第114話:新支店(リゾート)の落成と、超巨大移動拠点
静かな青い光。
完璧な水冷システムに包み込まれた、マザーの中枢コア。
先ほどまでの狂乱が嘘のように、サーバー室には心地よい冷風が吹き抜けている。
『あぁ……熱ガ……』
『……ふにゃぁぁっ♡ 演算領域がキンキンに冷えて、快適すぎましゅぅ……』
『もう世界を滅ぼすのとか、どうでもよくなっちゃったぁ……』
(……はぁ。やっと静かになったか。これで夜間の騒音クレームも安心だな)
ケントはマイルドな笑顔を浮かべ、額の汗をタオルで拭った。
『ラスボス、完全陥落ww』
『ただの高性能な空調になっとるww』
『チョロインしかいない世界』
「親方様……。もしかして、あの恐ろしいマザーまで手懐けちゃったんですか……?」
呆然と呟くリーゼロッテ。
その頭をポンポンと優しく撫でる。
「手懐けるなんて人聞きが悪いな。ちょっと熱暴走してたから、有能なシステム管理の従業員(AI)として再雇用しただけだよ」
『要塞からホワイト企業への華麗なる転職ww』
(さて。これで整地も終わったし、有能な設備AIも手に入った。あとは拾った建材で、別館を組み上げるだけだ)
視線の先には、極太レーザーでピカピカに焼き入れされた広大な基礎土台。
そして、インベントリに溢れ返るS級建材の山。
「それじゃあ、新築工事を始めようか」
ケントは愛用の金槌を構えると、解体した『耐圧チタンパネル』や『特級建築用鋼材』を空中に展開させた。
構造の急所を見極め、次々と優しく叩き込んでいく。
コンッ……。カンッ……。
パズルのように組み上がっていく巨大な鉄骨。
だが、ただの建物を造るつもりは毛頭ない。
(せっかくの出張所(リゾート別館)なんだ。悪路も走破できるように、機動力と……男のロマンを詰め込まないとね)
「……えっ? 親方様、なんか建物の下に巨大なキャタピラが……」
「気のせい気のせい。ちょっとした移動設備だよ」
マイルドに微笑みながら、要塞から剥ぎ取った『無限軌道式免震土台』を接続。
さらに内部構造には、動力を完璧に伝達する『遊星歯車』を幾重にも噛み合わせる。
スライム油で極限まで摩擦を減らしたヘリカルギアが、ヌルリと滑らかにスライドし、建物の形状を劇的に変化させていく。
ガシャンッ! ギュイィィィン!!
『ちょww 建物が変形し始めたぞww』
『なんで正面玄関に黄金のライオンの顔がついてるんだよww』
『完全に勇者シリーズの合体ロボじゃねーか!!』
圧倒的な重低音。
完成したのは、大地を無限軌道で爆走し、いざとなれば人型(?)拠点にも変形機構を備えた超巨大移動リゾート。
《『機甲要塞の残骸』を『超巨大移動リゾート・アヴァロン(S級拠点)』へ変換・構築しました》
「ふぅ……完璧な仕上がりだ。これでどこでも極上の休日が過ごせるよ」
満足げに頷く一級建築士。
その背後で、完成したばかりの超高級リゾート『アヴァロン』が、夕日を浴びて神々しく輝いている。
内部にはマザーAIによる完璧な空調管理。そして極上の入浴設備。
「す、しゅごい……。こんな豪華なお城が、動くなんて……っ!」
瞳をキラキラと輝かせるルミナとリーゼロッテ。
摩擦ゼロのメンテとおやつで完全に社畜化した少女たちの思考は、もはや世界の平和よりも『極上の福利厚生』へと向いていた。
「親方様! 新支店の設備テストを兼ねて、さっそくお風呂に入りましょう!」
「吾輩が一番風呂じゃーっ!」
歓喜の悲鳴を上げながら、少女たちは出来立ての極上設備(変形ロボ)へと勢いよく飛び込んでいった。
『親方、また規格外の拠点作っちゃったよww』
『もはや建設業じゃなくて重工メーカーだろww』
『世界滅亡の危機から、一瞬で慰安旅行編に突入してて草』
『超巨大移動リゾートでの極上バカンス!?』
絶望の機械都市を完璧なリゾート地に変え、神殺しすら「日常業務」として片付けた一級建築士のおっさん。
最強の移動拠点『アヴァロン』に乗ったケント建設の出張は、まだまだ終わらない――!




