぎで藤村は背中に手を回し、腰のベルトに下げた物入から小型の算盤を取り出しました。
「ええと平均価格が一本18万といたしまして、中の本数を掛けて……」
ぶつぶつ独り言をつぶやきながら、素早い指先の動きで算盤の珠をはじきます。
算盤の珠は指先の動きにつれ上下に動きますが、ときおり光を放ちました。
これは光素子を組み込んだ、最新のスマホ算盤なのでした。珠ひとつひとつに光電素子を組み込んだ集積回路を備え、複雑な計算を一瞬でなしとげます。同時に量子コンピュータの性能も持ち、計理士にとっては必需品の機器なのでした。
「最低でも800万、もしかして2000万!」
ぼう然と呟きました。焦りで藤村の額からびっしりと玉の汗が浮かびます。
「これはF田のコレクションからすると、ほんの一部よ。全体はおそらく、この屋敷いっぱいに埋め尽くすほどでしょうね」
美和子の返答に、へたへたと藤村は腰を落としぐったりと頭を下げました。




