第124話:ダンジョン・コアの帰還
ズズン……ッ。
アビスの極楽リゾートでBBQを楽しんでいた、山のように巨大な『古代竜』が。
ケントの肩の上でふんぞり返っている『コア公』と、その後ろに控えるセリスたちを見た瞬間、持っていた肉をボトリと落として顔色を変えた。
「おおっ……我が絶対の主たるダンジョン・コア様! ご無事の帰還、この老竜めは歓喜の極みにございますぞぉぉっ! ……はッ!? な、なんと、その後ろに控えておられるのは天界の神(管理者)!? もしや出張(天界)先で神すらも屈服させ、新たな配下として連れ帰られたと申すかァァァッ!?」
ズザザーッ!と見事な土下座を決め、感涙にむせぶ古代竜。
「うむ。苦しゅうない、面を上げよトカゲ」
コア公はケントの肩の上でふんぞり返り、背後に強大な『オーラ』を纏って尊大に見下ろした。
「吾輩たる高位の精神生命体の威光があれば、神すらも平伏して当然なのじゃ! ふははははっ!」
絶対的なダンジョンの支配者としての威厳。
アビス全体が、コア公から放たれる最恐のプレッシャーに震え上がる。
『ええええ!? コア公って古代竜の絶対的な主だったの!?』
『ずっとただの「肩に乗ってる精霊ペット」だと思ってたwww』
『ヤバい、マスコットが急にラスボスのオーラ出してきたぞ!』
『神を従えるダンジョンの支配者……!?』
配信のコメント欄が、忘れていたコア公の真の正体に一斉にどよめく。
だが。
「はいはい、コア公も出張お疲れ様。留守番していた古代竜くんとも仲良くね。はい、お土産の極上BBQだ」
ケントはマイルドな笑顔を崩さず、香ばしく焼き上がった『特製・黄金ダレの骨付き肉』をコア公の口へと放り込んだ。
「むぐっ!? ……ッ!?!? な、なんじゃこれはぁぁぁっ!?」
コア公の瞳孔がカッ、と見開かれる。
背後の恐ろしいドラゴンオーラが霧散し、代わりに後光のような輝きが差し込んだ。
「外は香ばしくパリッと! なのに中はトロけるように濃厚でジューシー! 魔獣特有の泥臭さは香木の煙で完全に相殺され、むしろ旨味成分(アミノ酸)とメイラード反応による香ばしさが限界まで引き上げられておる……!」
大御所グルメレポーター顔負けの、完璧すぎる長台詞(食レポ)。
そして次の瞬間。
「……ふにゃぁぁぁっ♡ 脳に良質な脂が……しあわせなのじゃぁぁ……」
威厳たっぷりのダンジョン管理者は、完全にだらしない声を出して、ケントの首筋にスリスリと頬擦りし始めた。
それを見た古代竜は、呆れるどころか両手を組み合わせて天を仰いだ。
「おおっ……我が主よ! 本日も親方様の極上肉でだらしなくとろけるお姿、最高に愛らしゅうございますぞぉぉっ♡」
「はわわ……あの恐ろしいオーラを放っていた方が、お肉一つで骨抜きに……しかも配下の竜はそれを喜んでいる……親方様の現場、恐るべしですぅ……」
限界オタクと化して悶える古代竜と、生態系のバグに戦慄するセリス。
『威厳あるラスボスが、おっさんの極上BBQで秒でアヘ顔になってる事実ww』
『古代竜、ただの厄介オタク(強火担)で草』
『精霊がアミノ酸とかメイラード反応とか言うなwww』
『おっさん、このヤバい生態系を完全に支配してて草』
「親方。コア公が可愛いからといって、高脂質・高カロリーなおやつの与えすぎには注意してください」
背後から、氷のように淡々とした声が響いた。
振り返ると、アビスで待機していた霞が、手元のタブレット端末(カロリー計算表)をスワイプしながら呆れたような視線を向けている。
「霞。留守番ご苦労さま。でも、現場の士気を保つには、やっぱり美味しい食事が一番だからね。さあ、みんなでBBQの続きを楽しもうか」
最恐のダンジョン・コアすらも極上飯で手懐け、神様も暗殺者も強火オタクの巨大竜も、すべてを等しく「現場の従業員」として労う一級建築士。
かくして、ケント建設による天界への出張と新たな人材確保は、大波乱の末に大成功を収めるのだった――!




