表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/105

第103話:記憶の真実と、カスタマーサポート(元・神々)

(……はぁ)


ケントは、淹れたてのコーヒーが入ったチタンマグを片手に、小さくため息をついた。

せっかく完璧なオーバーホールで摩擦ゼロの快楽を提供してやったというのに。


「私が失った記憶……。機将ザガンと刺し違えてでも、私はこの世界を……!」


機械令嬢のリーゼロッテがシーツを強く握りしめ、今にも泣き出しそうな瞳で俯いている。

美少女のシリアスな横顔。


だが、ケントの脳内は完全に「現場監督」のそれになっていた。


(休憩時間に、現場に重い空気を持ち込まれるのが一番困るんだよなぁ。飯が不味くなるじゃないか)


ケントはマグカップをコトリとテーブルに置いた。


「まあ、あんまり思い詰めないほうがいいよ。仕様書が分からないなら、メーカーに直接問い合わせればいいだけだ」


「……え? メーカー、ですか?」


きょとんとするリーゼロッテをよそに、ケントは腰のインカムのスイッチを入れた。


「霞、ちょっといいかな。地下にいるWi-Fiルーター(元・神々)たちに、この世界の仕様について聞いてみてくれないか。リーゼロッテって子の設定なんだけど」


『了解です、親方。少々お待ちを……おいこら元神、ベーコンばっかり食ってないで答えろ』


インカムの向こうから、ドタバタとした騒音と、情けない悲鳴が聞こえてくる。


『お待たせしました。ええと……あー。その子、管理者が人類社会に溶け込ませるために作った『ダミーデータ』だそうです』


「ダミー?」


『はい。あたかも初めからそこに居たかのように忍ばせてただけ、らしいです。機将との戦闘で失った記憶自体、適当に打ち込んだ『偽の記憶(初期設定)』だって言ってました』


「……」

「…………え?」


プレハブ内に、静寂が落ちた。


『ファーwww』

『悲劇のヒロイン(物理)終了のお知らせ』

『神々の設定ガバガバすぎるだろww』


ルミナの配信画面が、怒涛の草で埋め尽くされていく。

リーゼロッテは、あんぐりと口を開けたままフリーズしていた。


「そ、それじゃあ……私が背負っていた、世界を救う悲壮な使命とか、重い過去は……」


「全部、運営のやっつけ仕事だったってことだね。いやぁ、不良品じゃなくてよかったよ」


ケントがホッと胸を撫で下ろしていると、リーゼロッテの肩が小刻みに震え始めた。

絶望で泣き出すか?

そう思った次の瞬間。


「えっ……じゃあ私、もう無理して世界を救う設定とか守らなくていいんですか!?」


リーゼロッテの顔から、シリアスな影が綺麗さっぱり吹き飛んだ。


「ヤッター!! じゃあ、ずっとこのフカフカのベッドでゴロゴロしててもいいんですね!?」


「ふ、ふんっ。人間風情が作ったにしては、ここの居住性は悪くないからな。新入り、吾輩がベッドの正しい使い方を教えてやるのじゃ!」


「はいっ、先輩!」


悲劇の令嬢は数秒でポンコツ化し、コア公と一緒になってクッションの海へとダイブした。

「ふにゃぁぁっ♡」というだらしない声が、プレハブ内に響き渡る。


(ヨシ、現場のメンタルヘルス対策、完了!)


ケントは満足げに頷き、プレハブの扉を開けた。

外は相変わらずの酸性雨だが、足元に手頃な金属塊が転がっている。


「おっ、いい部材が落ちてるじゃないか。ちょっと基礎を補強しておくか」


ケントは愛用の金槌を取り出し、その金属塊を軽く叩いた。


ガンッ!


《『腐食した機兵の重装甲』を『耐酸性コーティングパネル(A級建材)』へ変換・取得しました》


無機質な声と共に、極上の建材がインベントリへ吸い込まれる。

これで、さらに快適な環境が作れそうだ。


「ヨシ、安全確認!」


ケントは現場での指差し確認を済ませ、プレハブに戻ろうとした。

その時だった。


ズドォォォォン……ッ!!


突如、機械都市全体を揺るがすような大地震が起きた。

プレハブの防音ガラス越しでもビリビリと伝わってくるほどの、圧倒的な重低音。


「ひぃっ!? な、なんですか今の音!?」


ルミナが顔面を蒼白にして叫ぶ。

酸性雨の向こう側。鉛色の分厚い雲を切り裂くようにして、全高30メートルはあろうかという巨大な影が姿を現した。


『うわああああ!?』

『ボス降臨キタコレ!!』

『デカすぎるだろ!!』


無数の砲身を備え、全身から黒い蒸気を噴き上げる巨大兵器。

因縁の敵、『暴走機将ザガン』が、赤く光るカメラアイをこちらへと向けて咆哮を上げた!

「続きが気になる!」「おっさん頑張れ!」と思っていただけましたら、

ぜひブックマークの追加と、下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、更新の大きな活力になります!

(後から変更して頂いても嬉しいです!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ