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第134話:アビス大改修と、『大黒柱(インフラタワー)』プロジェクト

ピピピピピピピピピピピッ!!!


社長室コントロールルームに、けたたましい警告音が鳴り響き続けている。


「……くっ。自爆プログラム自体は先ほど停止した。だが、基盤の崩壊はすでに物理的な臨界点を越えている」


崩落していく空間の中央。

パンケーキの皿を抱えた姉コアが、悔しそうに頭上の暗闇を睨みつけた。


「私がアビスの地盤に与えたダメージは深刻だ。もはや、この空間がペチャンコに潰れるのは時間の問題だぞ」


威厳を保とうとしているが、その声には微かな焦りが混じっていた。


直後、ジャッキの限界を知らせる破裂音と共に、天井から数十万トンの巨大な岩盤がドゴォォォォンッ!と崩れ落ちてきた。


「ひぃぃっ! け、ケントさん、生き埋めになっちゃいますぅーっ!」


ルミナが頭を抱えてしゃがみ込む。


マリアもセリスも、迫り来る死の質量に息を呑んだ。


だが。


「……困ったな」


ケントはマイルドな笑顔を崩さず、おや、と困惑したように眉を下げた。


ケントは嘆息する代わりに愛用の『金槌』を抜き放つ。


そして、頭上から降り注ぐ数十トンの岩盤に向かって、優しく金槌を振り抜いた。


コンッ……。


《『絶望の崩落岩盤』を『超軽量・S級チタン合金フレーム(特大)』へ変換・取得しました》


「ヨシ。とりあえず仮枠の補強材は確保したぞ」


取得したばかりのチタンフレームを天井に叩き込み、ジャッキと組み合わせて一時的に崩落を遅らせる。


『岩盤をハンマーで砕いてチタンにするなww』

『世界の終わりを仮枠で耐え凌ぐ男』


「親方。局所的な補強では限界があります。アビス全体の総重量を支えるには、抜本的な構造改革が必要です」


崩れゆく社長室の中で、霞が淡々と告げる。


「ああ、わかってる。巨大な地下空間の崩落を防ぐには、中央を貫く『大黒柱(心柱)』を立てるしかない」


ケントはインカムのスイッチを入れ、全チャンネルに通信を開いた。


「全作業員(従業員)に告ぐ。これより、アビス全体を支える『大黒柱(世界樹型インフラタワー)』の建設プロジェクトを開始する!」


号令と共に、インベントリから『特製スタミナ極厚カツ丼』と『キンキンに冷えたエナジードリンク』を大量にクラフトする。


それを、コントロールルームにいる姉妹コアや、外で待機している社畜魔物たち、過労竜の前にドカンと並べた。


「腹が減っては現場は回らない。これを食って、全員でこの現場アビスを立て直すぞ! 仕事が終わったら、極上の天然温泉とBBQの食べ放題が待ってるからな!」


分厚いカツを卵で綴じた、暴力的なまでの出汁と脂の匂い。


姉コアは腕を組み、鋭い視線でドンブリを睨みつけた。


「ふん。さっき甘いものを貰ったばかりだ。精神生命体たるこの私が、そのような脂っこい下等生物の労働食など……っ」


姉コアが言葉を詰まらせた。


ケントがマイルドな笑顔で、極上の出汁が染み込んだカツをスプーンに乗せ、彼女の口元へ優しく差し出していたのだ。


暴力的なまでの食欲をそそる香りに抗えず、姉コアは思わずパクッと口を開いてしまう。


サクッ、ジュワァァァッ!


「……ッ!?」


姉コアの瞳孔がカッ、と限界まで見開かれた。

極上の出汁を吸ったカツの旨味と、濃厚な卵の甘さが、容赦なく脳細胞をぶん殴る。


「……ふにゃぁぁっ♡ 豚肉のビタミンと糖質が、限界の体に染み渡るぅぅ……っ」


冷酷な支配者の仮面が、一瞬で溶け落ちる。


だらしない声を出してドンブリを抱え込む姉コア。


だが、彼女はハッとして慌てて元の高圧的な表情を取り繕った。


「こ、これはただのカロリー摂取だ! 貴様らの現場仕事に付き合ってやるための、必要なエネルギー補給に過ぎないからな!」


『威厳保とうとしてるけど完全に落ちてるww』

『ふにゃぁぁっ♡からのツンデレ草』

『姉コアちゃん、チョロすぎるだろww』


「うおおおおっ! 親方様のために、俺たちは働くぞぉぉっ!」


「温泉! 温泉!」


外からは、活力を完全に取り戻した漆黒の過労竜や、魔物たちの凄まじい雄叫びが轟く。


かつての敵がすべて味方(従業員)となり、一つの巨大なプロジェクトに向かって団結した瞬間だった。


「リーゼロッテ、 アヴァロンの全動力を建築モードに回してくれるかい」


「「はいっ! 親方様!」」


「マリア、セリス! 資材の搬入ルートの確保を頼むよ」


「お任せください、ケント様♡」


「わたしゅ、親方様のために頑張りましゅぅ!」


次々と指示を飛ばすケント。


崩落のタイムリミットが迫る中、彼らの目にもはや絶望の色はない。


あるのは、巨大な建造物を前にした職人たちの熱気だけだ。


ケントはインベントリから、真新しい『安全ヘルメット』を次々と取り出し、全員に手渡した。


最後に、ツンとそっぽを向いている姉コアの頭にも、小さなヘルメットをポスッと乗せる。


「な、何をする! 私にこんな不格好なものを被らせる気か!」


「現場に出るならヘルメットは必須だ。安全第一だからね」


「……ふん。このアビスを勝手に弄り回すというなら、地権者として、視察(監督)くらいはしてやらんこともない」


顔を真っ赤にしながらも、姉コアはヘルメットの顎紐をカチャリと締めた。


「さあ、過去最大のDIYの始まりだ! 全員、怪我のないように!」


ケントの号令に。


マリア、霞、ルミナ、セリス、双子のコア、そして外にいる過労竜までもがヘルメットを被り、声を揃えて叫んだ!


「「「ご安全に!!」」」


『まさかのラスボスまでヘルメット着用ww』

『世界の終わりにご安全に!!』

『現場の団結力ヤバすぎだろww』


崩落するアビスの底で、残業食のカツ丼によってかつての敵と味方が一つになった。

全員がヘルメットを被り、世界を救うための超巨大DIYプロジェクト(現場作業)が、今まさに幕を開ける――!

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