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第94話:ハンマードリルの轟音と、静電気(神の呪い)逃がし

「……ふざけるな。ふざけるなァァッ! 宇宙の理を司る我らが、ただの土木作業員に餌付けされるなどッ! ええい、こうなれば肉体ごと精神をドロドロに溶かして廃人にしてくれるわッ!!」


アビス最下層の極楽リゾート。

ケントに極上串肉を食わされ、あわや社畜に堕落しかけた宇宙の管理者たちは、最後のプライドを振り絞って立ち上がった。

彼らの全身から、ドス黒いオーラがバチバチと放電するように溢れ出す。それは触れた者の精神を汚染し、発狂させる神の最終兵器『精神汚染の呪い波』だった。


『うわあああ! 神様がガチギレした!』

『画面越しでも頭がおかしくなりそうだ……逃げてええっ!』


ドローン越しにルミナの配信枠が阿鼻叫喚に包まれる中。


「……はぁ。ホント、勘弁してほしいよな。なぁ画面の前のリスナー達も、聞いてくれないか」


ケントは、ルミナのドローンカメラに向けて、リアルな疲労感たっぷりに落ち着いたため息をこぼした。


「冬場でもないのに、嫌な『静電気』がバチバチ鳴ってやがる。せっかくのオープン初日に、お客さんがドアノブ触ってビリッときたら即クレームだろ。後処理するこっちの身にもなってほしいもんだ」


『神話級の呪いがただの静電気扱いww』

『スケールバグりすぎて脳がバグる』

『クレーム対応>>>>宇宙の危機』


神の放つ絶対的な呪いの波動を、一級建築士のおっさんは完全に「空気が乾燥した時の鬱陶しい静電気」としか認識していなかった。


「おい霞! 筋肉たち! 急ぎの突貫工事(安全対策)だ!」

ケントは安全靴の足裏で床をドンッと強く踏み鳴らした。


足裏から伝わる振動と反響音だけで、ケントは床下数十メートルの岩盤の密度と、「最も電気を逃がしやすい湿った地脈」のルートを瞬時に読み切る。


そのままケントは、資材置き場から『雷サイの巨大な角』と『鉄骨の端材』、『スライムの空気袋』を蹴り上げた。


ケントは愛用の『特注・魔導インパクトレンチ』をシャキーン! と抜き放つ。マイルドな営業スマイルを崩さず、巨大なシャコ万力で部材を固定し、極太ボルトを「ダダダダッ!」と打ち据えて強引に組み上げていく。

完成したのは、スライムの空圧を利用して暴れ狂う『特大の空圧式ハンマードリル』だ。


「よし、リスナーの皆もよく見とく様に」

ドドドドドドドッッ!!!

ケントは一切取り乱すことなく、ハンマードリルの轟音と共に、極太の鉄骨(アース棒)をアビスの硬い岩盤の奥深くへと容赦なくねじ込んでいく。

火花と粉塵が舞う中、鉄骨が完璧な深さまで突き刺さると、ケントは『魔獣の太い神経(電気を通すケーブル)』を鉄骨の頭にバチィッ! と巻き付けた。


「いいか霞! 電気ってのはとにかく『地面の奥深く』に逃げたがる性質があるんだ!」

ケントはケーブルの反対側を、神々に向かってポイッと放り投げた。

「だから、人間の体なんかよりずっと通りやすい『太い鉄の抜け道』を作って地面に刺してやる! そうすりゃ、嫌なビリビリは人間に見向きもせず、勝手に地面に吸い込まれていくんだ。現場の知恵ってやつさ!」


その直後、神々の放ったドス黒い精神汚染の波が現場を呑み込もうとし――。


シュンッ……。


ケントの言う通り、呪いの波はすべてケーブル(抜け道)を伝って、岩盤の奥深くへと虚しく吸い込まれ、完全消滅してしまった。


『呪いがアース線で物理的に逃がされたwww』

『現場の安全対策の前には神も無力』

『電気工事の基礎知識だけで宇宙の危機を救う男』


「よし、漏電ビリビリ対策ヨシ! お前ら、ケーブルの支えご苦労だったな。疲労回復の現物支給ボーナスだ」

ケントはクーラーボックスから、バケツサイズの器に盛られた『Aランク魔獣ベリーと極上ミルクの特大氷結パフェ』を取り出し、手伝った特務部隊の筋肉たちにドンッと振る舞った。


「「「いただきますッッ!!!」」」

「ああっ……! 振動で疲れた体に、極上の甘味とミルクの脂肪分が暴力的なまでに染み渡るぅぅっ! 現場仕事の後のスイーツ、最高だァァッ!」

「うひぃぃっ♡ 地球の危機より親方様のパフェでありますぅぅっ!」


直前まで最強の呪いが吹き荒れていたというのに、最前線の筋肉たちは完全に焦点の合わないアヘ顔を浮かべ、パフェを貪り食って歓喜の涙を流す究極の社畜へと堕落しきっていた。


『呪いよりパフェの破壊力の方が高くて草』

『筋肉たちがすっかりスイーツ男子になっとるww』


「……あ、あぁ……我らの、究極の呪いが……鉄の棒、一本で……」

魔法も呪いもすべて「現場の安全対策」として処理され、完全に心がへし折られた宇宙の管理者たち。

彼らはついに膝から崩れ落ち、ボロボロと大粒の涙を流し始めた。


「我々の……負けだ……。宇宙の理など、この現場の前では無意味だった……もう、好きにしてくれ……」


「よし、静電気も収まったな。……おい新人ども、そんな所でサボってないで、明日のオープンの飾り付けを手伝え」

ケントの落ち着いたマイルドな営業スマイルでの号令に、神々は「は、はいぃぃっ!」と涙声で返事をし、大人しくほうきを握りしめた。


アビス最下層に、また新たな強力な「バイト」が誕生した瞬間であった。

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