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第68話:ただの防犯センサーと暗殺者の誤算(全世界誤爆配信)

真っ昼間のように煌々と照らし出されたスパイチームのリーダー『にゃんこ☆マリア(仮)』は、センサーライトのあまりの眩しさと恥ずかしさに屈辱で顔を歪めながらも、即座にプロの暗殺者の目つきに戻った。


「……チッ、バレたなら仕方ないわ。プランC(強行突破)よ!」


彼女たちは頭にネコミミをつけた痛々しい姿のまま、『魔法障壁シールド』と『身体強化魔法』を最大出力で展開した。世界最高峰の国家機密スパイが本気を出したのだ。その周囲には、戦車の砲弾すら木っ端微塵に弾き返す輝く魔法のバリアが何重にも展開される。


「私たちのシールドは戦車の砲弾すら弾くわ! 一気に距離を詰めて、首を狩る!」


超人的な脚力で地面を爆破するように蹴り、ケントたちがいる現場の足場へ向かって一直線に飛びかかろうと猛ダッシュするスパイたち。

しかし、彼女たちが資材置き場の境界線に足を踏み入れた、まさにその瞬間だった。


カションッ。


小さな木の音が小気味よく鳴ったかと思うと、足元の地面がパコンと開き、偽装された頑丈なスプリングが勢いよく弾けた。


「え?」


スパーーーンッ!!


「にゃ、にゃあぁぁぁぁっ!?」


強烈な勢いで跳ね上がった『極太のワイヤー(※先ほど解体した特Sランク魔獣の糸)』が、マリアの足首を寸分の狂いもなく的確に捕らえ、彼女の体を大空へと一瞬で逆さ吊りに引き上げた。

さらに、背後を追っていた部下の美女スパイ二名も、連動して作動したお馴染みの落とし穴に綺麗にハマり、アビス特有のドロドロの魔力ヘドロの中へ顔面から豪快にダイブした。


「ブボボッ!? な、なにこれ! 私たちの無敵の魔法障壁が全く反応しなかったわよ!?」


泥まみれになって顔を真っ黒に染めた部下が、アビスの底で絶望の叫びを上げる。


「当然だ。そいつは魔法陣でもなんでもない、ただの『物理的な罠』だからな」


首にタオルを巻いたケントが、逆さ吊りになってブラブラと揺れるマリアを見上げながら、あくび交じりに呑気に種明かしをした。


「足場の周りに、細くて見えない『魔法の糸』をピンと張ってあるだけだ。お前たちがそれを足で引っ掛けると、つっかえ棒がポロッと外れて、ただの重りとバネの力でロープがビターン!と跳ね上がる仕組みさ。さっき獲れたての蜘蛛の糸で、お前たちが『にゃん♡』とか言ってる数秒の間にサクッと仕掛けておいたんだ」


「私たちが必死に言い訳してる数秒の間に、獲れたての素材でトラップ完成させてたの!? どんだけ手が早いのよ!」


現場監督補佐の東雲しののめかすみが、ヘルメットを押さえながら凄まじいスピードのDIYにツッコミを入れた。


ケントは足元の泥をコンコンと叩きながら、ふにゃりとマイルドに笑う。

「お前らのバリアってのは『敵の殺意』や『魔法の攻撃』を弾くんだろ? でもこいつはただの『バネと紐』だ。殺意もへったくれもない。ただ落ちてきた石ころにぶつかったのと同じ自然現象だから、バリアも素通りしちまうんだよ。……畑の資材を荒らす害獣イノシシ対策の基本だな」


「世界最高峰の防御魔法が、バネと紐の『イノシシ避け』に破られたって言うの!? どんだけアナログかつ理不尽な防犯システムよ!」


霞の叫びがアビス最下層に響き渡る。


「あ、あわわ……おろしてぇ……スカートめくれるぅぅ……」


逆さ吊りになったマリアの顔は、重力による鬱血と屈辱と羞恥で真っ赤に染まっていた。

だが、彼女たちの悲劇はそれだけでは終わらない。潜入前に「現場を乗っ取る」ために自分たちでセットし、空中に待機させていた『配信用ドローン』が、冷酷な暗殺者たちの「泥だらけで逆さ吊りになるドジっ子ぶり」を、全世界へ向けてバッチリと生配信(誤爆)していたのだ。


『にゃんこマリア、ただのイノシシ扱いで草』

『世界最強のスパイ(笑)が物理トラップで泥まみれwww』

『無敵の魔法障壁、ただのバネと紐に貫通される』

『設定(底辺配信者)を守って体張っててエライ!』

『泥水ススル:俺でもそんな無様な引っかかり方しねえよwww 港区のタワマンから大爆笑だわ!ww』

『スパチャ:腹筋崩壊したわ。お礼に1万円!』


ルミナの配信と合わさった相乗効果で、同接は瞬く間に400万人を突破。コメント欄は、タワマンから実況するススルのキレのあるガヤと、彼女たちの無様な姿に対する爆笑の嵐(強烈なざまぁ)で完全に埋め尽くされていた。


「い、いやぁぁぁっ! 見ないでぇぇっ!!」


全世界に消しようのない黒歴史(恥)をリアルタイムで晒され、マリアは涙目でジタバタと暴れる。


そんな、完全に心をへし折られた暗殺者たちに対し。

ケントはいつものマイルドな笑顔を浮かべ、逆さ吊りのマリアに向かって爽やかに笑いかけた。


「おっ、ルミナちゃんたちと同業の外国人か! はるばるご苦労さん!」


マリアは逆さ吊りのまま、羞恥と混乱で涙を浮かべて叫んだ。

「ち、ちがっ……これは、事故でっ……!」


「いやぁ、最近の配信者は体を張るな。再生数のために自ら泥水へダイブしてリアクション芸を披露するなんて、立派な根性だ」


ケントはウンウンと深く頷き、感心したように拍手を送る。

「だが、俺の現場の近くで無茶をして怪我(労災)をされては困る。そんな危険なサバイバル配信をしなくても、ウチで安全に『土木作業』をすれば、日当も温かいメシも風呂も保証してやるぞ」


「「「親方ァ! また新人ッスか!!」」」


ケントの勘違いスカウト宣言を聞きつけ、完全に社畜と化した元・エリート兵士たちがフォークリフトから身を乗り出して歓喜の声を上げる。

「女だからって容赦しねえ親方、マジで男女平等ホワイトッス!!」

「早くその泥を温泉で落として、一緒にコンクリ流し込もうぜ!!」


『親方、完全に勘違いしてるww』

『体を張った若手芸人だと思われてて草』

『マリアちゃん(暗殺者)、ホワイト現場に強制スカウトされる』

『国家の暗殺部隊が日雇い労働者にジョブチェンジww』


世界最強の暗殺者たちは、自分たちがついた「底辺配信者」という痛恨の嘘と完璧なアナログ罠のせいで、ケントと筋肉たちから『ガッツのある新規労働力』として熱烈な歓迎(勘違いスカウト)を受けてしまうのだった!

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