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第95話:絶妙なナナメのイスと、神の完全陥落

「……はぁ。本当に、困っちゃうよな。なぁ、配信を見てくれてるみんなも聞いてくれるか?」


アビス最下層の極楽リゾート。

自分たちの最強の呪いを「アース線」一本で無力化され、プライドを完全に粉砕されてボロボロと涙を流す宇宙の管理者たち。

しかし、ルミナのドローンカメラに向かってケントは、リアルな疲労感たっぷりに、とても優しく落ち着いたため息をこぼした。


「入ったばかりの新人さんたちが、ちょっと現場の掃除を任されたくらいで膝から崩れ落ちて泣き出すなんてさ。最近の若い子は、少し足腰が弱いみたいだね」


『いやおっさん! あの人たち心が折れて泣いてるだけだから!ww』

『宇宙の神様を「足腰の弱い新人」扱いしてて草』

『おっさんが優しすぎて逆に狂気を感じるww』


ドローンが視聴者の的確なツッコミを拾う中、ケントの目には、彼らが『立ちっぱなしの慣れない現場作業(掃除)で、足腰が限界を迎えて泣いている可哀想な新人』にしか見えていなかった。


「初日から腰を痛められたら、労災申請とかいろいろ大変だからね。よし、特急で休憩所を作るか」

ケントは目を細め、泣き崩れる神々に向かって優しく微笑んだ。

【構造把握】――!

今回は目が発光するだけでなく、ケントの熟練の『目視』によって、神々の背骨の曲がり具合、筋肉の疲労度、そして最も負担のかからない重心のパズルが、視界に青いワイヤーフレームとなって完璧に展開された。


「よし、寸法は読めたよ。みんな、危ないから少し下がっててくれ」

ケントは彼らが乗ってきた『浮遊神殿の装飾(鉄クズ)』と、資材置き場の『Aランク魔獣のぷにぷにの腹皮』を引きずり出した。

【超速クラフト】起動。


ケントは愛用の『特注・魔導インパクトレンチ』をシャキーン! と取り出す。マイルドな営業スマイルを崩さず、巨大なシャコ万力で神殿の硬い鉄クズを固定し、極太ボルトを「ダダダダッ!」と打ち据え、絶妙な角度でパズルのように折り曲げていく。

そこに極上の弾力を持つ腹皮をピンと張り、一瞬にして『奇妙な形をしたパイプ椅子』を人数分錬成してしまった。


『出た! 親方の優しさに包まれた神速DIY!』

『神殿の装飾がただのパイプ椅子の骨組みになってるww』


「いいか? 画面の前のデスクワークをしてる皆もよく聞いてくれよ」


ケントはカメラに穏やかな笑顔で語りかけながら、完成したイスに、泣いている神々をそっと座らせた。


「人間の体ってのは、座面と背もたれを『絶妙なナナメの角度』に固定して、膝の位置を心臓より少しだけ高くしてやると、体重がフワッと全身に散らばるんだよ。こうやってパズルのように骨組みを組んでやれば、重力が『どこに力をかければいいか』迷子になる。まるで雲の上に浮いてるみたいな座り心地になる、現場の疲労回復の裏技さ」


『エルゴノミクス(人間工学)を「重力が迷子になる」で説明するおっさんww』

『神殿の破片から即席で無重力チェア錬成してて草』


「な、なんだこれは……!? 我らの体が、宙に浮いているように軽い……っ!」

驚愕する神々の手に、ケントはすかさず「休憩ボーナスにしよう、たくさん食べてね」と、BBQの網で香ばしく焼き上げた『極上魔獣肉のジャンボ串』と、『キンキンに冷えた大ジョッキの生ビール』を優しく握らせた。


「「「!?!?……あ、あぁぁぁっ♡」」」

極上のイスに体を預けながら、肉を齧り、ビールを喉に流し込んだ瞬間。

宇宙の理を司る超越者たちの瞳から、一切の理性が消え飛んだ。


『ちょww 神様の顔がヤバいww』


「だ、ダメだぁ……! 宇宙空間より快適なこの座り心地に、暴力的な肉の旨味と、麦酒の冷たさが細胞を犯していくぅぅっ♡」


「こんな極上の福利厚生があるなら、地球を滅ぼすなんてバカバカしいでしゅぅ! 吾輩たち、もう一生親方様の現場で社畜になるでしゅぅぅっ♡」


かつて地球に神罰を下そうとした管理者たちは、完全に焦点の合わないアヘ顔ダブルピースを浮かべ、よだれと涙を垂らしながらイスの上でビクンビクンと昇天していた。


『宇宙の神がアヘ顔ダブルピースでビール飲んでるwww』

『ダメだこいつら完全に堕落しきってるww』

『ルミナちゃん! 今の神様の顔スクショして世界中に拡散だ!』

『地球の平和、現場のオッサンの「まかない」で守られる』


配信画面越しに、宇宙一マヌケな神々の姿が全世界へと拡散され、世界中の人々が安堵と爆笑の渦に包まれていた。


「ふぅ。やっぱり疲れた時は、ゆっくり座って美味い飯を食べるに限るな」

ケントは完璧で落ち着いたマイルドな営業スマイルを浮かべ、自分の分のビールをあおった。


すると、極上のビールを飲み干した管理者たちが、イスから転げ落ちるようにケントの足元にすがりついてきた。

「お、親方ァ! 我々も心を入れ替えます! どうか我々を、この極楽現場の『無料Wi-Fiルーター役(通信インフラ)』として雇ってくださいぃぃっ!!」


『神様が自らWi-Fiルーターに志願してて草』

『もはや通信インフラww』


「……えっ? Wi-Fi? まあ、地下でもスマホの電波が繋がるなら便利で助かるけど……」


どんな宇宙の脅威も、一級建築士の規格外のDIYと、圧倒的に優しくホワイトな待遇の前では、ただの「便利な現場の通信設備(社畜)」へと成り下がるのであった。

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