表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼たちの聖域 〜最凶ヤンキー校に舞い降りた天使〜  作者: あやん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/49

天使の枕元、上書きされる聖夜

1. 穏やかなイブの夜

獅子堂家の巨大な居間。天井まで届くような立派なツリーを、ゆうは少し不思議そうに見上げていた。

「……ししどうくん。クリスマスって、こんなにキラキラしてるんだね。……なんだか、見てるだけで胸がいっぱいになるよ」


「……ゆう。お前は、サンタに何をお願いするんだ?」

獅子堂の問いに、ゆうは困ったように、けれどふんわりと微笑んだ。


「……ううん、お願いなんて。僕、サンタさんに会ったことないし……きっと、僕のところまでは道が難しくて、来られないんだと思うんだ。……でも、今はこうして、みんなとケーキを食べられるだけで十分だよ。とっても幸せ」


「……道が、難しいだと?」

獅子堂の隣で、阿久津が食べていたチキンを落としそうになり、羽柴が持っていたティーカップを静かに、けれどミシリと音を立てて置いた。

ゆうは「あ、変なこと言っちゃったかな?」と小首を傾げるが、三人の心は、この瞬間、鋼鉄の決意で固まっていた。


2. 「不法侵入サンタ」作戦

ゆうが安心しきって眠りについた深夜。

獅子堂の屋敷の廊下を、忍び足で進む三つの影があった。


「……いいかっすか。ゆうくんは『道が難しい』なんて言ってたんすよ……! 地図なんて関係ねぇ、俺たちがここを『世界一見つけやすい場所』にしてやるんすよ!」

阿久津が鼻をすすり、涙で視界を滲ませながら、抱えきれないほどのプレゼントを抱えている。


「……ええ。サンタが道に迷ったというのなら、我々が道標ギフトを敷き詰めるまでです。……これだけの数があれば、空からも見えるでしょう」

羽柴が、ゆうの部屋の前に音を立てないよう厚手の絨毯を敷き詰め、完璧な隠密行動で準備を進める。


「……。……やるぞ。ゆうを起こすな。……だが、朝起きた時に、自分の目を疑うほどの光景を見せてやるんだ」

獅子堂の号令で、三人は「音を立てないプロ」として、ゆうの寝室へ潜入した。


3. 溢れ出す「初めて」の輝き

翌朝。窓から差し込む冬の柔らかな光で、ゆうは目を覚ました。

「……ふわぁ、……よく寝た……。……え?」


目を開けた瞬間、視界が「赤と金色」で埋め尽くされていた。

枕元には、抱きかかえるのも大変なほど大きな、手触りの良い白くまのぬいぐるみ。足元には、見たこともないような綺麗な箱が山積みになっている。

そして、昨日まで空っぽだった靴下には、溢れんばかりのお菓子と、キラキラしたリボンが結ばれていた。


「……う、うそ……。サンタさん、……迷わないで、来てくれたの……?」


ゆうが震える手で、そっとプレゼントの箱の角に触れる。その指先から伝わる確かな温もりに、ゆうの瞳から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。


4. 騎士たちのメリークリスマス

「……起きたか、ゆう。……どうやらサンタの奴、お前の家を見つけるのに何年もかかったらしいな。その分、まとめて持ってきたようだ」

扉の外で一晩中様子を伺っていた獅子堂たちが、さも「今来ました」という落ち着いた顔をして入ってくる。


「……獅子堂くん! 見て、サンタさん……本当に、来てくれたんだね……っ。……僕、なんだか、すごく……大事にされてるみたいで……嬉しい……っ」


泣き笑いのような顔で、特大のぬいぐるみに顔を埋めるゆう。その言葉こそが、三人が一晩かけて用意したかった「答え」だった。


「……当たり前っすよ、ゆうくん! 世界で一番、サンタが会いたかった子なんすから!」

阿久津が堪えきれずに袖で目を拭い、羽柴が「……はい、ゆうくん。サンタさんからの、温かいココアです」と、湯気の立つカップを差し出した。


5. 賑やかな朝の訪問者

そこへ、屋敷の玄関から「メリークリスマスだ、コラァ!」と、トナカイの角をつけた大和先輩と、真っ赤なポンチョを着たはなちゃんが突入してきた。


「ゆう! ほら、はなが選んだんだ! ……って、なんだこのプレゼントの山は!? 獅子堂、てめぇ、在庫処分でもしたのか!?」


「……大和さん、声が大きい。……はな、ゆうと一緒に遊んでやれ」


はなちゃんがゆうの元へ駆け寄り、「ゆうおにいたん、プレゼント、いっしょにあけよ!」と袖を引く。

賑やかな笑い声と、包装紙を破る楽しい音。

ゆうにとっての「初めてのサンタさん」は、獅子堂たちの深い愛が形になった、最高に騒がしくて、最高に温かい朝を連れてきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ