第81話:超大型換気塔(空気の丸洗い)の建造
ボワァァァッ……!
アビス最下層は今、異常な熱気と息苦しさに包まれていた。
絶叫マシンの動力源として社畜と化した古代竜が、極上ステーキを食うたびに吐き出す『幸せな火炎ゲップ』と、機械の排熱。それらが地下の密閉空間に充満し、完全なサウナ状態になっていたのだ。
「ぜぇ、はぁっ……。ケント様の、ために……私が、警備を……っ」
ヤンデレ現場警備員のマリアが、作業着をはだけさせ、滝のような汗を流しながらフラフラと膝をつく。元・国家最強のエリート軍人たちも、あまりの暑さと息苦しさに顔を真っ赤にして次々とぶっ倒れていた。
「熱中症は現場の最大の敵だぞ」
ケントは首のタオルで汗を拭うと、防塵メガネを装着し、巨大なディスクグラインダーを手に取った。
ギャリリリリィィィンッ!!
ケントは、その辺に転がっていた『Aランク魔獣の硬い甲殻(先日トロッコでワンパン粉砕した残骸)』を、容赦なくゴミのようにぶった切り始めた。凄まじい火花が最下層に散る。
「おい筋肉たち! 今は頑張って立ち上がるんだ! 上に向かって真っ直ぐ『煙突用の穴』を掘れ。 俺はその間に、この鉄屑(魔獣の殻)で『特大の空気清浄機』を組む」
その言葉に、瀕死だったマリアの瞳に狂信的な光が宿った。
「お、お聞きなさいお前たち! 親方様は、私たちの労働環境(空気)のために、自ら火花を被って換気塔を作ってくださっているのよ! 親方様の尊い肺を、これ以上トカゲの口臭で汚すわけにはいかないわッ!!」
「うおおおおッ! 俺たちの呼吸まで完璧に管理してくれるなんて……なんてホワイトな現場なんだッ! 親方のために、アビスの天井をぶち抜くぞォォッ!!」
『筋肉たち、換気するって言っただけで号泣してて草』
『完全に狂信的社畜ww』
『Aランク魔獣の殻を、ただのダクトの端材として使う男』
『親方、また現場合わせのトンデモ工作始まったぞ!』
ルミナのドローンが、狂喜乱舞でアビスの岩盤を素手とツルハシでぶち抜き始めるマリアたちを映し出す中。現場監督補佐の東雲霞が、ケントの横で目を瞬かせた。
「お、親方。穴を掘って空気を逃がすのは分かりますが、ただの煙突じゃ、竜の熱気や匂いまでは取りきれませんよ?」
「だから、煙突の中で『空気を丸洗い』してやるんだよ」
ケントはニヤリと笑うと、ぶった切った魔獣の殻と太い鉄骨をパズルみたいに強引に組み合わせ、極太の針金(番線)でギリギリッと力任せに縛り上げ、溶接機でバチバチと接合していく。あっという間に、巨大で無骨な『筒』が完成した。
「いいか霞。泥だらけの重機はシャワーで洗うだろ? 空気も同じだ。この巨大な筒の下から、汚れた熱い空気を吸い上げる。そして筒の天井から、地下に湧いてる『冷たい温泉の水』を土砂降りみたいに降らせてやるんだ」
「空気に向かって、シャワーを……?」
「そうだ。上に逃げようとする汚れた空気に、上からドバドバと冷たい水のシャワーをぶつける。すると、空気中のチリや悪臭、熱気が全部『水』に叩き落とされる。結果的に、綺麗に洗われてキンキンに冷えた空気だけが、煙突から上へ抜けていくってわけだ!」
「空気にシャワーをぶつけて洗うって、それ完全に『巨大な水冷式クーラー』の理屈だけど、端材と針金のDIYで作るスケールじゃないわよ!」
霞のツッコミと同時に、ケントが巨大なパイプレンチでバルブを「ガコンッ!」と全開にした。
ゴォォォォォォォォッ!!
巨大な筒の中で大雨が降り注ぎ、淀んだ熱気が凄まじい勢いで吸い込まれていく。
数秒後。
『……ふぁぁ〜〜っ……♡』
筒の下部から排出されたのは、滝の周りのような、極上に澄み切った冷たいマイナスイオンの風だった。
「ああっ……! 涼しいっ、空気が美味しいですぅぅ……! 親方様の愛が、私の肺の隅々まで満たしていくぅぅ……っ♡」
マリアが恍惚としたアヘ顔で風を全身に浴びる。
「よくやったお前ら! 休憩だ、この『特製・魔物レモンのキンキン塩水』を飲め!」
ケントがツルハシを振るっていた筋肉たちに、疲労回復・魔力全快効果のある極上ドリンクの樽を無造作にドンッと置いた。
「ゴクッ……ぷはぁぁぁッ!! 生き返るゥゥッ!!」
「最高のそよ風と極上ドリンク……! 俺、もう一生この現場のドカタとして生きていきますゥゥッ!!(号泣)」
圧倒的な現物支給(給料)の暴力を前に、元・エリート軍人たちは白目を剥いて歓喜の涙を流し、究極の社畜へと完全に仕上がってしまった。
動力源の古代竜すらも、『おおっ、最高の空調! 肉も旨いし風も涼しい!』と、ハッスルしてさらに回し車を全力疾走し始める。
『泥水ススル:だから親方の現場、ホワイトすぎるだろww 俺のタワマンの空調より快適じゃねえか!!』
『神話の竜も軍人も、ただの幸せな現場作業員』
『給料(塩レモン水)の即時支給、助かる』
同接650万のコメント欄とススルのツッコミが爆発する中。
「よし、空気の丸洗い完了! 現場の安全ヨシ!」
ケントがマイルドな笑顔で頷いた、その時だった。
古代竜の全力疾走によって、さらに莫大な風圧を生み出した特大換気塔。
そこで完璧に浄化・加圧された大量の空気が、筋肉たちがブチ抜いた巨大な縦穴(通気口)を通って――アビスの階層をぶち抜き、はるか上空の『地上』へと、まるで大竜巻のように一直線に吹き上がっていったのだった!




