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第66話:遊園地建設開始と地盤改良(粉塵対策ミスト)

「おざぁぁぁぁっす!! 親方ァッ! 本日もご安全にッ!!」


アビス最下層に、屈強な男たちの野太い挨拶が響き渡る。

昨晩、極上のサウナと全自動マッサージチェアの洗礼を受け、完全に『ととのい』きった元・最強機動部隊のエリート兵士たち。彼らの顔はツヤツヤと輝き、疲労度ゼロの完璧なコンディションで一列に整列していた。


「ああ、おはよう筋肉たち。今日もヨシ!」

ケントは首にタオルを巻いたマイルドな笑顔で、男たちと共に朝礼の指差呼称(ヨシ!)を決める。


「さて。腹も膨れて疲れも取れたところで、いよいよメインプロジェクト……『極楽・地下遊園地』の建設を始めるぞ!」


男たちの歓声が上がる中、ケントは巨大なミキサー跡地の先に広がる広大な未開拓エリア(ドロドロの沼地)を見据えた。

その瞬間、ケントは首にタオルを巻いたまま、あくびを噛み殺して呑気な声を出した。


「だが、ただのヘドロの上に重い遊具なんか乗せたら、数日でズブズブと沈んじまう。まずは地面をカチカチにするぞ。お前たち、昨日作った高機動フォークリフト(元・パワードスーツ)と重機を出せ!」


ケントのゆる〜い指示が飛ぶ。


「ただの泥に重いもん乗せたら沈むだろ? だから、昨日ミキサーで砕いたドラゴンの骨(セメントの粉)を地面の底にぶちまけて、でっかい泡立てスクリューで泥ごとグルグルかき混ぜるんだ。そうすりゃ、泥の中に絶対に沈まないカチカチの柱が何十本もできる。現場の知恵ってやつさ」


「でっかい泡立て器で、魔獣の骨と泥をかき混ぜて地盤補強!? どんだけ大雑把なクッキングなのよッ!」

現場監督補佐の東雲しののめかすみが、ヘルメットを押さえて的確なツッコミを入れる。


ギュイィィィンッ! ドドドドドッ!

ケントの改造重機に乗り込んだ兵士たちが、歓喜の声を上げながら次々とドロドロの地盤に巨大なスクリューをねじ込んでいく。

だが、大規模なセメントかき混ぜが始まると同時に、現場には大量の『粉塵セメントのチリ』が舞い上がり始めた。


「ゲホッ、ゴホッ! お、親方! チリで前が見えませんッ!」

「バカ野郎! 現場で粉塵を吸い込めば肺を悪くする! 俺の現場で労災(健康被害)は絶対に許さんッ!」


ケントは即座に、用意していた巨大な『特製送風ファン』のスイッチを入れた。


ブゥォォォォォンッ!!

ファンから凄まじい勢いで噴き出されたのは、ただの風ではない。ひんやりとした『微細なミスト(霧)』だった。

ミストが現場を包み込んだ瞬間、空を覆っていた分厚い粉塵の雲が、まるで魔法のように一瞬にしてドサッ!と地面へと叩き落とされ、視界がクリアになったのだ。


「なっ!? ただ霧を撒いただけで、あんな大量の粉塵が一瞬で消えたッ!?」

霞が目を丸くする。


ケントはフルーツ牛乳を飲みながら呑気に種明かしをした。

「ただの霧じゃない。『雷の魔石』を仕込んで、ミストにちょっとだけビリビリッ!とした電気を纏わせてるんだ。そうすりゃ、静電気で下敷きに髪の毛がくっつくみたいに、宙を舞ってるチリが全部ミストにくっついて重くなって、ドサッと下に落ちるだろ? 粉塵を抑えるし、涼しくもなる。完璧なゼロ災(安全)設計だ」


「下敷きの静電気の理屈で、巨大な工事現場の粉塵を全部叩き落としたの!? どんだけ労働環境に優しいのよ!」


『親方の現場、ホワイトすぎるだろww』

『粉塵対策まで完璧なSDGsダンジョン』

『エリート兵士が完全に土建屋の顔つきになってて草』

『ススル(タワマン実況勢):親方ァ! そのミストファンうちのベランダにも売ってくださぁい!』


ルミナのドローンが、涼しくて澄み切った空気の中で清々しい汗を流して働く男たちの姿を映し出し、同接350万人のコメント欄は今日も大絶賛の嵐であった。


***


数時間後。

「ふむ……地盤の硬化、確認ヨシ!」

ケントはガチガチに固まった強固な大地をスコップで叩きながら、マイルドな笑顔を浮かべた。

「これで完璧だ。どんな巨大施設を建てても、ミリ単位で沈むことはないぞ!」


平和で圧倒的なスケールの土木工事が着々と進む、アビス最下層。

だが、その楽しげな現場から少し離れた暗闇の通路に、音もなく潜む『複数の影』があった。


「……ターゲット確認。信じられない技術力と規模だ。我々の最新鋭のパワードスーツ部隊が取り込まれたのも頷ける」


それは、各国の首脳陣が派遣したCIA、MI6、公安からなる『最強のトップエージェント(スパイ)チーム』であった。

冷酷無比な暗殺のプロフェッショナルである彼らだが……その頭には『ネコミミ型のヘッドホン』、手には『安物の自撮りアクションカメラ』が握られていた。


「潜入プラン(ツーリスト)でいくぞ。昨日無傷で生還したあのススルの映像を分析した結果、奴らの警戒を解くには『不憫な底辺配信者』のスタイルを模倣するのが最適解ベストだ。……絶対にボロを出すなよ」


国家の誇る超高度なプロファイリング技術の盛大な無駄遣いである。

真面目な顔でポンコツな変装をキメた最強のスパイたちが今、次なる福利厚生の生贄となるべく、平和すぎる建設現場へと忍び寄っていた――!

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