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第65話:次世代型・全自動マッサージチェアの完成

「さてと。重機のメンテも終わったし、筋肉たちのために『疲労回復設備』を仕上げるか」


アビス最下層に完成した極楽リゾートの片隅。

ケントは魔導インパクトレンチを片手に、洗濯(分別)されてピカピカになったパワードスーツの残骸と向き合っていた。目指すのは、慣れない土木作業で疲労した兵士たちのための究極の福利厚生である。


ケントは風呂上がりのフルーツ牛乳を腰に当てて飲み干すと、ふにゃりとマイルドな笑顔を浮かべた。チートスキルによって、彼の頭の中にはすでに「パズルの完成図」が完璧に出来上がっている。


「いいか筋肉たち。マッサージチェアで一番重要なのは『揉む力』じゃない。『的確にツボを押さえる目』だ」


呑気に口笛を吹きながら、ケントがチェアの頭部へとカチッとハメ込んだのは、数千億円の開発費が投じられたパワードスーツの『敵のロックオン用カメラ』であった。


「こいつのピントをちょっとイジって、皮膚の奥の『肩こりの芯』だけをピンポイントで見つけ出すようにしたんだ」


「数千億円の対テロ用ロックオンカメラを、ただの『肩こり検知センサー』に使ったの!? 防衛省が知ったら血圧が上がって倒れるわよッ!」

湯上がりの東雲しののめかすみが、頭にタオルを乗せたまま的確なツッコミを入れる。


「さらに、背もたれには装甲の隙間にあったバネ(人工筋肉)を仕込んだ」

ケントはレンチで適当にネジを締め、張力を調整する。

「こいつをパズルみたいに組み合わせて、人間の親指と同じ『絶妙なナナメの角度』で動くようにしただけだ。現場の疲れを完璧にほぐす『親方のゴッドハンド揉み』だな。……さあ、誰から試す?」


「お、親方! ぜひ自分からッ!」

フォークリフトの運転で腰を張らせていた元・部隊長が勢いよく名乗りを上げ、ドカッとチェアに身を沈める。

ウィィィン……ピピッ。ロックオンカメラが隊長を舐めるようにスキャンし、背もたれのバネが動き出した直後。


「あ……あひぃぃ……っ」


開始わずか10秒。

国家の最強部隊を率いる誇り高き隊長は、だらしなく口を開けたアヘ顔となり、白目を剥いて完全に昇天(トランス状態)してしまった。

「う、うおおお! なんだあの隊長の幸せそうな顔は!」

「次は俺だ! どけ!」

それを皮切りに、我先にと座った屈強な兵士たちが、次々と「ふにゃぁぁ……」という間抜けな声と共にスライムのように液状化し、床に大量の「笑顔の死体」となって転がっていく。


「ちょっと! いくらなんでも大げさすぎるでしょ!」

気絶した筋肉たちの山を見て、霞が呆れたように腰に手を当てた。


「国家の誇りはどこにいったのよ! いくら親方のバカバカしいDIYでも、ただの椅子に座っただけで人間が腑抜けるわけ――んんっ!?」

ズカズカと歩み寄り、勢いよくチェアに座った霞の全身をカメラがスキャンする。


「あ、ちょっ……やだ、そこ……ひゃんっ♡ お、親方ぁ……ダメぇ……っ♡ そこ、ツボに入って……っ♡」

エリート研究員の威厳は1秒で消え去り、かつてない甘い嬌声を上げた霞は、だらしない顔でビクンビクンと痙攣し始めた。強がりからの、あまりにも美しすぎる即堕ちである。


「もう、霞さんまでだらしないですね〜。……えっ、そんなに気持ちいいんですか?」

その様子を特等席のビーズクッションから見ていたルミナが、興味本位でトコトコと近づいてきた。そして、霞と入れ替わるようにチェアへ腰を下ろす。


「私も最近、ダンジョン管理と配信疲れで肩が――ひやぁぁぁんッ!?♡ あ、ああっ、や、やめ……もっとぉ……おく、きくぅ……っ♡♡」

次の瞬間、同接300万人を誇る大人気VTuberの、絶対に公式配信には乗せてはいけない『限界突破のセンシティブな声』が、アビス最下層に響き渡った。


『!?!?!?!?』

『うおおおおおおおおお!!』

『ルミナちゃんの変な声キタァァァッ!!』

『放送事故wwww 運営仕事しろ(するな)!』

『この現場エッッッ』

『おっさんの全自動セクハラチェア恐るべし』

『泥水ススル:親方ァ! その椅子俺のタワマンにも一台売ってください! 1億円払います!!』

『スパチャ:アラブの石油王から10万ドル「至福の時をありがとう」』


地上に無事生還したススルからの実況スパチャも飛び交い、ルミナのドローンがだらしなくとろけきった美少女二人の姿を全世界へと垂れ流す。コメント欄はかつてないほどの熱狂と大歓喜の嵐で完全に崩壊(大荒れ)していた。


「ふむ、どうやら絶妙なナナメの角度は完璧だったようだな」

ケントはマイルドな笑顔で、次々と気絶していく労働者たちとポンコツ化したヒロインたちを見下ろした。

「女性陣の肩こりもしっかり取れたみたいで何よりだ」


***


アビス最下層が、圧倒的な福利厚生によって完全に腑抜けたスライムたちの海と化し、ネットの海が前代未聞の放送事故に沸き立っていた、まさにその頃。


――遥か上層、地上の霞ヶ関本部。

パワードスーツ部隊からの通信が途絶(※全員マッサージチェアで寝落ち)した事態を受け、各国の首脳陣は最悪の決断を下していた。


「もはや、正規軍の力ではあの最下層の『悪魔の防空兵器工場』は止められない!」

「ああ、我々の最終兵器が、一瞬にして音信不通になるとは……。こうなれば、非公式の裏の力を使うしかない。……各国の『トップエージェント』たちを招集しろ!」


最強のパワードスーツ部隊が「マッサージチェアでアヘ顔を晒して寝落ちしているだけ」とは夢にも思わない首脳陣たち。

アメリカのCIA、イギリスのMI6、そして日本の公安から選りすぐられた、冷酷無比な最強のスパイチーム。

暗殺と破壊のプロフェッショナルたちが今、人類の脅威たるテロリストを抹殺するため、闇に紛れてアビス最下層への緊急降下ミッションを開始しようとしていた――!

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