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第九話
「いきなりでごめんなさい。ついてきて、くれませんか」
「……ちょっとまっててください」
そう言って、バイトの女は階段を上がっていく。
これじゃあ会計が出来ない。
そんなことを思いながら、どうせこれ以上は買わないであろう商品たちを眺める。
数分後、先程のバイトの声が聞こえた。
「うん、わかってるよ。スイさん、7の刻までには帰してくれますよね?」
「あ、あぁ。そんな時間かけるつもりはないよ」
「うん、ありがと。あぁ、お客様、ごめんなさい。お会計ですか?」
突然、声をかけられる。
どう返していいかわからず、ただカウンターにトレイを置いた。
バイトの子はカウンターに立って5秒もしないうちに言った。
「お会計、1050ロアになります」
からからと、鈴の音が鳴る。
寂しげな鈴の音が。
「ありがとうございます。また来てくださいね」
そう言って、俺の渡したロアはレジに吸い込まれた。
扉が開かれる音がした。
まるでヒステリックを起こしたときの女の声のようだ。
「お嬢さん、こちらへ」
少し格好をつけたようにして吐かれた言葉。
「ふふ。ありがとう、スイさん」
彼女がそれに乗っかるのは、優しさか、あるいは噂通りなのか。
そんなこと、俺には知るよしもなかった。
夏が終わってしまった。




