第十一話
「次は……17の、干上がりか。ったく、迷惑な死に方しやがって」
17歳女、戸籍名は叶愛。
といっても、戸籍名なんてアテにならないが。
だいたい、戸籍と真名は違うことの方が多いからな。
戸籍名なんて、親が雑につけて終わり。
この地域の奴らにとっては、その程度のものなのだろう。
「復活の見込みあり、水漬け」
「はい」
いつから居たのかもわからない部下が、失礼します、と言って、部屋の扉を開いた。
ミイラ化した者の半数……とまではいかないだろうが、それに近いくらいの数が、水漬けで復活している。
最も、復活させられた者の大半が自死を選ぶのだが。
誰も幸せにならない死に方。
それが、俺等にとっての干上がり、だった。
「先輩、叶愛?とかいうさっき水漬けした女の親族が……」
「わかった。何処に?」
そう言いながらも、俺の足は応接室へと動いていた。
どうせ同じ。それなのに聞くのは、ルールだから。
「第二です」
嗚呼、いつもと少し違う場所みたいだ。
聞いておいて良かった。
「わかった。叶愛?とかいうやつは水から出せ。その次は73の老衰、住所はこれ。よろしく」
そう言って、部下に一枚だけ紙を渡した。
「了解っす」
老衰は楽だが、処理には酷く時間がかかる。
まあ、その分サボれるのだけれど。
花のように朽ちていく身体に、彼らは何を思っているのだろう。
そんなことを思いながら、扉を開く。
そこには、夫婦と思しき男女が椅子に座っていた。
扉を開いた音で、女の方がばっと立ち上がり、俺に近づいてきた。
「娘は、叶愛は……今、どうなってますか」
「一度手違いで水につけてしまいました。申し訳ございません」
ですが、と付け足す。
「すぐに水から出し、身体についた水を乾かしました。……これで、いいんですよね?」
暫くの間、時が止まっていた。
実際はそんなことはないのだが、そう思ってしまう程に静かだった。
「…………ありがとう、ございます」
その沈黙を破ったのは、女の方だった。
瞳には、諦めが宿っていた。
「娘の火葬には、私達でも参加できますか」
「ええ、10人までなら構いませんよ」
先ほどより余程歯切れの悪い返事をした女は、俺から視線を外す。
男の方に向かう女を見た俺は、そっと扉を閉じた。
もうここに、用はない。
せめて、ふたりだけにしてやろう。
__そんな、俺なりの気遣いだ。
それを好意と取るか、悪意と取るかは彼ら次第なのだけれど。




