第110話:滅びの極太レーザーと、基礎工事の自動溶接
ゴオォォォォォォォォッ!!!
視界を真っ白に染め上げる、圧倒的な熱線。
狂える機甲要塞から放たれた『滅びの極太レーザー』が、ケントたちのくつろぐパラソルへと迫り来る。
「いやあああああっ!?」
「親方様ぁぁっ!」
ルミナとリーゼロッテが抱き合って絶叫する。
ルミナとリーゼロッテが絶望の悲鳴をあげる中、ケントはせっかく考えた計画に支障が出ないかだけを心配していた。
(昨日、新築リゾート別館のイメージをまとめたばかりで、まだ整地も基礎工事もやってないじゃないか。手作業で更地にするなんて、残業確定の重労働だぞ)
ケントの目に、青いワイヤーフレームの『設計図』が浮かび上がる。
極太レーザーの照射角、熱量、そして理想的な基礎土台に必要な焼き入れの範囲。
すべてが瞬時に計算され、ひとつの「図面」として展開された。
ケントは愛用のツールボックスから、ナノマシンで磨き上げた巨大な『鏡面仕上げのステンレス鋼』を取り出した。
「ケントさん!? なにする気ですか!」
「ちょうど整地と基礎の焼き入れをしようと思ってたんだ。業者さんが巨大なバーナーを持ってきてくれたから、ありがたく使わせてもらおうか」
ケントはマイルドな笑顔を浮かべ、レーザーの射線上にステンレスの鏡面を配置した。
取り出した金槌で、鏡面を支えるジョイントを軽く叩き、反射角度をミリ単位で調整する。
コンッ……。
絶妙な力加減による優しい一撃。
直後、パラソルを飲み込もうとしていた極太レーザーが、ピカピカの鏡面に直撃した。
ズギュウゥゥゥゥンッ!!!
『え!?』
『おっさん、ビームを反射させた!?』
『どこに向けてんの!?』
ケントによって完全に反射・収束されたレーザーは、彼がイメージしていた『リゾート(別館)の建設予定地』へと正確に誘導されていく。
超高熱のエネルギーが、周囲の鉄屑やヘドロを一瞬にして蒸発させ、大地をガラスのように滑らかで強固なセラミック質の基礎へと焼き固めていった。
ジュワァァァァァァッ……!!
レーザーの照射が終わり、熱と光が収まると、そこには隙間一つない、ピカピカに焼き入れされた『完璧な基礎土台』が広大な面積で完成していた。
《『滅びのレーザーエネルギー』を『広域の整地および基礎焼き入れ(S級施工)』へ変換・適用しました》
「ふぅ……手作業だと面倒な整地工事が、業者のおかげで一瞬で終わったよ」
ケントはタオルで手を拭いながら、ホクホク顔で頷いた。
リーゼロッテは、完成したばかりの巨大な基礎土台と、沈黙する要塞を交互に見比べて、あんぐりと口を開けている。
「都市を滅ぼす最大攻撃が……ただの、整地用バーナーに……?」
『また敵の必殺技をタダ働きさせてますね。下請け法違反ですよ』
インカム越しに、霞の呆れた声が響く。
「心配ないよ、霞。ちゃんと有効活用したからね。ほら、みんなも触ってみて。基礎の余熱で、極上の床暖房になってるから」
ケントはマイルドに微笑み、ホカホカと湯気を立てる滑らかな土台の上に、フカフカの休憩用クッションを敷き詰めた。
「えっ? あっ……本当です! じんわり温かくて……」
「うむ! この床、信じられないくらいポカポカで気持ちいいのじゃ!」
滅びのレーザーを床暖房に変えられ、完璧な温度管理に包まれた少女たち。
彼女たちは一瞬にして、ケント建設の最新設備(床暖房)の虜となり、だらしない声を上げてクッションの上で溶けていた。
『またポンコツヒロインが溶けてるww』
『レーザーをバーナー扱いww』
『敵の最大攻撃で床暖房作るとか頭おかしい(褒め言葉)』
配信のコメント欄が怒涛の勢いで爆発する中。
極太レーザーを放った狂える機甲要塞は、自身の最大攻撃を「便利な無料サービス」として使われたショックからか、蒸気を噴くことも忘れて完全に沈黙していた。
「さてと」
ケントは、床暖房でとろける少女たちに温かいお茶を差し出してから、ゆっくりと立ち上がった。
「整地も終わったし、次は配達員(要塞)の荷下ろし(解体)を手伝ってやるか」
一級建築士のおっさんは、インベントリから大量の建材を取り出し、愛用の金槌と優しく組み合わせていく。
マイルドな笑顔のまま、都市サイズの要塞へと一人で歩み出した!
『おっさん、そのまま解体工事(ボス戦)に行く気か!?』
『相手は都市サイズの要塞だぞww金槌一本でどうすんの!?』
『超巨大要塞の解体新書キタコレ!!』
最大攻撃を無効化され沈黙する狂える機甲要塞を前に、圧倒的ホワイトな現場監督の「優しい解体工事」が今、始まろうとしていた――!




