表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/92

第67話:偽装配信スパイの潜入と、熱感知投光器

アビス最下層の暗闇を、音もなく進む三つの影があった。

各国の諜報機関(CIA、MI6、公安)から選りすぐられた、冷酷無比な美女スパイチームである。


しかし、彼女たちの頭には安っぽい『ネコミミ型のヘッドホン』が装着され、手には『自撮りアクションカメラ』が握られていた。


目標ターゲットの現場監督は、現在遊園地の基礎工事中……予定通り、アレをけしかけるわよ」

リーダー格の女スパイが合図を送ると、巨大な地鳴りと共に『特Sランク魔獣・アビスアラクネ(超巨大蜘蛛)』が建設現場へと突進していった。


彼女たちの作戦はこうだ。

魔獣を誘導して「キャーッ! 助けてぇ!」と悲鳴を上げながら現場に駆け込み、偶然彼らに助けられて同情を買う。そして「底辺配信者が世界を救う」という筋書きで同接バズごと現場を乗っ取り、ターゲットを暗殺する。

そのために彼女が用意した偽名こそ、あざとさ全開の『にゃんこ☆マリア』であった。


「さあ、凄惨な悲劇の始まりよ。……って、え?」


しかし、暗闇からマリア(仮)が見た光景は、悲劇とは程遠いものだった。


「おっ! ちょうど観覧車のロープに使う『頑丈な紐』が足りなかったんだ! 向こうから勝手に歩いてくるとは、どこの業者の粋なデリバリー(宅配)だ? 助かるぞ!」


ケントは首にタオルを巻いたまま、あくびを噛み殺して呑気な声を出した。


「こいつのケツから出る糸は、絶対に切れない『魔法のワイヤー』なんだ。筋肉ども、傷をつけずに糸だけをいただくぞ!」

昨日組み上げた高機動フォークリフト(元・最新鋭パワードスーツ)の圧倒的なバカヂカラが唸りを上げ、数十トンの魔獣をフォークの爪で軽々と地面に縫い止める。その隙にエリート兵士たちが「資材搬入ヨシ!」と嬉しそうに叫びながら、瞬く間に蜘蛛のケツから大量の極太ワイヤーを巻き取ってしまったのだ。


「……は? 特Sランクの魔獣が、ただの『便利な建材』としてネット通販感覚で処理された……!?」

スパイたちは戦慄した。同情を買う作戦は完全に崩壊である。


「……想定外の処理能力だけど、問題ないわ。最終プラン(不可視の暗殺)に移行する。私たちの『完全光学迷彩』は光を曲げて姿を消す世界最高峰の魔法。このまま無言で近づき、寝首を掻く!」


完全に透明になった彼女たちが殺気を消し、建設現場の敷地内へ足を踏み入れた、その瞬間だった。


ピピッ――バチィィィンッ!!

突如、現場の足場に設置されていた『巨大なLED投光器』が一斉に向きを変え、透明なはずのスパイたちに10万ルーメンの暴力的な光を真っ向から浴びせたのだ。


「なっ!? 目がぁぁっ!!」

「な、なんで!? 私たちは光学迷彩で完全に透明なはずなのにッ!」


突如として真っ昼間のように照らし出され、目を押さえて悶絶する透明な美女たち。

光の先から、スパナを持ったケントや作業員たちがぞろぞろと集まってくる。


「何者だ!? お前たち、どこから入ってきた!」

作業員に怒鳴られ、絶体絶命の窮地に陥ったリーダーの女スパイは……震える手で自撮り棒を構え、苦し紛れに「設定」通りの甲高い声を出した。


「あ、あわわ……! あ、あたしたち、底辺配信者の『にゃんこ☆マリア』とそのスタッフですぅ! 道に迷い込んじゃってぇ……にゃん♡」


世界最高峰の冷酷なスパイが、10万ルーメンの光を浴びながらネコミミポーズを決めるという、拷問以上の屈辱的(痛々しい)光景である。


「光学迷彩まで使って侵入しといて、そのあざとい設定には無理があるでしょッ!」

現場監督補佐の東雲しののめかすみが、ヘルメットを押さえながら容赦のないツッコミを入れた。


「光学迷彩ね。なるほど」

ケントはフルーツ牛乳を飲みながら呑気に種明かしをした。

「透明になって目を誤魔化しても、人間が生きてりゃ必ず『体温(熱)』が出るだろ? こいつは『炎の魔石』をちょっと弄って、周囲より温かい熱(不審者)を見つけたら自動でパッと照らすようにしただけの、ただのセンサーライトだ。暗い現場で、重機に人が轢かれないようにするための安全設計だな」


「世界最高峰の隠密魔法を、ただの『現場のセンサーライト』で無効化したの!? どんだけセキュリティがガチガチな現場よ!」


『うおおお! おっさんの現場に痛い不審者乱入ww』

『にゃんこマリア(完全武装)で草』

『透明になってても熱でバレるの科学の勝利』

『スパイなのに設定がガバガバすぎるだろww』

『泥水ススル:俺みたいな底辺配信者のフリしてんじゃねえ! にゃん♡じゃねえよ!ww』

『完全に見えてるぞ! ご安全に!』


地上に生還したススルからの的確なツッコミも飛び交い、ルミナのドローンが暗闇の中でスポットライトを浴びて顔を真っ赤にする『にゃんこ☆マリア(仮)』の姿を全世界に配信し、同接350万人のコメント欄は大爆笑に包まれていた。


「私、たちの……最強の隠密魔法が……ただの安全設備ライトに破られたっていうの……?」


完全に気配を消していたはずが、真っ昼間のように煌々と照らし出されたスパイチーム。

次なる福利厚生の生贄候補となる『痛々しい底辺配信者(嘘)』たちは、現場の圧倒的なテクノロジーと羞恥心の前に大パニックに陥るのだった!

「続きが気になる!」「おっさん頑張れ!」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークの追加と、下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、更新の大きな活力になります!

(後から変更して頂いても嬉しいです!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ