盛トワ一家、登校す
1. 校門の「モーセの十戒」
盛トワ工業の校門前。いつもなら小競り合いや騒音が絶えない場所に、突如として静寂が訪れた。
黒塗りの高級車のドアが開くと、そこから現れたのは——。
「……おい、嘘だろ……。頭と阿久津さんに羽柴さん……それに、ゆう様!?」
中央を歩くのは、少しはにかんだ笑顔のゆう。
その左右を阿久津と羽柴がガッチリ固め、一歩後ろからは獅子堂が、近づく者すべてを視線で射殺さんばかりの覇気を放って歩いてくる。
2. 「装備品」にざわつく校内
生徒たちの目は、ゆうの全身に釘付けになった。
「見ろよ、ゆう様の腕……獅子堂さんのブレスレットだろ、あれ!」
「カバンについてるあのキーホルダー……阿久津さんと羽柴さんが持ってたのと同じじゃねぇか!?」
昨日までとは明らかに違う、「誰の所有物か(=誰が命懸けで守っているか)」を誇示するような重装備。
さらに、ゆうの制服の襟元には、獅子堂が今朝「お守りだ」と言って強引に付けた、獅子堂家の家紋入りの小さなピンバッジまで光っている。
3. 2年生たちの「跪き(ひざまずき)」
廊下を通れば、京都でゆうに浄化された2年生たちが、反射的に道を開けて壁際に整列する。
「ゆ、ゆう様! おはようございますっ!」
「おはようございますっ!!」
「あ、えっと……おはようございますっ、先輩たち!」
ゆうがぺこりと頭を下げると、2年生たちは「今の見たか!?」「挨拶返してくれた!」「今日、命日か?」と、顔を覆って悶絶。
それを見た獅子堂が、低く喉を鳴らす。
「……貴様ら、挨拶の声がデカい。ゆうがびっくりするだろう。……あと、あまり見るな。減る」
「す、すみません獅子堂さん!!」
4. 教室前の「お別れ」の儀式
1年生の教室に到着。
獅子堂は当たり前のように中に入ろうとするが、羽柴が「獅子堂さん、2年の始業チャイム鳴りますよ」と襟首を掴んで止める。
「……ゆう。いいか、休み時間は必ず俺が来る。それまで一人でどこへも行くな。……阿久津、1年の手の者に伝えろ。ゆうに話しかける奴は、すべて事前に審査すると」
「ウィッス! 面接会場、用意させるっす!」
「もう……みんな、大げさだよぉ。僕、ちゃんと一人でお勉強できるもん」
ゆうが頬を膨らませると、獅子堂は我慢できずに、クラスメイト全員が見ている前で、ゆうの頭を胸に抱き寄せた。
「……放課後、また迎えに来る。……愛してるぞ、ゆう」
「わわっ! もぅ、ししどうくん……っ!」
赤面して教室に駆け込むゆうと、満足げに(でも少し寂しそうに)2年の校舎へ引き上げていく最強の男たち。
その光景を見た全校生徒は確信した。
「この学校で、瀬戸ゆうに手を出すことは、この世から消えることと同義だ」と。




