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第93話:スライムコンクリと、崩壊魔法の敗北

「だ、誰が新人バイトだ下等生物ゥゥッ! 我らは宇宙の理を統べる管理者なるぞ! ええい、貴様らごとこの忌まわしい建築物を砂に還してくれるわ!」


アビス最下層のBBQ会場。

ピカピカに殺菌された宇宙の神々が、屈辱に顔を歪ませながら両手を振り下ろした。

放たれたのは、触れた物質の分子結合を破壊し、すべてをサラサラの砂に変える神話級の攻撃『崩壊の神法』。黒い波動が床に直撃し、遊園地の強固な床面にピシピシと無数の「ヒビ」が走っていく。


『うわああ! おっさんの床が割れた!』

『やっぱり宇宙の神様には勝てないのか!?』

ドローン越しにルミナの配信枠が絶望に染まる中。


「……はぁ。マジで勘弁してくれよ。入ったばかりの新人バイトが、いきなり床に傷をつけるとかタチの悪いイタズラかよ。後片付けするこっちの身にもなってくれよ」

ケントは、悲哀をたっぷり背負ったため息をこぼした。


ケントの瞳が青く発光する。

【構造把握】

床を破壊していく黒い波動の正体。それが単なる『急激な乾燥と結合力の低下』であることを、ケントは一瞬で見抜いていた。


「ただの乾燥ヒビじゃないか。まあいい、アレの出番だな」

ケントがマイルドに笑った瞬間。

ヒビ割れた床の奥底から、ブニョブニョブニョッ! と透明なゼリー状の物質が溢れ出し、みるみるうちに床のヒビを内側から塞いでしまった。


「な、なんだ!? 破壊したはずの床が、勝手に治っていくぞ!?」

驚愕する神々をよそに、現場監督補佐の霞が呆れた声を出した。

「親方……まさか、床材の中に何か仕込んでましたね?」


「いいか霞! 今回は砂利の中に『冬眠させた極小のスライム』を混ぜて床を打っておいたんだ」

ケントは床を指差す。

「床にヒビが入って『スキマ風(空気)』が吹き込むと、中で寝ていたスライムがビックリして目を覚ます! あとは勝手にブクブクと膨らんで、ヒビの隙間を埋める『強力なボンド』の代わりになるんだよ!」


『スライムを混ぜて自動修復する床を作ってたww』

『宇宙の破壊魔法を「ただの乾燥ヒビ」扱いしてて草』


その様子を見ていたルミナが、ドローンに向かって的外れな実況を叫ぶ。

「み、みんなー! あのピカピカの新人さんたち、親方が作った床の『耐久テスト』を手伝ってくれてますね! すごく熱心です!」


『耐久テスター扱いで草』

『神様の攻撃、完全に品質検査のバイトに降格ww』


だが、ケントの目は現場監督として妥協を許さなかった。

「おい新人! スライムが穴を塞いだが、表面がミリ単位でボコボコしてるじゃねえか! 仕上げが甘ぇんだよ!」


【超速クラフト】起動。

ギャリリリリリリッ! バチバチバチィッ!!

ケントは足元の『鉄骨の端材』と『魔獣の骨』を掴むと、瞬時に強引に溶接し、特大の『左官ゴテ(鉄の平らな板)』を錬成。そのままスライムが膨らんだ床に向かって突進し、火花を激しく散らしながら「オラァッ!」と体重を乗せて強引に床を平らにならし切った。


「よし、床の補修ヨシ! どうだ新人、これがプロの仕上げだ!」


「ば、馬鹿な……我らの究極の神法が、ただのパテ埋めと鉄の板で……」

魔力を完全に使い果たし、絶望と共にその場へへたり込む宇宙の管理者たち。最強の攻撃魔法は、最新の「建築資材」と泥臭いDIYの前に完全敗北を喫した。


「ま、新人にしては『ヒビの入りやすい弱点』をよく見つけてくれたよ。熱心な仕事ぶりだ。休憩(一服)にするぞ!」

ケントは、へたり込む神々の口に、BBQの網から引き上げたばかりの『極上の肉汁滴るAランク魔物肉のジャンボ串』と、『キンキンに冷えた魔物エナジードリンク』を強引にねじ込んだ。


「「「!?!?!?!?……っ!!!」」」

咀嚼した瞬間、宇宙の神々の瞳から光が消え飛んだ。


「あ、あぁぁっ……!? 口の中で、暴力的な旨味とカロリーが爆発して……っ! すり減った魔力が、一瞬で一万倍に回復していくぅぅっ♡」

「な、なんて美味さだ……! 宇宙の理などどうでもいい……吾輩たちも、この現場でずっと耐久テストのバイトをするぞぉぉっ♡」


かつて地球を滅ぼそうとした宇宙の超常存在たちは、完全に焦点の合わないアヘ顔を浮かべ、よだれを垂らしながら串肉にむしゃぶりつく『歓喜の社畜』へと、一瞬にして堕落しきっていた。


「ふぅ。これで現場の人数(人手)も増えたな。さあ、明日は最高のオープン初日を迎えるぞ!」

ケントは首のタオルで汗を拭い、完璧でマイルドな営業スマイルを浮かべた。

どんな神話級の脅威が訪れようと、一級建築士のおっさんの前では、すべてが「平和すぎるホワイト現場の日常」に飲み込まれていくのであった。

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