第122話:崩れる空と、超速『宇宙エレベーター』のクラフト
バリバリバリッ……!
頭上の空が、不気味な音を立ててひび割れていく。
赤いエラー光が漏れ出し、機械都市の空間そのものがボロボロと剥がれ落ちてきた。
「ひぃぃっ! お、空の天井が落ちてきますぅ!」
ルミナが頭を抱えてしゃがみ込む。
リーゼロッテも震える手でアヴァロンの手すりを強く握りしめた。
ケントはインベントリから仮設休憩所を組んだ際に余った『断熱パネルの端材』と『廃材のシリンダー』を取り出し、空中に浮かべた。
そして、その急所に向かって優しく金槌を振り下ろす。
コンッ……。
絶妙な力加減による優しい一撃。
その瞬間、端材がパズルのように組み換わり、洗練されたフォルムの特殊工具へと姿を変えた。
《『断熱パネルの端材』を『特大コーキングガン(S級工具)』へ変換・構築しました》
「ちょっと隙間を埋めるからね」
ケントは出来立てのコーキングガンを手に取り、ひび割れた空間の裂け目にノズルを押し当てた。
トリガーを引くと、分厚い特殊パテがニュルリと注入されていく。
ヘラでササッと表面をならすと、世界の崩壊が嘘のようにピタリと止まった。
「ヨシ、応急処置完了。でも根本的に直すには、本社の屋上(空の上)に直接行くしかないな」
上空からバラバラと降り注ぐ、世界を削り取る巨大な『虚無のデブリ』。
ケントは愛用の金槌を構え、降り注ぐ絶望の塊の『急所』を見極めて優しく振り抜いた。
コンッ……。
《『世界の虚無デブリ(消去データ)』を『超軽量・高強度くさび付きチタン支柱(S級足場材)』へ変換・取得しました》
「よしよし、いい建材が手に入った。これなら上まで一気に組めるぞ」
ケントはマイルドな笑顔を浮かべると、取得したばかりのチタン支柱を地面に突き立て、次々とパーツをジョイントしていった。
(高所作業には『くさび型の足場』が最適だ。複雑なボルト締めは不要。ハンマー1本でくさびを叩き込むだけで、圧倒的なスピードで強固な足場が組み上がっていくからね)
カンッ! カンッ! カンッ!!
小気味よい金属音が、崩壊する世界に響き渡る。
ケントの手元が残像を生み、天へと続く極太の『宇宙エレベーター(足場)』が凄まじい速度で組み上がっていった。
『ええええええ!?』
『足場組んで宇宙に行こうとしてるww』
『神の領域に殴り込みwww』
『おっさんのハンマー捌き、神速すぎて草』
完成した極太の足場レールに、変形した巨大ロボ『アヴァロン』の腕と脚部をガッチリと噛み合わせる。
背部のブースター(温泉のボイラー圧)と、巨大な油圧シリンダーが唸りを上げた。
ゴゴゴゴゴゴッ!!
アヴァロンが足場を蹴り上げ、猛スピードで空へと垂直に駆け昇っていく。
「ひゃあああっ!? 飛んでる、空を飛んでますぅーっ!」
「うむ! このエレベーター、最高にエキサイティングなのじゃ!」
G(重力)に悲鳴を上げるルミナたち。
しかし、アヴァロン内部の極上ウッドデッキは完全に免震されていた。
『――エ、エラー。未確認オブジェクトの接近を検知。バカな、神の領域へ物理的な足場を作って昇ってくるだと!?』
空の彼方から、パニックに陥った機械都市の管理者の合成音声が響き渡る。
魔法による転移や飛翔ではない。
純粋な『建築(足場組み)』によって神の領域へ到達しようとする狂気のDIY無双。
「さてと、そろそろ本社のドアが見えてくる頃かな」
ケントがマイルドな笑顔で上空を見上げる。
大気圏を突破したアヴァロンの目の前に、星空に浮かぶ巨大な鋼鉄の扉――『神の領域(サーバー室)』の入り口が、その威圧的な姿を現した!
『うわあああ! ガチで神様の部屋に着いたww』
『足場組んで宇宙到達は草』
『親方、ついに本社へ直接カチコミ!』
『神の領域で極上のクレーム対応!?』
崩壊する世界を「足場」にして、ついに天界へと到達した一級建築士。
完全ホワイトな現場監督による、悪徳業者(神々)への「直接指導(クレーム対応)」が、いよいよ幕を開ける――!




