第四話
「いらっしゃいませ〜!」
煩いくらい明るい声が聞こえる。
パンが並んでいる。
窓越しに外を見て、ふと、昨日のことを思い出した。
『あれ食べたい!』
そう言って、いつもは食べないようなパンを指差していた。
煩い子供。
それは、息子だった。
「あぁ、今日あのひといないのか」
いつもなら買わないような、ちょっとだけ高いパン。
今日なら、買っても許される。
トングによって掴まれたパンが、潰れる。
けれど、そんなことはどうでもよかった。
適当なパンを2、3個をトレーに載せて、レジに向かう。
私の前にはひとりしかいなかったので、すぐに私の番になった。
「珍しいですね、胡桃パン買わないの」
そう、アルバイターの子が話しかけてくる。
良く見ているんだな、と、少しだけ思った。
私がその言葉に返すことは、なかった。
「お会計、750ロアになります」
唐突に、声がした。
案の定、いつもより高い。
けれど、そこまで高いものなのか、と驚いてしまった。
カードで支払いを終えて、私が来たときより増えた客を背に、私は帰路につく。
息子のためとはいえ、少しだけ、高い出費だと感じてしまう。
そんな自分が、嫌になった。
いつものパンなら、500ロアもかからないのに。
考えたら、きりがない。
わかっていても、考えてしまう。
ぼんやりしていたからだろうか。
小石にぶつかって、転んでしまった。
ただでさえ潰れていたパンは更に潰れ、原型がわからなくなっていた
それでもわざわざ店に戻る気には、どうしてもなれなくて。
立ち上がって、前に進んだ。
今日こそは、笑わせたかったから。




