第136話:激怒の岩盤竜と、極限の地盤改良
「ひぃぃっ!? な、なんかとんでもないサイズのモンスターが出てきましたぁーっ!」
ルミナがドローンカメラを抱え、マリアの後ろに隠れて絶叫する。
セリスも青ざめ、リーゼロッテは即座に警戒態勢に入った。
「ふん。アビスの最下層を支える守護竜か。地盤の崩壊に反応して目覚めたようだな」
姉コアが、ケントに被らされた安全ヘルメットを片手で押さえながら、ふんぞり返る。
絶望的な巨大ボスの登場。
だが。
「……おおっ」
ケントの瞳は、これまでにないほどキラキラと輝いていた。
ケントは、暴れ狂う岩盤竜の巨体をマジマジと観察する。
(おいおい、よく見たら背中の岩盤(筋肉)がガチガチに凝り固まってるぞ。アビスの重圧を長年支え続けて、姿勢が悪くなったんだな。痛くて暴れてるだけの、ただの可哀想な職人じゃないか)
「ちょっとごめんよ。危ないところだけ削らせてもらうね」
ケントはマイルドな笑顔のまま、岩盤竜の足元へスッと歩み寄る。
そして、振り下ろされた巨大な尻尾の岩塊に向かって、愛用の『金槌』を優しく振り抜いた。
コンッ……。
《『激怒の岩盤装甲』を『超高密度・S級砕石(基礎材)』へ変換・取得しました》
「ヨシ。最高の基礎材が手に入ったぞ」
ケントは即座に超速クラフトを発動。
手に入れたばかりのS級砕石と、これまでに解体した魔力鋼を組み合わせ、巨大な『振動ローラー(重機)』を一瞬で組み上げた。
バチバチバチッ!!
黄色い塗装が眩しい、重さ数十トンの鉄の車輪を持つロードローラー。
ケントはひらりと運転席に飛び乗り、重機のエンジンを轟かせた。
「おーい、君! だいぶ肩(地盤)が凝ってるみたいだから、ちょっと強めに押し固める(揉む)よ!」
ゴゴゴゴゴゴォォォッ!!
ケントは巨大な岩盤竜の背中(岩の甲殻)に直接乗り上げ、振動ローラーのスイッチを全開にした。
ドドドドドドドッ!!
凄まじい振動が、ガチガチに凝り固まっていた竜の岩盤(筋肉)を奥深くまでほぐしていく。
「ギャオ……ォ……?」
怒り狂っていた岩盤竜の動きが、ピタリと止まった。
凶悪だった瞳孔がトロンと緩み、巨大な口からだらしない吐息が漏れる。
「蓄積した岩盤の凝りが、芯からほぐれていくぅぅ……そこ、きもちいい……っ」
『岩盤竜が整体されてて草』
『重機マッサージww』
『圧倒的な質量の暴力(癒やし)』
『親方の前では絶望の守護竜もただの肩こり患者』
ゴロゴロと喉を鳴らし、岩盤竜がアビスの底にペターッと平伏する。
その背中は、見事なまでに真っ平らで強固な『極上の地盤』へと変貌していた。
「ああ、お疲れ様。最高のキャンバス(地盤)が仕上がったね」
ケントは振動ローラーから飛び降り、マイルドな笑顔で平伏する竜の頭をポンポンと撫でた。
そして、待機させていた巨大な『コンクリートミキサー車』へと乗り込み、力強く起動スイッチを押し込む。
「ヨシ、地盤は完璧だ! 続けてコンクリートを流し込み、大黒柱の組み立てに入るぞ!」
『岩盤竜マッサージからの基礎工事ww』
『息を吸うように工程が進んでいく』
『手際が良すぎるだろww』
絶望の守護竜を重機マッサージで極上の「ベタ基礎」へと変え、見事な転圧作業を完了させた一級建築士。
地盤沈下の心配がなくなった最高のキャンバスに、いよいよアビスを支える「超巨大な心柱」が打ち立てられる。




