第3話 防音・断熱・魔力コーティング! 完璧なログハウスへの改築
「まずは骨組みの補強からだな」
手に入れた『暴風タイガーの剛骨』を手に取り、俺は作業を開始した。
【超速クラフト】の力で、巨大な骨は金槌で軽く叩くだけで、指定した長さの真っ直ぐな梁や柱へと形を変えていく。
既存のログハウスの木材の間に、この骨を筋交い(すじかい)として組み込んでいく。
カンッ、カンッ!
小気味よい音が響くたび、ログハウスの耐久値が跳ね上がっていくのが【構造把握】のスキルを通して視覚的に理解できた。
これで少々の地震や、大型魔獣の突進くらいではビクともしない強固なフレームが完成した。
「次は内装だ。これが一番の楽しみだったんだよな」
俺は『暴風タイガーの白銀毛皮』を広げた。
触れた瞬間、そのあまりのフワフワ感と、ほんのりと伝わってくる適度な温もりにため息が漏れる。
この最高級の毛皮を、特殊な加工で薄くスライスし、壁の内部に「断熱材」および「防音材」として敷き詰めていく。
さらに、床には二重に重ねて極厚のカーペットとして敷き、余った毛皮で特大のクッションと掛け布団までクラフトしてしまった。
「よし、仕上げだ!」
俺は『風の特大魔石』を、ログハウスの天井裏にあたるスペースに設置した。
【超速クラフト】で魔石のエネルギー回路を木材に這わせるようにコーティングしていく。
俺のイメージ通りに魔力が循環し、魔石が淡いエメラルドグリーンの光を放ち始めた。
スゥゥゥ……。
その瞬間、室内の空気が一変した。
ダンジョン特有の硫黄の匂いや、ねっとりとした湿気が嘘のように消え去り、まるで初夏の高原のような爽やかな空気が部屋中を満たしたのだ。
『風の特大魔石』を動力源とした、半永久的に稼働する「全自動空調&空気清浄システム」の完成である。
——作業開始からわずか1時間。
「……できた」
外観こそ、周囲の禍々しい景色から浮きまくっているウッディでオシャレなログハウスだが、その中身は常軌を逸していた。
外の魔物の咆哮は一切聞こえない『完全防音』。
室温は常に22度、湿度は50%に保たれる『完璧な空調』。
そして床には、雲の上を歩いているかのような『フカフカの白銀カーペット』。
人類の生存限界点であるダンジョン最下層に、都内の超高級ホテルのスイートルームすら凌駕する「極楽」が爆誕してしまったのだ。
俺は靴を脱いで部屋に上がり、暴風タイガーの毛皮で作ったベッドへダイブした。
「っ…………最高だぁ…………」
全身が柔らかい毛皮に包み込まれ、長年のデスクワークでガチガチに凝り固まっていた腰と肩の痛みが、嘘のように溶けていく。
ブラック企業では、ベッドで寝る時間すらもったいなくて、常にパイプ椅子の上で仮眠をとっていた。
こんなに心地よい空間で、誰にも邪魔されずに眠れるなんて。
「……おやすみ、世界」
納期もない。上司の怒声もない。
ただ心地よい静寂と、適温の空気だけがある。
俺は幸福感に包まれながら、泥のように深い、極上の眠りへと落ちていった。
この数日後、この俺の「秘密基地」に、とんでもない迷い猫が落ちてきて、全世界を巻き込む大騒動に発展することなど、今の俺は知る由もなかった。




